10 レベリングと毒耐性
目が覚めた後、体の状態を確認した。
あれほどの傷を受けていたので、睡眠前は、ほぼ瀕死状態といっていいほどだった。
しかし、起きてから体のダメージを確認してみたら完全に回復していた。
緑エノキの回復効果すごいなぁ!
それに、モンスターの体の回復速度もすごい!
人間だったら、回復するのに何日もかかるくらいの傷だったはずだ。
ここ異世界での戦いは死にさえしなければ、何とかなるかもしれないなぁ。
異世界の回復について感心しながら、レベルが上がったのを思い出した。
「レベルが上がったので、ステータスを見てみようっ!!」
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【名前 】 なし
【種族 】 スネーク
【ランク】 G
【レベル】 3(up)
【HP 】 65/65(up)
【MP 】 20/20(up)
【体力 】 8
【力 】 10
【知力 】 10
【素早さ】 12
【物理攻撃力】 35(10+20)(up)
【魔法攻撃力】 28(up)
【物理防御力】 80(20×4)(up)
【魔法防御力】 48(12×4)(up)
【通常スキル】
噛みつき ランク3
牙 ランク3(+20)
巻き付き ランク3(up)
NEW)ジャンプ ランク2
NEW)魔力操作 ランク1
【特殊スキル】
卵の殻壁 ランク3(×4)、
水弾丸 ランク2(MP=3)
【耐性】
NEW)毒耐性(微)
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新しいスキルは、ジャンプと魔力操作、それに毒耐性(微)の3つか。
それにしても、このタイミングで毒耐性(微)を獲得できたのは良かった。
この辺りは毒持ちモンスターが多いんだよな。
きっと、これからの戦いにはかなり役に立つはずだ!
現在の俺の攻撃はジャンプをして位置を調整し、遠距離魔法でダメージを与えて、倒せないときは、噛みつきと巻き付きでとどめを刺すスタイルだ。
今回ジャンプと魔力操作の新しいスキルが獲得できていたのは、きっと、現在の攻撃スタイルの結果だろう。
特に、水弾丸を撃つことで、魔法をイメージする回数も確実に増えている。
魔力操作はこのイメージ力のアップと関連があるに違いない。
魔法を使えば使うほど、魔法自体のランクが上がり、イメージをすることで魔力操作が上がると考えていいのかもしれないな。
それにしても、毒蝶々の毒攻撃はかなりしんどかったからなぁ。この毒耐性の効果は(微)だが、獲得できたのはとてもうれしいな。
これから色んな耐性を獲得できるとさまざまなシーンで対応力が上がるかもしれないから耐性の項目は要チェックだな。
あとは、MPが2倍か!
レベルが低いからこそ、2倍は助かるなぁ。
これからの戦闘でもガンガン使っていこう。
だけど・・・水弾丸の消費MPはMP=3のまま変わらずか。
しかし、ランクが上がっているので魔法攻撃力が上がっているといいなぁ。
レベルアップによるステータスの検証を終わらせた後、住処の洞窟の入り口から見える水辺が気になっていたのを思い出した。
しかし、水辺までにはスライムがずりずりと歩き回っている。
今の俺は、強さも少し上がっているから、スライムなら倒しやすくなっていた。
1匹ならジャンプで近づいて、噛みつきで倒せる。
2匹なら1匹を水弾丸で仕留め、その後はジャンプ&噛みつきで倒す。
このスライムに対する攻撃はかなり効果的だった。
しかし、毒耐性(微)があるとはいえ、毒蝶々の毒鱗粉は状態異常で頭痛やめまいに気分不良の状態になってしまうので、危機回避はできても、継戦能力は格段に下がってしまう。
だから、用心しながら水辺まで向かって行った。
数匹のスライムに出会ったが、問題なく倒していくことが出来た。
水辺に到着して、側の黄色い花を見上げた。
「この花でけぇぇええ!!」
花の側に行くことで、その花の実際の大きさを認識することが出来た。
側に落ちていた花びらの近くまで行って、その大きさを俺の体と比較してみた。
花びらはスイセンのように途中から横に広がっていたので、花として見えるよりも花びらの大きさは大きかった。
それにしても、花びら1枚と俺の体の長さが俺と同じくらいの大きさに見えた。
花の大きさに夢中になりすぎて、周りの状況把握を忘れていた。
気が付くと、5本くらい先にある黄色い花のところに毒蝶々が5匹飛んでいるのに気が付いた。
危なかった!花に紛れて、毒蝶々の存在を見落としていたよ。
ふぅ~。幸いまだ、あいつらは気が付いていないようだな。
ふふふっ、これは遠距離魔法の絶好の機会だ。
とにかく、まずは1匹を水弾丸で仕留めてみよう。
ビュシューーーーン!
