120 私たちでも倒せるんじゃないの?
ギィは今できることが浮かんでこないので、気合をいれることしかできなかった。
「ありがとう!ギィちゃん!今の私は何もできませんの。だから、お願いね!」
アリスはギィが出来ることがないかを考えているのがわかっていた。
しかし、麻痺効果のある白とげによる攻撃をしてくる赤ラインドブネズミは、ギィにとってどうにもならない相手であり、今できることはなかったのだ。
だけど、一生懸命になっているギィの姿を見ると、アリスは声かけにそのまま返事をすること以外できなかった。
アリスは赤ラインドブネズミが自分達を探すためにゆっくりと警戒しながら移動しているのを、横目で確認をした後、師匠と立てた作戦『アンダーフロア』について話しておこうと考えた。
「ギィちゃん!丁度今時間がありますの、ですから、師匠と立てた作戦『アンダーフロア』について話しておこうと思いますの!いいかしら?」
「作戦!?『アンダーフロア』!?えっ、アリスちゃんどういう意味なの?」
「え~~~とねぇ!とにかく、ドブネズミ達から勝利をもぎ取る為の作戦ですの!」
「う~~ん。わかんないけど、わかった!それで?」
ギィにはアリスが何を言っているのかよく分からなかった。しかし、ドブネズミ達から勝利をもぎ取ることが出来るなら、自分が出来ることだけすればいい。
ギィはわからないなりに、そう考えていた。
「簡単に言えば、赤ラインドブネズミをでかドブネズミから引き離して、そこで、師匠とスイッチした後、師匠が赤ラインドブネズミを倒す。そして、自分達はその間でかドブネズミが赤ラインドブネズミの所まで行かないように引き留める」
アリスはギィの顔をみて理解できていないことに気が付いた。説明途中でギィは考えているふりをして目をつむっていたからだ。
「ギィちゃん!ちゃんと聞いてるますの?」
「もっ、もちろんだよ。きっ、きいているよ・・・かも。ところで、赤ラインドブネズミの話をしているのに、なんで、でかドブネズミの話が出てくるの?」
「あ~~~そこですのね。でしたら、私たちの仕事は赤ラインドブネズミを左の壁の方におびき寄せた後、全力ででかドブネズミの所にいけばいいんですの!!これでいいかしら?」
「うん!アリスちゃん!よくわかったよ!赤ラインドブネズミを左の壁の方におびき寄せればいいんだね」
アリスは今度の説明でギィが納得してくれて少しホッとした。そこで、ギィがさらに何かを疑問に思ったみたいでたずねてきた。アリスはなんだろうと今の説明で何かわかりにくかったことがあったのかと少し考えていた。
「え~~~とねぇ!アリスちゃん!私が麻痺しているときに見たんだけど、アリスちゃんのパラライズニードルで赤ラインドブネズミを麻痺させられるでしょ!私がおとりになっておびき寄せた時に、赤ラインドブネズミの背後からパラライズニードルで麻痺させることが出来たら、私たちでも倒せるんじゃないの?」
「えっ!?」
アリスは師匠との作戦を遂行させることを意識していたので、今ギィが提案してきた赤ラインドブネズミを私たちで倒すということに関して一瞬戸惑いを見せていた。
「やっぱり、難しいかな?」
アリスの戸惑いを見たギィは自分の提案が的外れだったと考えて、私たちで赤ラインドブネズミを倒すことをあきらめかけていた。
「ううん。そうじゃないですの?私一人では絶対に赤ラインドブネズミを倒すことは無理だったから、倒すためには師匠の力を借りるしかないと思い込んでいましたの」
「うん。うん。それで!」
アリスの戸惑いで、自分の提案はだめだと思っていたギィは、アリスが何か違う話をしているので、あれ!もしかして、今の提案はいける?っていう気になってきた。
「今、赤ラインドブネズミはきっと私は戦力として使い物にならないと思っているに違いありませんの。そして、ギィちゃんは簡単に麻痺させることが出来るから、敵としては甘く見ているはずですの」
「そうだね!赤ラインドブネズミの白とげを食らったら、あっという間に麻痺しちゃうもんね」
ギィは少し残念そうにして、うつむいていた。
「その通りですわ!でも、それは白とげが当たれば・・・の話ですわ」
ギィは顔を上げて、ワクワクした目でアリスを見つめていた。
「そっか!当たらなければいいんだ!」
「そうですわ、この前の模擬戦では私の麻痺弾を避けていましたわ。同じように、赤ラインドブネズミの白とげをよければいいだけの話ですわ。これまで、見てきて、赤ラインドブネズミの白とげは射程距離が短いですの。近寄りすぎなければ、ギィちゃんなら簡単によけられるはずですわ」
アリスはギィなら確実に赤ラインドブネズミの白とげを避けられると確信していた。ギィの身体能力を信頼しているが故の判断だった。
「そしたら、私がおとりになって赤ラインドブネズミを壁際まで誘導し、そして、隠れているアリスちゃんのところまでおびき寄せればいいのね。わかったよ」
「師匠に作戦変更を伝えることはできませんが、私たちでできるところまでやってみますの!ふふふっ、少し楽しみですわね」




