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9.ダンジョン

ここからが物語の本当のスタートって感じです。

ここはメルト国の首都メルトにある冒険者ギルド本部。


「さて、全員揃ったようだな。これから魔王軍対策会議を始める。」


この会議には各支部からギルド支部長が集まっていた。


議長を務めるのは冒険者ギルドのグランドマスター、マスター・フェルナンドだ。


「まずは魔王軍の侵攻状況から報告する。現在、魔王軍は隣国のカナン大国を攻めている。もしカナンが落ちれば大陸の七割は魔王軍の手に落ちる。」


この報告で場はざわめく。当然だろう、カナンが魔王軍に負ければ次はこのメルト国に魔王軍は侵攻してくるはずなのだから。


フェルナンドは会議を進行する。


「戦況から判断するにカナンが落ちるのは時間の問題らしい。魔王軍がメルトに侵攻してくる事はもはや確定していると考える。そこで……」


一度全員を見渡し指令を言い渡す。


「これより、冒険者で精鋭部隊を作る。各支部からSランクはもちろん、AやBランクからも 精鋭をつのり、いつでも魔王軍と戦えるように準備させろ。」


その後、各支部から本部への報告をして会議は終わった。



✴︎



「さーて、今日はど、れ、に、し、よ、う、か、なー。」



俺はギルド掲示板の前で今日受けるクエストを探していた。


エリーの孤児院から帰ってきて一週間、ようやく俺もこの世界の生活に慣れてきた。


初めはエアコンも、テレビも、味の薄いご飯にもウンザリしていた。


この世界は娯楽が少ない。どこぞの転生者が伝えたのだろうか、それとも偶然かはわからないが、ボードゲームやトランプならある。


しかし、俺はあいにく将棋もチェスもやった事はない。漫画ならよく見てたが残念なことに漫画という文化はこの世界にはないようだ。


「俺にある程度の画力があれば、漫画で一儲けできるかもしれないんだけどな〜。」


なんて事も思った。なんせ異世界に著作権はない。ワ◯ピースも進撃◯巨人もこちら葛飾区以下略も全て俺が描いたことに出来るのだ。それこそ、国一個買えるレベルの大金を手に入れることだって不可能ではないだろう。


ちなみに、俺が唯一ルールを知っているオセロだが、負けたら脱衣とか言うルールの改変がされてたのでやってない。


まぁ、これだけ聞けば異世界に興味持つのは修行僧くらいのものだろう。


しかし、どんな事にも抜け道はある。


今俺はクエストで稼いだお金の半分を調整能力レベルアップに使っていた。


初めは調整能力ってなんだ? って思っていたが実際使ってみるとかなり便利だ。


これは体の感覚を調整できる。例えば暑いとか、寒いとか、そう言った感覚をオフに出来るのだ。


レベルを上げていくにつれ痛覚や空腹も無くなる。もちろん逆も然りだ。聴覚、視覚、嗅覚、そう言ったものの感度を上げる事もできる。



俺はこの一週間で稼いだ3000万ペルの内、2500万ペルを調整能力に注ぎ込んでいた。


ステータスはこんな感じだ。


◯財前 要:人間、転生者、冒険者


◯ステータス


身体能力レベル562

魔法能力レベル435

調整能力レベル253

抵抗能力レベル32


◯所持アイテム等


友達3人

所持金3025200ペル

アイテムストレージ、それっぽい鎧一式



ちなみに、「それっぽい鎧」ってのは耐久力高め、防御力皆無って言う訳のわからん鎧だ。


手入れしなくていいし見た目がそれっぽいからなんとなく着ている。


そもそも鎧とかいらないしな。基本的に傷を負うことが無い。


異世界に来て一番痛かったのが爪の間に木の枝が刺さったことってレベルだ。


ちなみに今は痛覚もオフにしているので痛みなんて感じようが無い。今ならかき氷の早食いをしてもキーンってならない。


まったく、素晴らしいチートスキルを手に入れたよ。常人ならどれか一つでもレベル100に達すれば凄いらしい、それほどレベル上げの大変なステータスが一瞬で上がるのだから。



「よし、じゃあ今日はこれにするか。」



俺は熟考の末にどのクエストでも一緒だと気づき報酬の一番高いものを選ぶ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◉クエスト、新ダンジョン《コブラーク》の探索


クリア条件、ダンジョン内部のマップ作成。


受注資格、冒険者


報酬、フロア一つで50万ペル、階層が下がるたびに10万ペルずつ報酬を追加。最下層、もしくは最上階まで到達した場合ボーナスで100万ペル。


備考、ダンジョンレベル不明、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺はダンジョンを完全制覇する前提でこのクエストを受ける。