ビュシューーーーン!
1匹に的を絞って、念のため2発を発射した。
毒蝶々のサイズが大きいのもあるが、命中精度もかなり上がっていたので、最初の1発目が見事に命中した。
水弾丸のランクが上がったおかげで、最初の1発目で毒蝶々は倒せた。
だが、2発目は羽に穴をあけただけで通過していった。
水弾丸のランクが上がって毒蝶々でも軽々と倒せるようになっている。
それに、今のMPなら水弾丸だけでも、余裕で倒せそうだな。
そう考え、毒蝶々に目を向けると、まだ、俺の方に気が付いていないようだった。
しかし、攻撃を受けたことで、毒蝶々は散らばって警戒していた。
警戒していても、この距離でこの命中精度があれば簡単な的だ!
そう思ったが、もしも外して、気づかれてしまう次は自分の場所もばれてしまうだろう。
それに、毒鱗粉が厄介なので、もう少し近づいてから水弾丸を発射することにした。
黄色い花3つ分位の距離まで近づき、残っている毒蝶々4匹に対して、今撃てる水弾丸全弾6発を撃ち込んだ。
この距離の命中精度はかなりのものだった。
毒蝶々4匹が密集したタイミングに合わせて、水弾丸を発射すると、なんと最初の4発で毒蝶々4匹を仕留めていたのだ。
「思いの外、順調だったな!レベルが上がって、水弾丸の発射回数が増えたから、戦いに余裕が出てきたよ」
その後も調子に乗って、MPの回復を待って、毒蝶々の集団に次々とアタックをかけていった。
4回目のアタックの時に、うっかりMPを越える7匹の毒蝶々に攻撃してしまっていた。
前にいた5匹は水弾丸で倒すことが出来たが、その後ろにいた2匹に気がつかず毒蝶々の毒鱗粉攻撃を食らってしまった。
一応、毒耐性(微)のおかげて、何とか頭痛やめまいに襲われたにもかかわらず、ギリギリ耐えることが出来た。
しかし、MPが足らないので、水弾丸が撃てない以上、直接攻撃しかない。
状態異常のままだったが、ジャンプ&噛みつきで2匹を何とか倒すことが出来た。
「今のはやばかったなぁ。5匹以上の場合は気をつけよう」
そう口に出して反省した。
しかし、多少無茶はあったものの短時間でレベルを2つ一気に上げることが出来た。
これにより、ステータスも大幅に向上し、スキルランクもアップした。
多少無茶した恩恵で毒耐性(微)から毒耐性(小)へと毒耐性を向上させることが出来ていた。
毒耐性(微)の効果として、頭痛は軽減するが、めまいに対する効果は少なかった。
めまいは水弾丸の命中精度を下げるので幾分厄介に感じていた。
しかし、毒耐性(小)にアップすることで、頭痛だけでなく、めまいも激減していた。
これにより、MPがなくなっても、直接攻撃で毒蝶々を倒せたことがレベルを2つ一気に上げるきっかけとなっていた。
レベルが上がると必ずやってくる厄介なやつがいる。
そうだ、あの睡魔だ!
