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103 ギィとアリスの連携

 師匠が先頭に立ち周囲の草むらを警戒しながら進んでいた。 


 私とアリスも師匠と同じように周りを警戒しながら、草むらがざわついていないかを確認しながら見回していた。今のところは特にドブネズミ達に動きがあるようには見られなかった。


 ドブネズミ達のうちの1匹が、()()()になっている師匠の後ろに回り込んできたら、私たちでそいつを倒すように作戦を立てていたので、実際の所、師匠の合図待ちという状況ではあった。


 そこで、師匠の合図を待っている間に、私はアリスと気持ちを合わせておこうと思い声をかけた。


「アリスちゃん!ドブネズミを次は絶対に倒そうね。」


「ええ!必ず倒しますの!我々の連携を見せつけてやりますの!師匠から合図が来たら、まず、ギィちゃんが先に行ってね。私は麻痺弾で援護してみますわ。草むらが邪魔になっているから、効果がないかもしれないけど・・・やってみますわ!」


 回り込んできたドブネズミをギィが倒す作戦になっていたが、アリスからは支援としての役割を果たすといわれた。草むらが邪魔だと言っていたので、それなら私がドブネズミを投げ飛ばせばいいんじゃないと思ってアリスに伝えた。


「・・・なら、私はドブネズミを投げ飛ばしてみるね!」


「はははっ!ギィちゃん面白い作戦ですわね!それならドブネズミが飛んでいるときに狙いますわ!」


「もう、アリスちゃんたら!私は本気で言っているのに絶対に信じてないでしょぉ~。」


 アリスちゃんは全く信じてないけど、絶対に成功させて見せるから見ててよ! 


 ギィとアリスはいつものように緊張感もなく談笑していた。


 裏を返せばギィもアリスも冷静だと言えなくもなかった。


 まっすぐに進んでいたはずの師匠を見ると、少しずつ左側にゆっくりと進んでいた。私は師匠がドブネズミを回り込ませるために右側に空間を作っているに違いないと判断した。


 そこで、私は師匠のいるところとは反対の右側の草むらを見ていた。それは、師匠から指示が出たとすると、きっと私たちのいるところの正面にある草むら付近にドブネズミがやってくると思っていたからだ。


 今のところ、草むらに動きはなかった。


 アリスちゃんを見ると、私と同じように右側の草むらの動きを探っていた。しかし、アリスちゃんは支援の役割を果たすと言っていたことを実行するために、少しづつ私から距離をとる為に下がっていった。私は師匠の後ろに回り込むドブネズミの位置を想定しながら、ゆっくりと師匠の動きに合わせてついていった。


 師匠はさらにゆっくりと左側前方に進んでいたが、突然、何かを見つけたみたいだった。その後はまるで低空ジャンプをしているかのようにして正面に向かって一気に進んだ。



 来る!!!



 失敗はできない!!ドクンッ!ドクンッ!



 緊張してきた。自分の鼓動が聞こえてくるようだった。



 自分だけで戦うのと違って連携をしないといけない。アリスちゃんの動きに合わせないといけないと思うと思いがけず緊張していた。



 周囲の場所と師匠の進んだ位置から予想場所の最終ポイントを決めた。



 自分が目指すポイントが定まった瞬間、大きく聞こえていた鼓動が聞こえなくなった。それだけでなく、視界が開けたように見えて、邪魔な騒音も静かになっていった。



 師匠があそこにいるから、きっとドブネズミは・・・・・・あそこか!!!



 ギィは師匠の場所から予想した位置の草むらが動いたのに気が付いた。




「右側に一匹回り込んでいるぞ!!!」




 草むらが動くと同時に師匠からの声も聞こえた。私の目指す場所は決まっていて、その予想通りの場所にドブネズミがいるとわかっているような気がした。


 私は力いっぱい走り出した。魔法を使った高速移動もスムーズに発動していた。


 アリスを見て、状況を確認すると何時でも麻痺弾を発射できるといわんばかりに、ポジションを決めてざわついていた草むらの方を向いていた。アリスも師匠の動きから、ドブネズミの回り込んでいる場所を想定していたようだった。


 私がわかるくらいだから、アリスなら当然か!!


 だけど、あそこにドブネズミがいるはずだから、絶対に私が見つけるよ!


 そして、私が投げ飛ばすからね!外したら怒るからね!!



 ギィはまっすぐに走りながらも、少し師匠の方に角度を変えていった。ドブネズミが回り込んだ後に師匠に攻撃を加えるためには、今ざわついている場所からだと、少し鋭角に入ってこないといけないと思った。



 だから、私が進むのは・・・あそこらへんだ!!



