133 決着 草むら洞窟の戦い
移動しながらギィとアリスそれにでかドブネズミの様子をうかがった。皆横たわったまま、身動き一つしないように見えた。爆風の威力が凄まじいものだったから、ダメージもかなりあったんじゃないかと思う。
ただ、飛ばされた方角を考えると、直接爆風を受けて飛ばされたというより、でかドブネズミが吹き飛ばされる中で、巻き込まれたように思われる。その点があるから、死んでしまうということはないだろう。おそらく、衝撃のデカさが原因で脳震盪を起こして気絶しているものと思われる。
心配なのは、でかドブネズミが先に目を覚まして、横たわっているギィとアリスに攻撃を加えてしまうのではないかということだ。あの体の大きさで、あの攻撃力をもつでかドブネズミの攻撃を食らうと、ただでさえ爆発で受けたダメージを考えると致命傷になりかねない。
ただ、でかドブネズミも横たわったまま動きがみられないので、どちらが先に起きるかといった状況だろう。
「待ってろ!すぐに行くからな。ギィそしてアリス」
ジャンプを繰り返しながら、全速力で進んだ。飛ばされた方角がほぼ両極側だったこともあり、なかなか近づかない。でかドブネズミが目を覚まさないことを祈るばかりだった。
幸い間をさえぎる草むらがすべてなぎ倒されていたので、皆の様子は手に取るようにわかった。
「まだ、誰も目を覚ましていないな。これなら間に合うだろう」
少しづつ近づいているギィとアリスの姿に少しほっとしながらジャンプを続けた。そして、後2回のジャンプで届く距離まで進めたので、横たわったまま、動きを見せないギィとアリスに声をかけようとした瞬間、先に動きを見せたのはでかドブネズミだった。
「まずい!ギィッ!アリスッ!起きろっ!そこからはなれるんだぁぁぁあああ!!!」
自分が声を出したことで、でかドブネズミの意識が自分の方へ向かった。しかし、意識があいまいなままなんだと思える位ふらふらしていた。
そして、でかドブネズミが振り向くと同時にギィとアリスが目を覚ました。
「ギィッ!アリスッ!早くそこから移動するんだっ!!」
ギィもアリスも横たわったまま状況が飲めていないようだった。
「・・・・えっ・・あっ・・・は・い・・ギ・・ィちゃ・・ん。い・・いどうし・・ますわ・・よ」
しかし、アリスはもうろうとする中、視点が合わないようで、頭をゆすりながらも、師匠の移動するように叫んでいる声にゆっくりと反応していた。
「はなゃ~~なんすか?師匠ぉぉ~。体痛いっすっ!!」
それに対して、状況の読めていないギィは元気にでかい声で返事をしてきた。そして、それは完全にでかドブネズミに存在をアピールするのに十分な声量だった。
「あぁぁだめだろぉおギィそれはっ!!早く移動するんだぁぁああ!!こらっーーー!」
もう一度ギィに移動するように声を張り上げたが、でかドブネズミの意識はギィに向かっていた。全速力で向かっている自分に背中を向けてギィに攻撃を仕掛けるつもりなのかと思えた。
ギィとアリスそしてでかドブネズミの所まであと一回ジャンプが必要だった。
「このまま間に割り込むかそれとも体当たりをかますか。しかし、体当たりが失敗したらそれこそ・・・・。もう、考える時間がない。イチかバチかぶちあがれぇぇええ!!」
最後のジャンプはぶちあがることに決めた。そして、ジャンプした。
ジャンプ中にでかドブネズミは起き上がってギィの方を向いていた。ギィは正面に現れたでかドブネズミの姿に慌てて立ち上がろうとしていた。しかし、ギィとでかドブネズミの距離だとそこからギィが逃げだすのは明らかに間に合わない。
アリスもふらふらしながらも、酸性弾の準備をしているが、間に合いそうになかった。
「あと少しなのに間に合わないのか。ちくしょぉお!何でもいいから。何か奇跡が・・奇跡よ起きろぉぉおおお!!」
空中で叫びながらも、そんなに都合よく奇跡なんか起きるはずがないとわかっていた。
「そんなぁ~師匠ぉぉおおお~~」
ギィも目に涙をためながら自分の事を呼んでいた。
でかドブネズミは体を起こして、ギィを真下に見るようにな状態で攻撃を加えようとする体勢になっていた。
「もうだめかぁぁああ」
でかドブネズミがその牙を振り下ろすだけでギィの命は絶たれる。そういう状況だった。
・・・・その牙がゆっくりと降りていく。そのイメージが自分の頭をよぎって行った。
「あと少しだったのに・・・」
もうだめだ・・・間に合わなかった。
・・・そう思ったのに、でかドブネズミは体を起こしたまま動かなかった。何が起きたか分からなかったが、間違いなく、自分はでかドブネズミに近づいて・・・・・激突した。
自分とでかドブネズミはもつれるようにして、転がっていった。側に洞窟の壁があった為、自分もでかドブネズミもその壁にぶち当たって倒れていた。
「痛ててててっ!そうだ、ギィ無事かっ!!」
「すんませぇぇ~~~ん。師匠ぉぉおお。でも、何とか無事っすぉぉおお」
ギィは目を真っ赤にして、謝ってきた。
「しかし、どうしてでなんだ?でかドブネズミにとって絶好の攻撃チャンスだったはずなのに」
そして、横で倒れているでかドブネズミの方を向いた。怒りに満ちた目で自分の方を向いていた。体は小刻みに震えていたが、動くことはできないようだった。ファイヤボールを打ちまくっていた時に体から出ていた赤い光は消失していた。
「バーサーク化した後、すべての魔力が枯渇して精神的疲労で動けなくなっていたか。お前にとってバーサーク化は最後の手段だったんだな。しかし、その状態で立ち上がったのは称賛にあたいするよ。やっぱっすげーー強かったな。だが、それもここまでだ。アリス!パラライズニードルを撃ち込んでくれ」
ギィの側に寄り添っていたアリスにパラライズニードルで攻撃をするように声をかけた。
「わかりましたわ、師匠!念の為に3発ほど撃ち込んでおきますわね」
横たわったまま、身動きの取れないでかドブネズミにアリスは3発のパラライズニードルを撃ち込んだ。1発でも効果を発揮するかもしれないが、体が大きく何らかの耐性をもっている可能性があったので、用心の為に多めに打ち込むようにした。
そして、身動きの取れないでかドブネズミに向かって、ギィとアリスそれに自分で直接攻撃を加えた。
【レベルが4上がって15になりました。】
メッセージさんの心地よい声が聞こえてきた。
同時に、でかドブネズミが経験値に変わった瞬間だった。