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153 極寒エリア

 防御力の高い自分が先頭に立ち、その後ろからギィとアリスがついてくる形で前からの攻撃に備えて進んだ。


 前に進む道は緩やかに下りながら、右へ左へと曲がりくねっていた。いつ敵が現れたとしても対応できるように慎重に進んでいった。


 この洞窟ではヒカリゴケの生育が少ないのかどこまで進んでも薄暗い道が続いていた。しかし、暗闇の洞窟のように真っ暗ではなかったので慎重に進みさえすれば敵の攻撃があったとしてもそれに備えることが出来ると考えた。


 もちろん、定期的にサーチを行って警戒態勢は続けた。しばらく進んで、この洞窟はモンスターが生成されることはないのではないかと思えた。


 それは環境を考えてみたのだ。後ろはラージバットの住処で、正面は極寒のエリアということだ。雪の中で生活する種族がいるとしたら、その種族がこの場所に来ても何の成果も得られないだろうと思ったのだ。


 ゲームの世界で言えば、この洞窟は安全地帯として位置づけられているのかもしれない。


「そうだ!インフォさん、ここは安全地帯なのですか?」


【安全地帯ではありません】


「なんだ、違うのか」


 インフォさんに聞けばわかるかと思ったが、そうではなかったみたいだった。


【しかし、生物が育成するための環境ではないため、生存困難エリアとなっています】


 なんだよ、つまり、安全地帯と一緒じゃん。


【いいえ、安全地帯ではありません】


 あっ、聞こえていたよ。すんません、インフォさん。


「ギィ、アリス。ここには敵はいないようだから少し気を抜いても大丈夫そうだ」

「わかりましたわ」

「気を抜くっす」


 ギィとアリスの返事が聞こえると、もぞもぞと背中に何か別の感触を感じた。


「気を抜くのはいいんだが・・・自分の背中に乗るのはどうなんだろうか?」

「いやぁ~、師匠が大きくなったから、とても乗りやすくなってるっすよ。ねぇ、アリスちゃん」

「ふふふっ」


 ギィとアリスに気を抜いても大丈夫と伝えると、すぐに、ギィが自分の背中にするすると登ってきたのだ。そして、予想外だったのが、アリスも便乗してギィの後ろについてくつろいでいた。


 おいおいと思ったが安心してもらえるのは嫌ではなかったのでそのまま進むことにした。


 しばらく進むと、洞窟の正面に明るい出口が見えた。外からキラキラと光って真っ白な光が洞窟の中に刺し込んできていた。


「師匠、少し寒くなってきていますわ。ギィちゃんもそう思いませんか?」

「ふうぅぅん。むにゃむにゃ、ついたの?何?」

「ギィちゃん、気を抜くのはいいのだけれど、気を抜きすぎじゃありませんの!」

「はっ!・・・ごめんなさい。つい、気持ちよくて、ははっ」


 ギィは進んでいる間に自分の背中の上で眠りこけていた。気を抜いていいと言ったが、ちょっと抜きすぎではないかと思ったが、アリスが注意していたのでそのままにしておいた。


 そして、アリスの言う通り、顔を流れていく風が少し冷たく、肌に感じる寒さが体を冷やしていることに気がついた。


「あそこに出口が見えるから、きっとそこからは極寒エリアなのかもしれないな。ギィもアリスも気を引き締めておくんだ」

「はいっす!何が来ても大丈夫っす。しっかりやりますよ」

「わかりましたわ」


 ギィもアリスも背中から降りて警戒を強めていた。用心の為にサーチをしていたが何の気配もなかった。


 それでも、外に出てすぐに予期しない何らかの攻撃を食らうのは避けたかったので、ゆっくりと顔を出して外の様子を確認してみた。


「うわぁ~。まさに白銀で一色だなぁ~」


 そこには白銀の世界が果てしなく続くのではないかと思えるほどに広がっていた。これらすべて雪だ。この世界に来て初めての雪だった。洞窟を抜けるとそこには雪の世界が広がっていたのだ。上を向くと天井も高く、そこからは強くヒカリゴケの光が輝いていた。


 それにしても、この雪はいったいどこからやってくるのだろう。


 雲や気圧などの存在しないこの洞窟内で、雪が降るのは完全におかしい。これでは日本での常識が全く通用しない構造なんだと実感させられた。ならどういう原理になっているんだ。


 まあ、(1)奥から雪が降る何かがあり、そこから雪が来ている。(2)何かのモンスターが常に雪を降らせている。(3)雪が自然発生して上空から落ちてくる。とにかく、ちょっと考えただけでもいくつか案が出た。


 しかし・・・何でもありのこの異世界ではどれも正解のような気がしてならない。


 そうだ。こんなことを考えるだけ意味がないかもしれない。自分がこんなくだらない事を考えている間、ギィとアリスは雪の中で転げながら遊んでいた。あいつら寒くないのかな。と、そんな風に大人びたことを言っているが、これだけの雪を見ると・・・・やっぱり()()()()してくる。


「お~い。自分も混ぜてくれよ」


 そう言って、この巨体をジャンプして雪の中にダイブした。


 ボワッファ~~


 辺り一面に白い雪の粉が舞い上がった。


「師匠、急に何をしてるっすか?」

「お前たちが遊んでいて楽しそうだったんだよ」

「そうっしょ。この白いのは冷たいっすよ。でも食べたら水になるっす。おいしくはないっすけどね。キャハハハッ」

「私は嫌だったんですのよ。でも、ギィちゃんがどうしてもっていうから仕方なく・・・・つべたい」


 見栄をはっているアリスに尻尾で盛大に雪をかけたら、アリスはちょっとかわいくつぶやいていた。サーチで確認しても、周囲に敵がいる気配はないのでしばらく遊んでいた。


【寒さ耐性(小)を獲得しました】


「あれ!?遊んでいただけなのに耐性を獲得しちゃったよ。ラッキー!!」



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