143 イエローサンライズ群生地の探索
~~~ ギィ・アリス ~~~
「サリールちゃん、私が探してくるよ!だから、大丈夫だよ」
ギィは正面で泣き崩れているサリールのお母さんと、どうしたらいいのかわからないサリールを見ていると少しでも早く探しに行かないといけないと考えた。
「ギィちゃん、私も行きますわ」
サリールとそのお母さんに寄り添っていたアリスは、すかさず一緒に探しに行くと言い出した。
「ありがとう、アリスちゃん。でも・・アリスちゃんは毒耐性無いでしょ。一緒に探しに行くのは危険じゃないかな。だから、今は、私が1人で探してくるから、サリールちゃんと一緒に待っててよ」
アリスは毒耐性がない事に悔しそうにしていた。本当はアリス自身が探しに行きたかったのだろう。しかし、その願いをかなえることは今の時点では危険だということもわかってたので、ギィの言葉に黙って従うことにした。
「わかりましたの、ですが、ギィちゃんが探している間に、リルが入れ違いで戻ってくるかもしれませんの。その時に備えて、隠れ洞窟の外で待っていますわ」
「そうだね、ここで待っているなんて無理だろうからそれでいいと思うよ。アリスちゃん」
ギィもアリスも行動が決まったので、すぐに動き出そうとしたところで、サリールちゃんが声を上げた。
「そっ、それなら、私もアリスちゃんと一緒に隠れ洞窟の外までいきますっ!」
「サリール・・・そうね。わかったわ。一緒に行きましょう」
アリスは、隠れ洞窟の外までならば、ポイズンバタフライが襲ってきても、すぐにありんこ洞窟に逃げ込み、逃げ切ることが出来ると考えた。
サリールの足は少し震えていたが、レッドキルアントとして、そして、姉として、少しでもいいから手伝えることを模索しているのだろう。力を振り絞って、アリスについて行くことを訴えた。
「とにかく、私が周辺のイエローサンライズを見て回るから待っててね」
ギィはアリスやサリール達にそう伝えると、ものすごいスピードで隠れ洞窟の出入り口に向かって走って行った。
「ギィちゃんものすごく早いね」
サリールは改めてラッシュウォーク中のギィのスピードに驚きを隠せないでした。
「ギィちゃんって戦いや非常事態における直感はとても鋭いですのよ。だから、きっと探し出してくれるとおもいますわ。安心して待っていましょうね。それでは、私たちも急いで、入り口へ向かいましょうか」
アリスは不安で落ち着かないように見えるサリールに安心できるように声を掛けた。
サリールも促されてすぐに出発しようとしたが、お母さんの心配そうな表情が見えた。
「あの御方、ギィさんが探しに行ってくれたみたいだけど、毒エリアなんだろう。大丈夫なのかい?サリール」
「・・・・・・・・・・・」
サリールはギィが探しに行ってくれる事になったが、本当にギィがあの毒エリアに行って大丈夫なのかは自信をもっていえることではなかった為、返事を迷っていた。
「サリールのお母さん!ギィちゃんは毒耐性を持っていますの。それに、遠距離のスキル、いえ、遠距離の真技を使いこなせますわ。ですから、安心して待っていてもらってもよろしいと思いますの」
アリスはいくら耐性があっても、ポイズンバタフライの集団に囲まれるといくらギィでも厳しいのではないかという不安があったが、ニコッと優しい笑顔で、サリールに代わって、サリールのお母さんに返事をした。
「お母さん、リルの事は、私もアリスちゃんとギィちゃんに任せておくのが今の状況では最善だと思うの。本当が私が探しにいかなければいけないんだけど・・・さすがに、毒エリアは厳しいから仕方がないんだもんね」
「わかりました。では、アリスさんお願いします。それから、サリールもリルを頼むよ。くれぐれも気をつけてね。リルだけでなくあんたにもなにかあったら、私、わた・・・・・・」
リルのお母さんはリルだけでなく、サリールにも何かあったらと考えると涙で最後まで答えることが出来なかった。
「お母さん、大丈夫だよ!リルも私も大丈夫だから・・・ね。安心して待っててよ」
「・・・・・わかったよ」
サリールのお母さんは中央広場にいても、落ち着かないから自宅に戻っていると言って、ゆっくりと歩いて戻って行った。
「行こうか!サリール」
「ええ、アリスちゃん」
~~~ ギィ ~~~
ありんこ洞窟をでてイエローサンライズの群生地を見た。
もともと、住処の洞窟からありんこ洞窟の行き来をしていたから、全体を探すのなんて簡単だろうと気軽に考えていた。しかし、そこに広がっているイエローサンライズはあまりにも大きく、こんなに大きかったっのかなとギィは首をかしげていた。
