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117 足よ 動け!

 白とげの猛攻撃が止まらない。


 身動きも防御も取れない姿勢での白とげの猛攻撃はダメージの蓄積を加速させた。



 ビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッビシッ・・・・・・・・・・・



「だんだん・・・いしき・・・が、きえ・・・て・・・・・いく」



 師匠からこの場所は距離もあり、ギィちゃんは麻痺で動けない。


 そして、今、自分も麻痺で動けなくなり、白とげの猛攻撃を受けていた。


 対応できるのは瞬きをするだけ、それ以外の動きが完全に麻痺してしまっていた。


 ダメージの蓄積も上がり、意識が消えているのは、同時に命の火が消えかかっていることと同じだった。


 アリスは意識がもうろうとした状態でありながら、師匠とギィちゃんとの出会いから、キルアント族のレベル上げ、それに自身の進化を思い出していた。


 師匠との出会いでは、初めて死を意識した。


 そして、母であるメーベル女王から母親としての声をかけてもらった。


 最もつらいことと、最もうれしいことを師匠とギィちゃんとの出会いで経験することが出来た。



 この出会いはずっと続くと思っていたのに・・・・。


 見たこともない新しい世界を見て、知って、聴いて、感じて夢に希望に膨らんでいたのに・・・・。


 こんなところで終わるなんて・・・。




「ごめんなさい・・・みなさま・・・」




 アリスはずっと続いていた衝撃がなくなったのを感じた。


 これが、死なの!


 ああ、私、死んでしまったのですわね!!


 不思議ですわ!


 死んでしまっても、意識は残っているのですわね!





「・・・・ちゃん・・・・大丈夫・・・アリスちゃん・・・声はでるの!!!」




 ※     ※     ※


 ギィは麻痺が解けるのが今か今かと待っていた。



「まだなの!まだ麻痺解けないの!アリスちゃが・・・アリスちゃんが・・・」



 赤ラインドブネズミの麻痺が外れてきていた。そして、そのタイミングを見計らってアリスが赤ラインドブネズミに攻撃を仕掛けようとしていた。


 それと、同時にアリスの後ろからドブネズミが向かっているのが見えた。見えたと言ってもあくまで草むらの動きから想像されたのだ。


 しかし、ドブネズミの可能性はかなり高そうだった。姿が見えているのは、でかドブネズミと赤ラインドブネズミだけだったからだ。そして、アリスの後ろに向かって動いている草むらの流れから判断した。


 仮に、ドブネズミでなく、別のドブネズミだとするとさらに危険度が増すだけだ。


 そんな状態で、アリスが赤ラインドブネズミに攻撃を仕掛けると、必ず挟撃されてしまう。


 あいつらの上等手段だった。


 でかドブネズミと赤ラインドブネズミに分かれて戦うことから、ドブネズミに関しての注意が完全にはがれていることに気が付いていたのはギィだけだった。



「アリスちゃん!だめだよ。そっちに行ったらだめだよ!」



 ギィの場所からアリスの所まで声が届くはずがなかったが、ギィは声に出さずに入られなかった。



「まだかなっ!まだかなっ!早くっ!早くっ!」



 尻尾が少しづつ動き出した。



「動く!動くよっ!」



 ギィは歩くよりもゆっくりとだったが、麻痺が解けるのを待つ余裕がなかったため、動かない足を引きづるようにして歩き出した。



 ギィが歩き出すと同時にアリスが攻撃態勢に入っていた。


 しかし、歩みは変わらず引きづっていた。



「もっとだぁ!もっともっと動けっ!う!ご!けぇぇぇ!!!」



 体に力が入らないが、何とか歩けるようになっていた。



 アリスの方を見ると、赤ラインドブネズミによる白とげの猛攻撃を受けていた。



「アリスちゃん!お願い耐えて!!」



 ギィは祈るように叫んでいた。



 麻痺して動かない体を無理やり動かしていたので体中に痛みを感じていたが、そんなことは些細なことと気にしていられなかった。


「よし!動く!完全じゃないけど・・・かまわない!!」


 痛みを我慢しながら、歩行から小走りそして全力疾走へと変化していった。


 アリスを見ると動きが完全に止まっていた。


「もうだめ・・・なの。いや!アリスちゃんに限ってそんなことは絶対にない!!」


 全速力でアリスのところまで走りながら、あの白とげにあたったら、自分のあの場で麻痺してしまう。アリスを救うためには、目くらましが必要。


「そうだ!ギリギリでファイヤーボールを打って目くらましをした状態で救おう」


 時間がない今考えられることはそれくらいしかなかった。今は何とかしてアリスを救うことが先決だった。


 そのためにはまっすぐにアリスの所に向かいたかった。しかし、赤ラインドブネズミに自分の存在を気づかれてしまうとアリス救出が絶望的になってしまう。


 そのため、タイムロスにはなるが、少し回り込んで赤ラインドブネズミの後ろ側に進むことにした。


「よし!あと少し!」


 赤ラインドブネズミのギリギリ死角になりそうな右斜めまで進んだ。


「赤ラインドブネズミは私のことは気が付いていない。ここまでくれば大丈夫!!」


 ギィが赤ラインドブネズミの死角に到着したと同時に、赤ラインドブネズミの白とげの攻撃が再開した。


「白とげの準備ができちゃったの!!まってっ!まってっ!まってっ!」

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