12 レベルアップそして進化
残ったありんこ達はたったの5匹だ。隊列を整えているが、まだ混乱も続いている。まだこの後にあらたなモンスターが出てくる可能性もあると考え一旦HPとMPを確認してみた。
よし、まだHPは約半分そして、MPも十分あるこれなら噛みつきだけでもいけるだろう。大丈夫だ。
そう考えた瞬間、自分の後方の天井部分に何か危険な気配を感じた。あわてて視線を合わせると、そこには、5匹の赤い色をしたありんこがいたのだ。
5匹の赤色ありんこの姿に気が付いた瞬間、待っていたかのように赤色ありんこがこちらに一斉にジャンプしてきた。それと同時に、前方にいたありんこもタイミングを合わせるように一斉に向かって来た。
しまったぁ、くそぉ!新たなモンスターの出現の可能性を考えていたのに油断したぁ!
危険そうな赤色ありんこと前にいる倒しやすそうなありんこのどちらを先に倒せばいいんだ?
前方から迫ってくるありんこ達、そして、同時に後ろの後方の天井から飛び込んできている赤色のありんこ達により前後からの挟撃の形となっていた。
考える時間もないし、とにかく数を減らすか?後ろの赤色のありんこも色がやべぇが・・・・。
そして、前方からやってきている5匹のありんこに向かってジャンプ&噛みつきを行うことにした。
・・・しかしこれは間違いだったことに後で気がついた。
そしてジャンプ&噛みつきで全面のありんこを倒すことができた。しかし、後方から向かって来た赤色のありんこ達は動きも今までのありんこ達よりも早く、方向転換をしようとすることさえできずに赤色ありんこの攻撃を受けてしまった。
しかも、その攻撃は今までの噛みつきとは違って、尻から針のようなものを刺すといったものだった。
刺された瞬間、大きな衝撃を受けたような気がした。
それでも、HPが減るようなダメージを受けた感じではなかったので何だろうとその時は思った。
しかし、このままじっとしていても追加の攻撃を受けるだけだ。それならば反撃しようと体を動かそうとしたときに・・・体の動きが鈍いと感じた。
なんだ!体の動きが鈍い・・・ような気がする!?
いや、ちがう、実際に体の動きが半減しているんだ。うわぁ、本気でやべぇ。
赤色ありんこは動きが普通のありんこよりも早かった。そして、今、俺の体の動きは半減している。しかも、別の赤色ありんこが同じように尻尾から針を出して攻撃を仕掛けてきていた。
逃げなきゃ!やばい、やられる!
しかし、ゆっくりとしか動けない体に、次々と赤色ありんこは針のようなものを刺してきた。
衝撃だけでなく動きが緩くなっていく攻撃に、3匹目の赤色ありんこから受けた針の攻撃の後は、頭と尻尾の先以外は動かせなくなっていた。
このままでは・・・これ以上、針の攻撃を受けると完全に動けなくなるかもしれない。
そうだ!反撃しないとやばい!
今はまだ、尻尾と頭だけはかろうじて動かすことができているじゃないか。あきらめるな。
今できることは・・・・・とにかく、赤色ありんこの動きを見ることだけだ。
ならば!と思い赤色ありんこに狙いをつけた。
4番目と5番目の赤色ありんこは完全に俺の動きを停止させる意思が見え見えに針のようなもので体に刺し込むことを狙っていたことが丸わかりだった。
そこで、針のようなものを刺す直前で2匹の赤色ありんこに水弾丸(改)槍を打ち込んだ。
油断していたのか、狙いに集中していたのかわからないが2匹を仕留めることが出来た。おかげで、なんとか頭と尻尾が動かせる状態を保つことが出来ていた。
赤色ありんこ残り3匹
4番目と5番目の赤色ありんこが倒されたのを見た赤色ありんこ3匹は俺の水弾丸(改)槍を警戒しつつ、ほとんど動けなくなった俺に、赤色ありんこは顔にある大きな2本の牙で噛みつきを行ってきた。
麻痺性のある針のようなものはとっさの攻撃をよけることが難しいのか使ってこなくなり、その分噛みつきでの攻撃を繰り返してきた。
タイミングを合わせるように水弾丸(改)槍を打ち込むがスピードが速いため難なくかわされてしまっていた。
動けない体を狙われ、しかもこちらの攻撃は当たらない。時間を追うごとに少しづつHPが削り取られていった。
このままでは時間の問題だ。何もできずにHPが削られるだけだ!俺の異世界転生ここで終了なのか!?いや、だめだ。何とかしないといけない。HPが削られるだけなら・・・・・・・いっそっ!!