 ギィが目指した場所は、最初に草むらが動いた場所と師匠がいる場所の丁度中間位のところだった。ドブネズミと戦った時に見ていたスピードと自分のスピードそれに距離を想定しての位置だった。普段はおっとりしているギィだったが、戦闘に関しての感覚は想像の上をいくものがあった。



 さらにギィは目標の場所に向かって、そこにドブネズミが必ずいると確信しているかのように進んでいった。



 いた!!!



 私に気づいて・・・・ない!!!



 ドブネズミは師匠を攻撃しようと狙っていた。



 師匠が声を出していたので警戒はしているだろうと思っていたが、ドブネズミも仲間との連携に集中し、師匠に攻撃を加えるために体勢を整えている状態でもあったせいか、私が近づいているのに全く気づいている様子はなかった。



 アリスちゃんがドブネズミを狙えているかどうかを念の為確認しておこうと思ったが、アリスは私の動きに合わせて、しっかり体の方向を微調整していた。自分の動きを確実に追っているようだった。



 アリスちゃん!いくよ!ドブネズミを投げ飛ばすからね。狙っててよぉ~!!



 今の状態でアリスに声をかけることはできないので、アリスが最初に言ったとおりにドブネズミを狙ってくれることを期待した。



 猛スピードで近づいてくる私の姿にドブネズミが気が付いた。


 ドブネズミは慌てて回避行動をとろうとしていた。


 前に進むをのはやめて、急に後ろに下がろうとしていた。


 当然、ドブネズミの動きに一瞬のためが出来ていた。



「遅ーーーーい!!!」



 ギィはドブネズミに出来た一瞬の停止状態を見逃さなかった。


 そして、ギィは体を低くして右手の爪をかまえた。


 ドブネズミは頭の上から声が聞こえてきていたので、トカゲは上からくると思って上を向いた。


 ギィの体の大きさはドブネズミの倍くらいの大きさがあるので、ドブネズミは上空からトカゲが攻撃をたたきつけてくると予想したのだ。



 しかし、そこにあるはずのトカゲの姿はなかった。



 ドブネズミは自分の下部から激痛が走り、その後に浮遊感のような感覚を覚えた。



 ギィはアリスとの()()()()通りドブネズミを投げ飛ばすために、下部からすくい上げるように攻撃を加えた。



 ドブネズミは完全にその姿を草むらの上に露わにしていた。



「アリスちゃん!!!」

 パシュゥッ!!


 ギィはアリスに麻痺弾を打ってもらうように口に出して呼びかけた。


 声を出したのと、ほぼ同時に聞き覚えのある麻痺弾が当たる音が聞こえてきた。



 ※     ※     ※



「・・・なら、私はドブネズミを投げ飛ばしてみるね!」


 ギィちゃんなら投げ飛ばしたりしなくても、そのまま攻撃を加えるだけでドブネズミ位なら倒せるはずですわ。ですが、あまりにも真剣に言っているから、否定するのも申し訳ないですわね。 


「はははっ!ギィちゃん面白い作戦ですわね!それならドブネズミが飛んでいるときに狙いますわ!」


 アリスは笑ってギィのドブネズミを吹き飛ばす話を聞いていた。ギィが言っているのは冗談だと思っていたのだ。


「もう、アリスちゃんたら!私は本気で言っているのに絶対に信じてないでしょぉ~。」


 あら!ギィちゃんたらもしかして本気で言ってますの。本当にドブネズミが投げ飛ばされたなら、狙わないといけないですわね。ですが、なんでまたわざわざ2度手間なことをするのかしら。


 ギィの口に出した最後の言葉をきいても、アリスは本当にドブネズミが飛び上がってくるとは思っていなかった。ただ、ギィがあまりにも真剣に話していたので、半信半疑でギィの動きを追うことにした。


 ギィの体は完全に草むらから出ていたので、姿を追うのはいたって簡単だった。


 ギィには麻痺弾で援護をするとは伝えていたが、単純なギィのことだから、強烈な一撃を入れて倒し切る可能性があるかもしれないとも思っていた。


 念の為にギィの姿を追っていたら、ドブネズミとギィが接触する予定の場所に近づいたところで、急にギィの姿が草むらの中に消えていった。


 アリスは気が付いた!


 ギィちゃんは本気でドブネズミを吹き飛ばすつもりですの!



 ギィちゃん判りましたわ!狙いますわよ!!



 アリスはギィの姿が消えた付近を集中してみていた。



「遅ーーーーい!!!」



 ギィちゃんの声が響き渡った。



 来る!!



 アリスはさらに集中した。



 見つけましたわ!!



 ドブネズミが宙に飛び上がってきた。



 絶対に外しはしませんわよぉぉおおお!!!



 アリス3発の麻痺弾をほんの僅か角度をつけて発射した。



「アリスちゃん!!!」

 パシュゥッ



 アリスの発射した麻痺弾の内の2発目がドブネズミに直撃した。


 ドブネズミは麻痺耐性がないようだったみだいで、当たった瞬間に固まっていた。






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