113 でかドブネズミとの戦闘開始!
アリスはパラライズニードルの効果があるかどうか赤ラインドブネズミの様子を見ていた。
赤ラインドブネズミからの視線は来ているが予想外に行動はできていなかった。麻痺効果のある白とげを使って来る以上、麻痺耐性を当然持っていると思っていた。
しかし、今赤ラインドブネズミは麻痺で動けなくなっている。つまり、麻痺耐性はあるが、かなり弱いものと推察された。
パラライズニードルは麻痺毒を直接打ち込むから、麻痺の効果も強かったのだろう。
アリスにとって今は絶好の攻撃チャンスだった。
「せっかくの攻撃チャンスですけれども、少し休憩させていただきますわ!この後にも戦いが控えておりますので、一旦下がらせていただきますことよ。ほほほほほっ!」
アリスは赤ラインドブネズミに向かって余裕があるふりをして、やさしい言い回しであったが相手を威圧するように伝えた。
しかし、本当は、自分に対する白とげ攻撃を分散させるために、榴散弾の連射をした。そのことがMPを使いすぎて枯渇していたのだ。
MPを使わない牙での噛み付きなら、追加ダメージを与えることができていた。
しかし、麻痺がいつ解けるかわからないし、赤ラインドブネズミとの戦いの後にもでかドブネズミとの戦いが続く可能性があったので、無理をするのはよくないと判断した。
そこで、赤ラインドブネズミから距離を取り、草むらの中に身を隠した。
赤ラインドブネズミは麻痺したまま体を動かせなかった為、背中側で行われたアリスの行動はまったく見えていなかった。そして、それは出来るだけ長めにMP回復時間が欲しかったアリスには丁度良かった。
そして、草むらの中で、体を休めて少しでも多くのMPを回復できるように努めた。
※ ※ ※
アリスが後ろを通って回り込むのと丁度同じ時、師匠とでかドブネズミは、もう一つの戦場として、中央よりも右側で対峙していた。
自分はアリスが持ってきてくれた緑えのきのおかげて少しであるが体力を回復していた。
しかし、アリスの持ってきてくれた分だけでは、3割程度の回復しかできなかった。
緑えのきで回復できると言っても、万能ではないからな!
まあ!回復できただけでも御の字だろう!
でかドブネズミは、自分の方を向いていたが、攻撃をしてこようとはせずに自分の様子をうかがっているだけだった。
なんで、攻撃してこないんだろうなぁ!
自分のことを観察しているのだろうか!?
攻撃してこないならまあいい!
こちらも様子を見させてもらうぞ!!
でかドブネズミと自分は攻撃はしていないが、お互いに相手の出方をうかがうような、ある種の緊張感で包まれていた。
そんな中、ふっと頭に言葉が浮かんできた。
「・・・頭が悪いんですのよ」
アリスの言葉だった。
そして、なぜかその言葉を信じる気持ちが、自分の心に強く上がって来ていた。
まさか、自分が攻撃を仕掛けるのを待っているだけなのか!?
いやぁ〜!そんな訳ないだろう。
へんな想像を続けるのもよくないと思い。早々と考えを切り替えることにした。
そして、でかドブネズミは自分を分析しているから攻撃を仕掛けてこないということにした。それなら、自分もこの時間を利用して、戦い方を考えるためにわかっていることを整理するだけだ。
①アリスが赤ラインドブネズミに向かって突撃を仕掛けた時にアリスの動きに合わせて、移動しているところを見たが、移動のスピードはそれほど速くはなかった。
まあ、あの体のサイズなら当然だな!
②長さだけなら自分の方が長いが、全体のサイズを考えると自分よりも大きいと考えた方がいいだろうな。そうすると、その分耐久性もHPも高い可能性があるな。やはり、HPを削り合いながらの戦いは避けられないか。
③攻撃はまだまだ隠している部分も多いはずだが、ファイヤボールを撃ってきた以上炎属性がおそらく主属性だろう。自分は水属性の水弾丸があるから、攻撃面はやや有利かもしれないな。
今わかっているところはこんなとこか!とにかく、ギィが戻ってくるまでは無理をせずに遠距離からじわじわと攻撃を繰り返していくことになるな。
でかドブネズミは一向に攻撃を仕掛けてくる気配がなかった。何を考えているのか理解できないが、とにかく、このままお見合いしていて、もしも相手に何かの策があった場合に、その時間を安易にくれてやるのは危険だ!
多少ダメージを受けても、構わないだろう!
とにかく様子を見るためにも攻撃を仕掛けてみるか!
でかドブネズミに攻撃を入れる前に、1度、アリスの方を見見た。白とげを警戒して、移動しながら硫酸弾を発射していた。そして、予定通り赤ラインドブネズミを引き離そうと画策していたが、なかなかうまくいかないように見えた。
アリスの方も苦戦しているようだな!
それなら、自分の方はでかドブネズミにご挨拶でもしておくことにしようか!!
でかドブネズミは攻撃こそしてこないが、自分の移動に合わせて常に正面を維持していた。いつでも、反撃可能だと言わんばかりにその場で移動していたのだ。
何かの攻撃があることを予見しながら、それを覚悟でジャンプした。
でかドブネズミはすでに自分のジャンプでの移動を見ていたので、特に慌てることなく着地地点を狙ってファイヤボールを放ってきた。
でかドブネズミから放たれたファイヤーボールの弾道がかなり正確に狙ってきていたので、頭を守るように体から着地体制をとることに変更した。
そして、ジャンプ中であったが、ウルトラソニックを無理やりでかドブネズミに向けて照射した。
ウルトラソニック自体は範囲照射なので、問題なくでかドブネズミに当てることが出来た。
防御態勢での着地とはいえ、ファイヤーボールをよけての着地は無理そうだったので、あえて直撃する形となったが構わずに着地した。
このご挨拶の攻撃は、ジャンプから着地して、その後すぐに折り返し後方にジャンプで下がって距離をとろうと思っていた。
しかし、、でかドブネズミの命中精度の高さが予想以上だったので、ジャンプ先をでかドブネズミの左後方に向けて変更し再ジャンプをした。
再ジャンプの際、ファイヤーボールでダメージを受けることになったが、自分の周りに砂ぼこりが立っていて周囲は見えにくくなっていた。そのはずなのに、自分が再ジャンプで向かったでかドブネズミの左後方に来るのがわかっていたかのように、すでにでかドブネズミは正面を合わせてきていた。
「なんだこいつ、サーチか何か所在を把握するスキルを持っているのか!?」
ジャンプ中に、着地後すぐに攻撃できるように水弾丸(改)槍を準備しながら、でかドブネズミの所在確認の鋭さに驚いていた。