イエローサンライズ群生地は左側の奥に小さな川が流れており、そこから右側までは軽く200~300メートルはあり、そして、上空には光ごけで覆われて洞窟であるとはいえ随分明るくなっていた。そして、高さもかなりあり、この巨大なイエローサンライズの3倍くらいあるのではないかと思われた。
思い返せば、住処の洞窟から、このイエローサンライズの群生地を通過して、ありんこ洞窟に行くときは常に、師匠と一緒だった。師匠が前を進み、その後ろをついて行くだけだったので、それほど不安はなかったのだった。
「あちゃ~、なんだこれ!めちゃめちゃ広いなぁ。これ、どこを探したらいいんだよぉ~。1人で探すなんてカッコいい事言っちゃったけど、これなら、アリスちゃんにも来てもらった方がよかったかな。・・・いやいや、だめだ。もしも、アリスちゃんに聞いたら、きっと中までついて行くって聞かないだろうからなぁ。しかたない、とにかく右から左を行ったり来たりして・・・・うわ~。めんどくさいなぁ」
今回、正面に広がるイエローサンライズをみて、この中をやみくもに探しても、無駄に時間を浪費するだけだとは思ったが、今のギィにはどこを探したらいいのか見当もつかなかった。しかし、考えても浮かばないなら突っ込むしかないと思い、洞窟の端から端を行ったり来たりしながら進むことにした。
最初はスムーズに進んだが、ありんこ洞窟の入り口が見えなくなるくらいの所から、少しづつスライムやポイズンバタフライが現れてきた。
「スライムなら爪で十分だな、でも、ポイズンバタフライは毒あるからなぁ。あれ、頭痛くなるし・・・出来るだけ近づいて後は、ファイヤーショットでいいか」
かなり奥まで進んだように思えたが、リルの足取りはまったくつかめなかった。
「いないなぁ。だいぶ奥まで来たんだけど・・・。一体何でリルちゃんはこんなところに来たんだろう。でも、まあ、それは別にいいか!」
お母さんはリルがイエローサンライズの種を取りに行ったと話をしていたが、ギィの耳には届いていなかった。ギィにとっては、サリールちゃんの妹がイエローサンライズの群生地で迷っているといったその事が重要だった。
さらにスライムやポイズンバタフライを倒しながら進んでいくが、リルの姿はまったく見えなかった。
ギィはポイズンバタフライを時には走りながらファイヤーショットで倒し、時にはジャンプしてファイヤーショットで倒すを繰り返していた。
「あれ、なんだか、ポイズンバタフライを倒す回数が多くなってきているように思えるけどなんでかな」
ポイズンバタフライがギィに攻撃をしようとする数は確実に増えていた。ギィが縦横無尽に走り回っていて、スライムやポイズンバタフライを殺し続ければ、間違いなく、周辺のポイズンバタフライが集まってくるのは当然だった。
そして、次々に仲間たちが倒されて行くため、ポイズンバタフライは周囲に毒鱗粉をまき散らしながらギィに攻撃を仕掛けていた。
しかし、ギィは周辺に毒鱗粉が充満していることには気づかずに、走り続けていた。
「あれ、なんだが頭が痛くなってきた。なんでだ!?」
ギィは遠距離でポイズンバタフライを倒していたので、毒鱗粉を受けるはずはないと考えていた。しかし、少しずつ、頭の痛みが強くなって行くのに、危険を感じた。頭痛の原因をどうしても理解できなかったが、なぜか不意に上を向いた。
「うっうぇぇぇ、上空にいっぱいポイズンバタフライがいるよ。しかも、周囲一帯に毒鱗粉をまき散らしているよ。うぇぇぇ、気持ちわるぅぅって、ここにいたらやばくない。それに、この近くにリルがいたら大変な事になるんじゃないのか・・・。やばい、やりすぎたかも・・・」
とにかく、周辺にリルがいないことは確定した。目の前は住処の洞窟につながる大洞窟の入り口が見えていた。ここまで、全探索を行ったが、リルの姿はまったく見えなかった。
「ここまでリルの姿はまったく見えなかったから、そうすると、大洞窟の先まで行ったことになる・・・が、痛い。だいぶ頭が痛くなってきたよ。う~ん、これ以上は無理かな。仕方ない一度引き返すことにしよう」
ギィは仕方なく、引き返すことにした。
ありんこ洞窟の入り口では、アリスとサリールが不安そうな顔で待っているのが見えた。ギィはリルを探し出せなかったことが、少し申し訳なかったが、状況を早くアリスに話して、対策を考えないといけないという考えの方が強くそのままアリスの前に飛び出した。