118 アリスの救出!
ギィは全力で赤ラインドブネズミに向かって走った。動かないアリスに白とげの猛攻撃が加わると本当にもうだめかもしれないと感じていた。
今ですら、アリスが生きているかどうかわからないのに白とげの猛攻撃を食らうと完全にとどめを刺されると同じことだ。ギィはそう感じていた。
「だけど、攻撃をされているってことはもしかしたらまだ生きているかもしれない・・・よね!!」
赤ラインドブネズミがアリスに向かって攻撃を仕掛けているということに、わずかでも生きているという望みをかけてギィは走り続けた。
赤ラインドブネズミは数メートルまで近づいてきていたギィに気づくことなくアリスに向かって、白とげの猛攻撃を始めていた。
「いけない攻撃が始まっちゃった。これ以上近づくのは無理かも」
白とげの猛攻撃がアリスに届いていた。
そして、赤ラインドブネズミからの白とげの発射から、わずかに遅れて狙いを定めた。
ギィはファイヤーボール、そして、ファイヤーショット3連弾を赤ラインドブネズミに向かって打ち放った。ファイヤーショットを発射するのと、ほぼ同時に少し右に避けて赤ラインドブネズミからアリスが見える位置までジャンプした。
赤ラインドブネズミは後方から急にファイヤーボールの攻撃を食らいよろけていた。驚きと衝撃によってバランスを崩してしまったことで、白とげの猛攻撃が止んだ。
さらに、あとから来たファイヤーショット3連弾の直撃を食らった赤ラインドブネズミは左側に倒れ込んでいた。
「今のうちだ!」
ギィは赤ラインドブネズミが倒れ込んだ隙を利用して、アリスに向かって進んだ。
アリスを救うためにギィが考えたのは、赤ラインドブネズミがアリスから意識を外させる。そして、走りながら尻尾を使ってアリスをさらっていくと決めていた。
「うん!予定通りに進んでる!!」
ギィはアリスに向かって走り抜けながら、尻尾を絡めてアリスを持ち上げた。
今のままではアリスの状態を確認することはできないが、とにかく落とさないようにしっかりと尻尾を使ってアリスの体を絡めた。
そのまま草むらの深くなっている方まで進んだ。
そして、草むらに入って体がピクリともしないアリスに向かって、全速力で走りながら優しく声をかけた。
「・・・・ちゃん・・・・大丈夫・・・アリスちゃん・・・声はでるの!!!」
アリスからの返事がない・・・・不安な気持ちがわきあがった。
確認の為にもう一度声をかけようかどうか迷った。
これで、声をかけても返事がないとすると、ギィは不安が現実に近づいてしまうことを恐れていた。
それでも、声をかけずにはいられなくなって声を出そうとした。
すると、小さな声だったがはっきりとした返事が聞こえてきた。
ギィは喜びにあふれて、アリスの声に耳を傾けた。
「あらっ!天使って羽の生えた人型だって思っていましたの!でも、本当は中の良かったお友達なのですの!」
「ちょっと!アリスちゃん!何言っているのっ!大丈夫なの!?」
ギィは走りながらアリスが変なことを言い出していたので、心配になった。だけど、アリスから声が聞こえてきたことに関しては少しほっとしていた。
「えっ!何!ここは天国!?ギィちゃんも死んじゃったんですの!?」
「違うよ!アリスちゃん!でも、生きているんだね!よかったぁぁぁあああ!!!」
ギィの言葉で、アリス自身も生きていることに気が付いた。しかし、麻痺がかかった状態では体が動かせないので、何もすることが出来ないから、ギィに質問をしてみた。
「ということは!私はまだ生きているんですの!そして、ギィちゃんが助けてくれたということですの?あれっ、ギィちゃん麻痺はどうなりましたの?」
「アリスちゃんが赤ラインドブネズミの白とげの猛攻撃を食らっている間に、何とか麻痺が解けたので慌てて救いに行ったんだよぉ~!でも、救いに行きながらも、アリスちゃんが死んでいるんじゃないかと心配で心配で・・・うぇ~ん」
ギィは赤ラインドブネズミから大分距離が離れて、アリスの無事が確認できたことで、涙があふれてきて走りながら泣いていた。
「そうでしたの!ギィちゃん。本当にありがとうですの!」
アリスは麻痺しているので声だけだったが、ギィが救ってくれたことに心からお礼を述べた。
「はっ!でしたら、赤ラインの御方はどうなりましたの?もしかして、ギィちゃんが倒しましたの?」
「ううん!私には無理!」
ギィは頭を横に振りながら、力なく答えた。
「赤ラインドブネズミの白とげは私にとっては倒すのが無理な相手かもしれない。だから、目くらましで隙をついてアリスちゃんをさらってきたの!!」
「そんな相手だったのに・・・もしかしたら、ギィちゃんも白とげで麻痺になって倒されていたかもしれなかったのに・・・本当に感謝しますの。」
「えへへっ!!必死だったからね。だいぶ赤ラインドブネズミから離れたからそろそろいいかな!」