「水弾丸(改)!」
赤色ありんこが噛みつきを行ってきたと同時に自分の体に向かって水弾丸(改)を打ち込んだ。
黙ってHPを削られるくらいなら、自分にダメージを受けても・・・と、範囲攻撃を行ったのだ。連続した3発の水弾丸(改)による範囲攻撃でなんとか1匹を仕留めることができた。
赤色ありんこ残り2匹
俺のHPも残り2割を切っていた。
それでも何かを待つように・・・・・。
自分に向かって、水弾丸(改)の範囲攻撃で、赤色ありんこへの攻撃を続けた。
しかし、赤色ありんこは水弾丸(改)の範囲攻撃ですらかわしながら攻撃を仕掛けてきた。ただし、俺の自爆攻撃で赤色ありんこは直撃を与えることが出来ずにいた。
そろそろ来るはずだ・・・・・・・・・・・・・きっと。・・・・おねがい!
俺のHPも残り1割・・・・・。
【レベルが1上がって10になりました】
【噛みつきのラン・・・・・・】 --------------
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レベルが上がり、スキルのランクアップが聞こえ、最後に
【麻痺耐性(小)を獲得しました。】
「よっしゃぁーーーーーーーーーー待ってました」
いつもは、驚かされて、ちょっとイラっとさせられるメッセージさんの声が天使の声のように聞こえた。
なぜなら今の俺が考えうる現状で生き残れる最後の手段がレベルアップだけだったのだ。
それに、大量にありんこを倒していたので、きっとレベルアップ間近だろうという予感があった。
赤色ありんこ1匹か2匹くらいでレベルアップすると思っていたが、メッセージさんの声は聞こえてこなかった。そして、3匹目の赤色ありんこを倒して、ここでレベルアップしなければもうだめだ。そう思っていたところで聞こえてきた天使の声だった。
そして、レベルアップすれば、麻痺攻撃に対する耐性の獲得を早めることができるのではないかと、なぜだかわからないが確信していた。
そして、麻痺耐性(小)の獲得だけでこれまでほとんど動けない状態だったのが、半分以上動けるようになった。早いスピードは出ないが、全力をだして普通のスピードくらい出すことが出来ていた。
これだけスピードが出れば十分だ!
そこで、赤色ありんこの噛みつきに合わせて、後方ジャンプで赤色ありんこの攻撃をかわした。
「よし、赤色ありんこの側面が無防備だ!これまでのうっぷんを晴らさせてもらおうっ!」
そして、こちらも赤色ありんこに向かって噛みつきを行った。
しかし、俺の噛みつき攻撃は見事に外された。
もちろん、今の麻痺が残っている状態では赤色ありんこのスピードに追い付くはずがないのはわかっていた。当たればラッキーと思っていたのだ。
しかし、急に動き出して攻撃を仕掛けてきた俺に、2匹の赤色ありんこは動揺して動きが止まっていた。
噛みつきは当たっても外れても、水弾丸(改)槍で仕留めようと考えていた。そこに、2匹の赤色ありんこが動揺で止まっていれば、後は、予想した通りの結果となった。
シュヒュン! シュヒュン!