「レベルがどんどん上がるのはいいんだけどなぁ・・・この睡魔だけは何とかならないかなぁ。遠征途中で睡魔に襲われたら、それこそ命がないんだけど・・・・・・くそぉぉぉ!!」
こうして、物足りないながらも、住処まで戻って休むことにした。
その後、数日間は、スライムと毒蝶々を無双し続けてレベリングを行っていた。
レベルアップ・・・睡魔・・・レベルアップ・・・睡魔・・・レベルアップ・・・睡魔・・・レベルアップ・・・睡魔・・・レベルアップ・・・睡魔・・・レベルアップ・・・睡魔
レベルアップの後に必ずやってくる睡魔。後半はやってくる睡魔のタイミングもわかるようになってきてたので、リズムよくレベルアップをはかっていった。
反面、これまで何となく眠くなったら夜、目が覚めたら朝と考えていたのが、レベルアップで睡魔が来るため、眠っているのが朝なのか夜なのかわからなくなってしまった。
丁度海外旅行に行くとき、飛行機で日付変更線を越えた時のような、変な感覚だった。
もちろん、洞窟の中なので、日が昇ることや沈むことは無い。そのため、朝と夜を判別する方法もなかった。
だから、数日間といっても、なんとなく数日間のような気がする程度だった。
ただ、レベルアップの後半になると、なんとなくだが、いつも倒しているスライムの発生が1日に午前と午後の2回起きているのではないかと考えるようになっていた。
それは、いつも居るはずの場所にスライムが居る時と居ない時があったからだ。
それを繰り返していくうちに、なんとなくある一定の時間経過すると発生することがわかり、大体1日2回スライムを倒すことが出来るとわかってきたのだ。
太陽も時計もない世界の為、時間を確認する手段がモンスターを倒す事しかないことを知った。
それには少し違和感を感じたが、生き残るためにも、レベルアップが必要だし、そのためにもモンスターの討伐は必要と思うことにした。
※ ※ ※
こうして、毎日の日課のようにスライムと毒蝶々を倒していった。
しかし、さすがにレベル8やレベル9になってくるとレベルアップの為に倒す必要のあるモンスターの数も増加していった。
そして、レベル9に上がって、これまでに獲得したスキルを再度確認した。
噛みつき ランク6
牙 ランク6(+160)
巻き付き ランク6
ジャンプ ランク6
魔力操作 ランク6
卵の殻壁 ランク6(×10)
水弾丸 ランク6(MP=1)
水弾丸(改)ランク4(MP=20)
【耐性】 毒耐性(中)
ほとんどのスキルのランクが6になり、威力や効果が劇的に上昇した。
そのなかでも、近接攻撃の要であるジャンプは最初5m位の飛距離から、ランク6になり20m位飛べるようになった。
20mのジャンプが出来るとなると、現在の洞窟では天井にも届くことが出来た。
そうなれば、洞窟内で飛行できる毒蝶々との闘いでもジャンプ&噛みつきで攻撃可能となっていった。
毒耐性(小)と合わせると、毒蝶々との戦いもかなり有利に進めることが可能となっていた。
ジャンプに次いで強力な攻撃手段として、水弾丸(改)を獲得することが出来たことだ。
水弾丸(改)はレベル5にアップしたときに、獲得することが出来たスキルだった。
どういうものかというと、単純に威力がかなり上がった。
そして、威力だけでなく、複数の敵モンスターにダメージを与えることが出来る範囲攻撃が出来たのだ。
範囲攻撃といっても、密集している敵モンスターに限られたが、これまでよりも効率的に攻撃することが出来るようになった。
ただし、サイズが大きいため、発射をイメージするのに時間を要し、発射タイミングも遅く緊急の発射が出来ない、そして、MPの消費も大きかった。
そして、何度か使用しているうちに特殊な使い方が出来ることがわかった。
発射準備をしてからジャンプをしても発射可能ということ。
これは、敵モンスターから見えない場所で、発射準備をする。
そして、敵モンスターにジャンプで近づき、近距離から水弾丸(改)を発射することで、単体への大ダメージ、もしくは、複数の敵への範囲攻撃を行うことが出来るということだった。
「俺って、もう、この辺じゃ敵なしじゃないか!?このまま、この辺の主になって、のんびり暮らすのもありかな」
俺はちょっと強くなったからといって、調子に乗っていた。
しかし、よく考えると食べ物の問題があることに気が付いた。
「・・・だめだ、そういえば、食べ物がなかった!?もと親らしき大蛇の肉や毒蝶々をたべることもできるが・・・・」
以前、味見をしたことを思い出した。
「とにかく、まずい!!それに、甘みのあった、卵の殻も食べてしまったしなぁ・・・。やっぱり、先に進むことを考えないといけないなぁ・・・」
今の俺は立ち止まってはいけない。
この辺で強かったとしても、この洞窟のすぐ先にはまだまだ強い敵モンスターが、あふれているに違いない。
俺の現在の状況を正確に知ることは大切だ、そう自分に言い聞かせていた。
※ ※ ※
レベル9まで上がった次の日の朝
「さあ! 今日もレベル10を目指して、戦って、戦って、戦うぞぉおお!」
声に出して、意気揚々と住処の洞窟を出た。
そして、スライムや毒蝶々を倒すために、いつもの水辺までやってきた。
「おおっ、今日もいっぱいいるな。あれ!? なんだか、今日はいつもより多い気がするな・・・」
いつも大量に、黄色い花の周りを毒蝶々が飛び回っているんだが、今日はさらに多くの毒蝶々が飛んでいた。
いや、飛んでいるというより、何かにおびえて混乱しているような・・・そんな感じに見える位、バラバラに飛んでいた。
「なんでだろう! 何かあるのかなぁ!?」
不思議に思いながら、毒蝶々を倒す順番をいつものように決めていた。
ドドドドドドドーーーーン!
