130 「あれっ・・・・アリス・・・作戦は・・・!?」
※ ※ ※
「ちょっとっ・・・ちょっと待って!なんで、赤ラインドブネズミがこっちに来ているんだ!いやっ・・・そんな・・・・まさかっ!・・・・・・・・・・・・・くっ!」
アリスにはギィが向かっているから、大丈夫だと考えていたが、ゆっくりと赤ラインドブネズミがこちらに向かっているのに気が付いた。
「・・・・・そんな・・・・ギィが・・・・ぎぃ・・ぃ・・・。アリスまで・・・・・・すまな・・・な・・・ぃ・・・」
でかドブネズミは草むらで隠れている自分の姿は見えずに、移動前で打ち込んだ水弾丸の発射場所をうろうろしていた。それゆえ、若干の安心もあったが、ギィとアリスがやられたかもしれないという状況に全身の力が脱力したように停止していた。
サーチを使って、本当に倒されてしまったかを確認する手段もあったが、頭が混乱していたこともあり自分の選択の甘さに後悔しきれないくらい後悔していた。
「ギィとアリスならだいじょう・・・じょうぶだと安易に考えすぎていたのか!?あの時、本当に大丈夫だと考えたのか!?・・・自分の見切りの甘さがあったのか!?・・・くっ、くっそぉぉおおお!!!」
ギィとアリスを失ったことによる失望感に覆われた気がした。
「・・・・ふっ!もう・・・もう、いいかな。頑張って、がんばって生き残っても、また、あの一人に戻ってしまうのか・・・・なんか、もう、がんばらなくてもいいかな。キルアント族のみんなにはすまな・・・・」
ヒューーーーーーボァッッシュッ!!!
「なんだっ!ファイヤボール・・・いや・・・あれは・・・」
顔を上げて、魔法による攻撃音がきこえてきたほうを見上げた。
「いや・・・あれはファイヤーショット!?」
ヒューーーーーーボァッッシュッ!!!
もう一度、同じ魔法による攻撃が見えた。
「間違いない、あれは、ギィのファイヤーショットだっ!」
ぼやけた視界の中で、はっきりと見えたファイヤショットの形に温かい気持ちが湧き上がってきた。
「なんだよぉ~お前ら。心配かけやがってっ!なんだよ。何かの作戦なのか!?まあ、いいやギィが生きているってことは、確実にアリスも生きているに違いないからな。はははっ、ふぅ~」
自分が首を上げたと同時にでかドブネズミもファイヤショットの方に体を向けていた。そのため、自分の居場所を気づかれてしまった。
「ううぇ~っ。やばいっ!ジャンプッ!!」
ほっとしたのもつかの間、でかドブネズミの方からファイヤボールが飛んできていた。
慌てて、ジャンプでファイヤボールをかわして、草むらの奥の方に向かった。ギィとアイスによる赤ラインドブネズミとの戦いが続いている以上、自分もでかドブネズミをギィ達の方に向かわせてはいけない。
そうするとやることは一つだ。
自分はでかドブネズミを洞窟の右側に誘導するだけだ。でかドブネズミは見えている相手に対しては特別な攻撃能力や回避能力があるが、それは見えていることが条件だ!!
その条件が分かった今となっては簡単な誘導だな!
「お~~い!こっちだぞっ!」
時折ジャンプで姿を見せながら、水弾丸ででかドブネズミを牽制した。でかドブネズミは複雑な作戦があるわけでもなく、自分がジャンプと複雑な移動を繰り返すことに翻弄されながら、ゆっくりと自分に誘導されるがままになっていた。
ジャンプをした際に、ギィと赤ラインドブネズミがジグザグに誘導されているのが見えた。向こうでもうまく誘導できているようだった。
「よし、順調だな。後は『アンダーフロア』を実行するだけだ。単純なでかドブネズミは誘導が簡単だからもうこの戦いはもらったも同然だな」
先ほどの絶望感から一転して暢気な自分に少し笑いが出た。
これくらい許してくれるよね。だれも見てないしな。えへへっ。
ある程度、でかドブネズミの誘導が出来た状態で移動と水弾丸で翻弄させることを繰り返して、アリスとの作戦のタイミングを見計らっていた。
しかし、どうしたんだろうか。アリスの姿が全く見えないんだが・・・・。
ギィはギリギリで白とげをかわしているっていうのに。あれじゃぁ・・・まぁ・・・しばらくは大丈夫だとは思うが・・・・。
時折、ギィとアリスがいるとおもわれる場所を見ているが、アリスの居場所が全くわからない。ギィがアリスをさらうために向かっている姿を最後に見ただけだから、あくまで、その後の予想した場所でしかない。だから、その予想した場所自体が間違っているのかもしれない。
そう考えて、予想される場所を探した。
それは、ギィが洞窟の左側の壁に誘導しているということは、おそらく、アリスはその赤ラインドブネズミの後ろ側に回り込んでいるはずだ。丁度、洞窟の中央あたりのはずだ。それに、アリスは作戦を知っているから、ギィとの連携も取れているはずだと思う。
赤ラインドブネズミもだいぶ壁側に近づいているから、そろそろアリスの姿が中央付近に見えてもいいはずなんだ。
一瞬、嫌な予感がしたが、作戦の形としては順調にいっているように見えた。それゆえ、その予感は拭い去った。
そう考えた瞬間、赤ラインドブネズミが盛大に転倒していた。
「あれっ・・・・アリス・・・作戦は・・・!?」




