プロローグ ~ラクーン大洞窟地下2階~
前回の前書きがなんだか、終わりのようになったように勘違いした方々がいらしたらすみませんでした。
まだまだ、続けていきたいと思いますので、引き続き読んでいただければと思います。
ついでていいので、評価(★)や感想なんかがあれば励みになりますのでよろしくお願いします。
リルの失踪事件の後、3日後にメーベル女王様の謁見の日が決まった。テト隊長を通じて出発の挨拶をしたいとお願いしていたのだった。火急の要件でなければメーベル女王様に謁見するのは期日が必要とのことだったが、思いの外早く決まったことに驚いた。
そして、今目の前にはメーベル女王様が謁見の間の最上段でそこにいた。側には、メーベル女王様より一段下の右側に第1近衛のカルナじい様とハルナばあ様そして、左側にはチエさん、チタさん、チミさんが並んでいた。さらに1段下がると、左右に15名づつ新しいバレットアントの兵士達が並んでいた。
自分はその中でケッセイのいる場所を探した。メーベル女王様よりたった一人の独立遊撃部隊の隊長となっていたから、きっとこの中にいるはずだと思い見回すと、バレットアントの列の先頭に居るのが見えた。ケッセイはこちらの視線に気づきにっこりとほほ笑んでいた。
そして、自分達と同列にはレッドキルアントとキルアントの兵士達が周りを覆うように並んでいた。
初めてこの場に訪れた時を思い出した。メーベル女王様の周りの近衛はにはカルナじい様とハルナばあ様、その次にチエさん、チタさん、チミさんの5名だったのが、今や、そうそうたる数が整列していた。
「ケッセイちゃ~ん、元気してる!!」
そんなことを思い出しながら、ゆっくりとメーベル女王様に近づいていると、ギィが突然ケッセイに気軽に挨拶をしていた。
「おい、ギィ!!メーベル女王様の御前だぞ。おとなしくしておかないとだめじゃないか!」
「何!ゴゼン!?」
ギィは御前といっても伝わっていなかった。そして、やっばい、怒られる。と不意に構えてしまった。
「よいですわよ。ギィ様。気軽になさって下さいませ」
「師匠、良いって言ってるっすよ」
「ははっ。すみません、メーベル女王様」
「構いませんわ。それにしても、立派になったと思いませんか?師匠様。近衛達がとても充実しておりますわ。すべて師匠様のおかげでございます。感謝を申し上げますわ」
「そんな、感謝を言われるようなことではございません。私は・・・私が倒したキルアント達に少しでも報いることが出来ればと思って行ったことでございます。憎まれてもよい位の存在ですので、感謝などもったいなく思います」
キルアント族の事を知らずに行ったこととはいえ、頭を少し下げてゆっくりとメーベル女王様の返事に答えていた。
「師匠様は優しいお方ですね。ふふふっ」
メーベル女王様は自分の発言に対して優しく答えてくれた。
「それにしても、師匠様は随分と雰囲気が変わりましたね。それに、大きさも随分と大きくなられたようですが・・・」
「あれから進化たらこんな風になりました。自分は気に入っているんですが、どうでしょうか?」
「よくお似合いでございます」
「ああっ。こんなことをメーベル女王様に申し上げてすみません」
近所のお姉さんに話しかけるように返事をしてしまったので、慌てて謝罪した。これでは、自分もギィと変わらないではないかと心の中で思っていた。
「いいえ、こちらこそ気軽に話していただいてうれしく思いますわ。今や師匠様はお1人でもこのキルアント族を全滅させられるやもしれませんから。ふふふっ」
「いやいや、そんな恐ろしいことは絶対にいたしませんから、お約束します」
「さて、師匠様は別のお話が合って、今日の謁見をもうしでたのではございませんか?」
メーベル女王様の表情が優しいお姉さんから、キリッ目が鋭くなり女工様の顔に切り替わった。
「はい、今回の進化でとりあえず出発が出来るようになったと確信いたしました。それゆえ、出発の報告とこれまでこの場所で過ごさせていただいたお礼を申し上げたくて参りました。メーベル女王様ありがとうございました」
「ありがとうございましたっす」
ギィとは事前に自分が感謝を述べたら、ギィも続いて感謝を述べるように伝えていた。先ほどの、ケッセイに対する気軽な挨拶ではなく、きちんと頭を下げてはっきりと伝えることが出来ていた。
「お母さま、いえ、メーベル女王様。私は師匠のおかげで、強くなることが出来ました。先日も毒耐性を一時的に付与されて一命をとりとめわることができました。こんな風に師匠に守られながら戦いを行っております。これから、師匠と共に様々な経験と強さを手に入れてまいります。そして、進化の最終形態を・・・・・目指していきますわ」
アリスはメーベル女王様に王女としての立場で見聞を広げて最終的にはクイーンキルアントを目指すと宣言していた。周囲ではざわめきが一段と高くなっていった。そして、その中でハルナばあ様が声を上げた。
