110 新たな影
間に合った!!
自分は大きく息を吸い込み、体を緊張させて攻撃態勢をとった。
この攻撃が終われば、作戦パターン④の完了だな!
振り返ると、単純な作戦のはずだった。
まずは中央の赤ラインドブネズミにウルトラソニックを当てて素早さを下げている間に、壁側の赤ラインドブネズミを倒し、もう一度、中央に戻ってきて、残った赤ラインドブネズミを倒す。
にもかかわらず、赤ラインドブネズミは予想以上に臨機応変に状況に対応してきていた。
そのため移動などで、少し無茶をしてきた。
まあ、移動に関して色々と工夫することが出来たことは、今後の戦いにおいて自分の成長につながったと思われるんだが・・・。
締めくくりは正面で慌てている中央の赤ラインドブネズミを仕留めるだけだ。
壁側の赤ラインドブネズミと同じように締め付け&ポイズンファングで決着をつける。
まだまだ、ウルトラソニックの効果は続いているようだ。
そして、一気に体を伸ばして、中央の赤ラインドブネズミに巻き付いた。
中央の赤ラインドブネズミは体の中で暴れて、抜けようとしていたが抜けられるはずがない。
「終わりだっ!」
ウルトラソニックの効果時間・・・残り5秒
自分は中央の赤ラインドブネズミの首元に向かって、口を広げ、牙にポイズンファングをまとわせて噛み付きを・・・。
「師匠ぉお!!後ろから・・・!危ないですわぁぁぁああああ!!」
自分の牙が中央の赤ラインドブネズミの首に入るか入らないかといった瞬間に後ろからアリスの声が聞こえてきた。
それと同時に、後ろから強い衝撃を受けた。
うっ!なんだっ!
巻き付いていた体の力が抜けて、中央の赤ラインドブネズミに逃げる隙を与えてしまった。
逃げられると思ったが、後ろからの強い衝撃の正体を確認するために、意識を後ろに向けた。
何か巨大な影が見えた。
その影が何かを確認しようとしたら、再度、その影から光るものが見えた。
やばい!さっきの衝撃は何かの魔法なのかっ!
もう少しだったのに・・・。
目の前にいる中央の赤ラインドブネズミはほとんど自分の巻き付きから抜け出していた。
しかし、それどころではなかった。
とにかく、この場所から離れないとっ!
後ろかな何かの魔法が迫ってきていた。
自分は赤ラインドブネズミの巻き付きをほどいて、その場で垂直にジャンプをした。
後ろから来ていた攻撃をかわすにはそれが一番早いと考えたからだ。
ジャンプをしながら、中央の赤ラインドブネズミが影の方に向かって走り出しているのが見えた。
すでに、ウルトラソニックの効果は切れているようだった。
一方、アリスの方から影に向かって水色のラインが見えた。
きっとアリスが硫酸弾で援護してくれているんだろうとすぐに分かった。
自分の真下を赤い炎系の巨大な楕円形のものが通過していった。
「なんだ!あいつこんな草むらの中で炎系の魔法を使いやがって、火事になっても構わないっているのかっ!!」
そして、自分は着地してすぐにアリス達がいるこの洞窟の入り口の方に向かって、再ジャンプをして影から距離をとった。
近くにギィの姿は見えなかったが、アリスが硫酸弾を撃ち続けているのが見えた。
そして、自分もアリスと合流するために全速力で移動した。
移動中に影の正体を確認した。
そこにいたのは、巨大なドブネズミの姿だった。
側にリーダー各のどぶねずみがいたが、その大きさの3倍はあるのではなかろうかと思われた。
確実にギィよりも大きく見えた。
アリスの側までは、硫酸弾の援護があったので問題なく移動できた。
「アリス!すまない!援護ありがとう!!」
「問題ないですわ!それよりも、師匠! ファイヤーボールの直撃を受けていましたけれども、大丈夫ですの?これ緑エノキですわ」
アリスは先ほどの、中央の赤ラインドブネズミを逃がしてしまう原因になった炎系の魔法:ファイヤーボールの直撃を受けたことを心配してくれていた。
しかも、緑エノキを準備してくれていた。
赤ラインドブネズミ達との戦闘では白とげの攻撃を受けて、かなり無茶気味に戦闘を繰り返していた。1発1発はたいしたことないのだが、常に連射してくるので、最終的にうけるダメージは、ばかにならないものだった。
しかも、巨大なドブネズミ:でかドブネズミのファイヤボールの直撃を受けたことで、ステータスを確認するとHPは半分を切っていた。
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【HP】 760/1645
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「緑エノキか!ありがとう、アリス!さすが気が利くな!!」
アリスから緑えのきを受け取り、それを食べながら話を続けた。
「それにしてもあいつデカいな!それに平気で炎系の魔法を使ってやがる。火事になるぞ!!」
「きっと頭が悪いのですわ」
アリスが真顔ででかドブネズミの頭の悪さを指摘していたので、こんな緊急な状況にもかかわらずほっこりした。