2発とも赤色ありんこに命中した。
赤色ありんこ残り0匹
周りを見回して、周囲の確認を行った。
「今のところ、他のありんこの追撃はないようだな。だけど、レベルアップしたから、あと25分位でまた、睡魔が襲ってくるよぉ~。めんどくさいなぁ。まあ、麻痺も残っているし、かなりダメージも受けてしまったから、いったん住処に戻るとするか」
周囲はありんこ達の死骸であふれていた。
「ふぅ~~~~。だいぶ攻撃を受けたもんな。それにしても、鋼外殻がなかったら、絶対に死んでたよな。鋼外殻すげ~なぁ」
そう考えながら、持ってきていた緑エノキを食べて少しHPを回復した。
「そうだっ!チョッコレートッ!たらチョッコレートッ!う~んっ!ありんこには悪いがうまいんだよなこれ!」
おみやげに、ありんこを持ってゆっくりと住処に戻って行った。途中、毒蝶々が返りを邪魔してきたが、水弾丸で蹴散らしてやった。そして、多少、帰り道で時間を食ったが住処にもどった直後に睡魔に襲われた。久しぶりに深い眠りについた。
※ ※ ※
しっかり眠ることができたので、体力も疲労も完全に回復できた。目が覚めたので、昨日のありんことの戦いを振り返ってみた。生き残るためにも、反省は必要だ。
やはり一番の問題は、赤色ありんこと普通のありんことで数を減らすことを優先したため、攻撃する選択をミスったことだろう、レベルアップがなければ死んでたもんな。
今回は、たまたま、レベルアップで麻痺耐性(小)を獲得することができたからこそ、何とか生き残れた。しかし、今後は色のついたモンスターは最大限、警戒対象としておかないといけないと心に刻んだ。
「よし、これで反省終わりっと。反省も必要だけど、お腹すいたもんなぁ。それでは、待望のチョコレートの時間で~す。ありんこだけどね!」
パクッ、ガジ、ガジ・・・もぐもぐ。
「う~~~ん!やっぱり、うまいなぁ~。何度食べても、まさにチョコレートだよ」
激しかった戦いの後だから、余計に、甘さが体に染み渡る気がした。一気に甘いありんこを食べすぎた為、少しうぇっとなり、口直しに緑エノキを食べるなどして一息ついていた。
「そうだ、今度のレベルアップでレベルが10に上がったんだった。うぅぅ!楽しみだぁあ!」
気になっていたステイタスを開くことにした。レベルが10に上がったので、確認したい項目があったのだ。
実は、レベル5になった時、レベル表示の下に分母が10と表示されたのだ。俺の予想では、きっと「進化」に関係があるのではないかと踏んでいたんだ。だから、このレベル10がとっても待ち遠しかったのだ。
「よ~し!ステイタスでろぉ~。」
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【名前 】 なし
【種族 】 スネーク
【ランク】 G
【レベル】 10/10『進化』(up)
【HP 】 345/ 345(up)
【MP 】 1280/1280(up)
【体力 】 105(up)
【力 】 90(up)
【知力 】 82(up)
【素早さ】 90(up)
【物理攻撃力】210(50+160)(up)
【魔法攻撃力】168(+4)(up)
【物理防御力】550(55×10)(up)
【魔法防御力】330(33×10)(up)
【通常スキル】
噛みつき ランク6
牙 ランク6(+160)
巻き付き ランク6
ジャンプ ランク6
魔力操作 ランク6
NEW)隠密 ランク1(MP=50 TIME=30min)、
NEW)気配察知 ランク1
【特殊スキル】
卵の殻壁 ランク6(×10)
水弾丸 ランク6(MP=1)
水弾丸(改)ランク4(MP=15)(up)
鋼外殻 ランク2(MP=100 TIME=60min)(up)
【耐性 】
毒耐性(中)
NEW)麻痺耐性(小)
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「きたぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!。」
あまりの嬉しさに、トリプルジャンプからの後方宙返り&3回ひねり、着地をしたら、体の中心を軸にコマのように回り、最後は頭と尻尾のハイタッチ!!という、久しぶりに、奇妙な蛇ダンスを披露してしまった。
予想通りに、レベルの下に、『進化』の文字が出ていたのだ。まあ、最初の進化だから、それほど、急激な進化ではないとは思うが、それでも、進化は男のロマンだと、興奮が止まらなかった。
「えーと、それ以外では、なんだ、スキルに隠密と気配察知という新しい項目が増えていた」
「隠密は見つかりにくくなるってことだろ、でも、気配察知は気づいていない敵に気づくってことかな?!」
スキルについて少し考えてみたけど、それよりも、今最も気になっている進化をしようと考えた。スキルについては・・・あとでいいや。そう考えて、すぐに忘れてしまった。
これまでの、ステイタスや魔法の操作方法と同じだろうから、進化の文字のところを眺めて、進化先と考えてみた。
【 『ラージスネーク』 に進化しますか? YES or NO】
「うわっ!」
画面に表示されるのかと思ったら、いつもの急にしゃべるメッセージさんだった。本当、だれかわからないけど、驚かすのを楽しんでるんじゃないのかな?
そんなことを考えながらも、
「もちろん、YESだ!」
【『ラージスネーク』に進化します。】
メッセージが流れてきてすぐに、レベルアップ後の睡魔がやってきた。
「えっ、さっき起きたばかりなのにぃ~。また寝るのか?!だけど、ラージスネークどんなもんかな、楽しみだな」
そして、また、ゆっくりと眠りに落ちていくのだった。