「アリスや・・・いや、アリス姫様。ほんの短期間で立派になられましたな。わしは本当にうれしく思いますぞ。わしからのお願いじゃ。決して死ぬことのないように、目的は果たせなくても構わない。しかし、絶対に生きて戻ってきておくれな」
いつもは厳しい表情のハルナばあ様がとても穏やかで、その眼もとには涙が一粒流れ落ちているのが見えた。
「師匠殿、アリス姫をお頼み申し上げますぞ」
ハルナばあ様が、今度は自分に対して頭を下げると、それに合わせるかのように全員が頭を下げていた。
「私からもお願いしますね。アリスを頼みます」
メーベル女王様はそういうと、母親の顔でほほ笑んでいた。アリスはその言葉を、皆の言葉を胸に噛みしめているようで頭を下げて小さく震えていた。
「冒険に死はつきものですが、アリスとギィは私が命を懸けてでも守ります。私の家族みたいなものですから、このことは必ずお約束いたします」
そう言って、ゆっくりと頭を下げて約束をした。そして、謁見の終了となり帰ろうとした。すると、ハルナばあ様が自分を呼び止めた。
「すまぬ、言い忘れておったが、千年真珠と王族は深いつながりがあると、キルアント族の伝承で残っておるのじゃ。じゃから、ラクーングレートリザードに埋め込まれておる千年真珠とアリスには重々気をつけておいておくれ。単なる伝承であればよいが、もしもの事があるでの。よろしく頼んだぞ。師匠殿」
「わかりました。ハルナばあ様、それにみんなも元気で」
こうして、王宮を出た。これでこのキルアント族との生活は終了となった。気を抜くとこのままここで生活していくのもありかなと思ってしまうが、自分にはラクーングレートリザードを倒すという目的があるのだ。この目的を達成してから、また戻ってくればいい。心の中で決意を新たにした。
「ケッセイちゃん、どうしたの?」
後ろで、ギィがケッセイの名を呼んでいたので、自分も振り返えるとそこにはケッセイが息を切らしていた。
「師匠様、本当にありがとうございました。私がいま生きているのは師匠様のおかげです。そして、これからこのキルアント族を少しでも強くなることが出来るようにお手伝いできればと思いますので楽しみに待っていて下さい」
「そうだな、ケッセイ。これからお前の能力を十全に生かしてキルアント族を盛り上げていくんだぞ」
「はい、わかりました。では気をつけていってらっしゃいませ」
「あっ、そうだ。一つ伝えておくことがある。以前、北の商業地区で発生した病気があると思う。その時に病気にかかった子供たちはもしかすると何らかの耐性を持つ可能性がある。レベリングを行ってもなかなか進化しない子達がいれば気を配ってやってくれ」
「はい、わかりました。キルアントトレイダーのコンサルさんにリストをもらっておきます」
「そうだな、それがいい。後、キルアントトレイダーのコンサルさんには自分からもお礼を伝えておいてもらえるか」
「わかりました。必ず伝えておきます」
「アリス姫様もギィ様もお元気でお命を大切にしてください。お戻りを心よりお待ちしております」
ケッセイは皆に挨拶をすると、最後にもう一度礼をして戻って行った。
「え~と、そこで、もじもじしている御方は、何か私に用事でもあるんですか?」
「もう、師匠様たらぁ。意地悪ですわ。本当はね、本当は私もついて行きたいんですよぉ。でも、みんながダメだっていうからぁ、仕方なくお留守番しているんですぅ。だから、どうしてもお声をかけておきたくてぇ、師匠さま。からなずまた戻ってきてくださいね。チエは心より待っています。いとしの師匠様ぁ」
久しぶりに会ったが、相変わらずチエさんはめんどくさい女子のままだった。しかし、きちんと別れの挨拶をしてくれたことはとてもうれしかったのでこちらもしっかり挨拶をすることにした。
「ありがとうございます。チエさん。これからも元気でしっかり部下たちの面倒を見てあげてくださいね」
「はい、師匠様わかりました。キルアント族と他の種族が恐れる位強くしておきます。楽しみに待っていてください」
ケッセイもそうだが、チエさんも種族の強化を約束していった。こうしてみると、キルアント族とは根っからの戦闘種族なんだと実感させられた。
ギィ、アリスと一緒に、隠れ洞窟の入り口に向かって歩きながら、ハルナばあ様の言っていた、アリスと千年真珠とのつながりについては少し気になっていた・・・。
こうして、キルアント族との生活が完全に終わりをつげた。
・・・・そして、新たなるラクーン大洞窟地下2階へ向けての旅立ちが始まることとなる。
ギィとアリスと一緒にラクーン大洞窟地下2階に向けて、新たに旅立ちを始めることになりました。週1連載を目標に頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。