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119 大きな緑エノキもどき

ギィは左の壁に沿ってかなり奥まで来ていた。赤ラインドブネズミを見ると、自分達を探しているが、中央の奥の方を探しているようだった。


尻尾に絡めていたアリスをゆっくりと地面に降ろして、うつぶせになるように調整した。



「アリスちゃん、緑エノキ食べれそう?」


「ええ!食べておくわ!今は体力回復が必要ですものね!」



ギィは自分の首に下げている緑エノキをアリスに渡すために外そうと下を向いた。すると、目の前の壁の下の部分に緑エノキらしきものを見つけた。


しかし、よく見ると緑エノキではなかった。緑エノキは緑色で上の部分に丸みがあり、そこからまっすぐに下の方に細く伸びていた。しかし、目の前にあるのは色は同じ緑色だったが、上の部分が丸くなくてひらべったくて、広がってた。しかし、そこからまっすぐに下の方に伸びているのは変わらなかった。


ただ、少し違うのは大きな緑エノキもどき1本で、緑エノキの1束と同じくらいのサイズだった。



「アリスちゃん見える?これ緑エノキかな?」



ギィは大きな緑エノキもどきを1本とって、アリスに見せていた。



「う~ん、ギィちゃん!たぶんそれは違う種類のものですわ。食べても大丈夫かどうかわかりませんわ」


「違うのかぁ~!でも、似てるし!食べてみればわかるよね。パクッ!!」



アリスは食べてもいいかどうかわからないと言ったにもかかわらず、ギィはいきなり自分の口の中に大きな緑エノキもどきを放り込んだのを見て慌てていた。



「ちょっ!ちょっとギィちゃん!大丈夫ですの?」



ギィは、大きな緑エノキもどきを口に含んだままもぐもぐと動かしていた。口に入れて咀嚼しても特に問題はなく、特に害があるものでもなさそうではあった。



「私毒耐性があるから大丈夫だよ。でも、特に変な味はしなかったよ。それよりも、なんかHPがぐ~~~~んと回復した気がする」



ギィはうれしそうに大発見したかのような返事をしていた。



「あっ、待って!それだけじゃないよ!MPも少し回復している気がするよ!!すごい!」



ギィは無理をして足に痛みがあったが、それがすーっと消えていく感覚を受けた。そして、体力が回復しただけではなく、気力がみなぎってくる感覚も同時に受けていた。



「私も試してみたい気がしますの。ですが今瀕死の状態ですから、いちど普通の緑エノキで体力を回復してからにしますわ」



ギィは準備しておいた緑エノキをアリスに食べさせてHPの回復をさせることにした。



「アリスちゃんこれを口の中に入れるよ!いいかい?あ~んしてね!!」


「お願いしますの!あ~ん・・・てね!あはっ!ちょっと恥ずかしいですの!」



麻痺して動けないアリスは口を開けるしか緑エノキを食べる方法がなかった。しかし、食べさせてもらうことに慣れていないアリスは少し恥ずかしそうだった。



「アリスちゃん!弱っているときはお互い様だよ。フフッ!!」


「ギィちゃん!何か楽しんでいませんこと!」


「フフッ!そう見える。ちょっと楽しんでるよ。でも、これもいい経験だね!アリスちゃん!」



ギィは普段お姉さまなアリスを妹を扱うように接していた。本人にはその気はなかったが、自然とやさしいお姉さまになっていたのだ。



「はい!どうぞ!あ~ん!」


「あ~ん!パクッ!」



アリスはギィにいい経験といわれたので、仕方なく口を開けて緑エノキを食べて、HPの回復をした後、大きな緑エノキもどきを口にした。



「本当!すごいですわね!HPだけでなく、MPもほとんど回復できましたわ。これで、私の麻痺が解けたら仕切り直しですわね!!」



アリスは休憩でMPを8割位回復し、緑エノキで4割位HPが回復していた。その状態で大きな緑エノキもどきを食べた後に、HP・MP共にほぼ全回復まで上昇したので、再戦の意欲であふれていた。


そうして、赤ラインドブネズミの方を見て状態を確認した。すると完全に自分達を見失っていて、周囲をゆっくりと見回していた。下手に動いて死角から攻撃されるのを警戒しているようでもあった。


ただ、リーダー格のドブネズミの姿が見えないので、もしかして赤ラインドブネズミが姿をさらしてる間に自分達を探している可能性もあるので気は抜けなかった。


アリスの麻痺が解ける様子は全くなく、会話を楽しんでいたが、反面、ギィは内心少し焦っていた。


その原因は赤ラインドブネズミの白とげである。


麻痺耐性のあるアリスですら麻痺してしまう。そんな白とげの猛攻撃を食らったらアリスも自分もここで死んでしまう。


だから、今のギィは絶対に白とげの攻撃を受けてはいけないのだ。


振り返ると、これまでの戦闘、特にラージバットとの戦いですら、死を意識することはなかった。もちろん、戦い始めたころに死にかけたことはあったが、それ以来、これほどの厳しい状況になったことがなかった。


師匠のバックアップの力を今更ながらに痛感していた。


幸い、赤ラインドブネズミは今自分達に気づいていない。だから、早くアリスの麻痺が解けることを今か今かと待っていた。


そして、今は自分とアリスしかいない。この状態で何ができるかを必死で考えるが、いい案がどうしても浮かんでこなかった。


これまで考えてこなかったから、浮かんでくるはずがなかったが、それでも、ギィは必至で考えた。



「アリスちゃん!麻痺が解けるまで私が守るからね。絶対に守るからね。生き残るよ!!」









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