「うわっ、なんか揺れてる。地震か!」
突然、地響きのような音と共に、地面が揺れているような気がした。
「この音と振動はなんだか少しづつ大きくなってないか? いや! 大きくなってるよ。やばい、どうしよう!」
レベルが上がって、強くなっているはずなのに、慌てる癖は変わってなかった。
なんだかこの震動覚えがあるような気がしてならないんだよねぇ。
でも、本当に地震かもしれないし、この辺には、屋根になるものもない洞窟の中だ。
とにかく、動かずにじっとして様子を見ることにした。
「ぎゃおおおおおおおおおおおおお!」
この住処の洞窟に来た時に聞いた、轟音が響いてきた。
「やばい!やばい!やばい!どうしよう、どうしたらいい?」
思わず聞いてしまったが、返事をしてくれる人がいるはずもない!!
って、そんなこと言っている場合じゃないな。
やっぱりあいつだ!
あの巨大なモンスターだった!
あんなに巨大だった親蛇をたおせるようなモンスターに俺が太刀打ちできるはずがない。
「なんだよ、なんであんな奴が、またやってきてるんだよぉ・・・・」
大地震のような振動と轟音はどんどん近づいてきた。
「どこか? とにかく、体を隠さないと!!」
周りを見回すと、水辺は巨大な花が咲き乱れていた。
巨大な花の側には水辺があるから、そこで、身を隠せばいいかもしれない!
側まで行くと、水辺は泉になっていたので、体をその泉の中にかくして、じっとして息をひそめていた。
左側の洞窟から姿を現した、その、巨大モンスターの姿をみて、唖然とした。
まずはそのサイズ、ありえないほど大きかったのだ。
その全長は20m位で、現在の俺の10倍位の大きさだった。
巨大な顎には、どう猛そうな牙が並び、俺なんかは1噛みであの世行きだ。
皮膚は頑強そうな鱗で覆われ、防御力も高そうな感じがした、まるで鎧を着こんだオオトカゲに見えた。
オオトカゲは、俺の存在には気づかず、いや、相手にもしていないように、悠々と地響きを鳴らしながら歩いていた。
そして、俺の住処の洞窟に入って行った。
奥まで行き、何もなかったことに怒りをあらわにするように一声上げた。
「ぎゃおおおおおおおおおおおおお!」
洞窟が崩れてしまうのではなかろうかと思うほどの轟音だった。
そして、獲物がいないことがわかったのか、何もすることなく、そのまま、左側の洞窟へ戻って行った。
「ふぅぅぅぅぅうううううううううううう・・・・・」
泉の中で大きくため息をついて、無事に今の危機を乗り越えることができたことに、ほっとした。
「あいつが、俺の兄弟たち、そして、俺の親を殺したやつか・・・・・」
もと人間で、高校生だった俺と、この洞窟のモンスターである蛇に何のつながりもないのだけれど・・・。
この体からくる本能的なものかもしれないが、仇を討たないといけない相手と認識したのだった。
「いつか・・・俺の親、そして、兄弟の仇は俺がとる!!!」
そう、心に誓った。
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