まあ、戦闘に関しちゃ問題はない。ダンジョンのマッピングのがやり方も既に習得済みだ。


前にも似たようなクエストを受けた時、マッピングの仕方がわからなくて道に迷い、ダンジョンの壁を壊し続けて外に出たことがあった。


それから書店で「ゴブリンでも出来るマッピング!」って本を買って勉強したのだ。


ちなみに値段は3万ペルと少しお高い。印刷技術があるそれほど発達してないため本は値段が張るのだ。


クエストを受注したあと、俺はギルドの中を見渡し。


「あっ、いたいた、エリー! 一緒にクエストいこーぜー!」


エリーを誘う。


「またですか? カナメさん、絶対私の事便利な乗り物扱いしてますよね……。」


エリーは顔をしかめる。


「な、なにを言ってるんだ! そ、そんな訳ないだろう。」


アッシー、じゃなかったエリーは薄々感づいていたようだ。


エリーがいたら山越えとかめちゃくちゃ楽なんだよ。俺は足は早くても空は飛べないからな。高低差のある道はエリーがいた方がいい。


「俺はエリーを仲間だと思っているんだ。だから誘っているんだ!」


とりあえず言い訳しておく。


「はあ、わかりましたそう言うことにしておきます。」


エリーは溜息をつく。


「でも、今日はギルドから呼び出されてるんで無理ですね。ごめんなさい。」


普通に断られてしまった。



しょうがないから一人で行くことにするか。


しっかし、今回のクエストの「コブラークダンジョン」は馬を使っても丸一日かかるぐらいの距離だ。


俺は冒険者になってから一度も野宿をしたことが無い。大抵のクエストは日帰りでこなしていたのだ。


そのためなんとか高速で移動する方法を考える。


荷物を準備しながら考えるうち、一ついい方法を思いついた。


荷物を背負ってギルドから馬を借りる。


そして、「ユー・バフ・フィジカ!」


馬に身体能力向上魔法をかける。


「 レッツゴー!」


馬はとんでもないスピードで走り出す。


よく考えてみたら俺の魔法は支援系なんだから馬を支援してやればよかったんだ。


馬で一日の道のりといってもそれは途中で馬の休憩やご飯、トイレで足を止める時間も含まれる。


俺の馬はあまりに足が速くそんなものを必要としないのであっさりと、2時間ほどで目的のダンジョン「コブラーク」に到着した。


コブラークは砂漠の真ん中にポツンとその入り口を覗かせている。おそらくこのダンジョンは地下に潜って行くタイプなのだろう。


馬に少しご飯を与えてダンジョンの近くに繋いでおく。そして俺は一人、ダンジョンの階段を降りてゆく。


地下一階がダンジョンの第一層のようだ。


中は細長い通路が沢山ある、まるで迷路のようだ。ダンジョン内部は薄暗いが目の感度を上げれば問題なく活動できる。


調整能力は戦闘ではそこまで役に立たないがこう言った時は本当に便利だ。俺はマッピングしながらダンジョン内を探索する。


道中ダンジョンモンスターも出現したが手こずることは無い。一層は30分もしないうちにクリアした。


続いて第二層、第三層とクリアしていく。


ダンジョン内という事もあって罠も沢山ある。しかし、俺は警戒する必要性すら無かった。


大岩が転がってきたら砕けばいいし、落とし穴に落ちてもすぐに登れるし、偽の宝箱に噛まれてもかすり傷すら負わないのだから。


第四層も特に何事もなくクリアし、第五層に行こうとしたのだが……。


下層に降りる階段の前に扉があった。


俺はその扉を開けようとするが開かない。


どうしたものかと思っていると頭の中に声が響いてきた。


ー汝、この先に進みたいのならば我の質問に答えよ。ー


どうやらこの扉は力ずつでは開かないようだ。


「わかった、質問ってなんだ?」


俺はその声に返事をする。


ーよかろう、ではいくぞ!下は大火事、上は洪水、これなーんだ!ー



は? え? まさかのなぞなぞかよ。しかも小学生レベルだぞこれ。


俺は少し呆れながら答える。


「お風呂だろ?」


ーざんねーん。答えは「災害都市ドラッケン」でした。帰れ!ー



「はぁぁぁぁぁあ⁈ 」



しまったぁぁぁぁぁ! よく考えればここは異世界なんだ。もう少しよく考えて答えるべきだった。


「くっそ、もう一問だ。次の問題だ!」


ーダメでーす。お一人様一回までとなっておりまーす。ー


なんじゃそら、セール中のスーパーかよ。


てか、この扉の喋り方むかつくな!


その後扉に話しかけても全然往々に応答が無い。どうやら本当に一日一回しかクイズは出来ないようだ。


「はあ、また明日くるか。」


俺は溜息ををついて扉を後にしようとする。


そんな時……。


「あれ? すでに先客がおるなぁ。僕が一番乗りと思てたんやけどなぁ。」


扉の前に俺以外にもう一人ダンジョンを探索する者がいた。


中性的な顔立ちをしてるが男だろう。細い目に真っ白な髪をしている。俺はどちらかというとスレンダーな方だが彼はさらに細い。


「君、どっかの冒険者?もしかしてもうこのダンジョンクリアしてもーた?」


彼は俺に話しかけてくる。少し高めの声だ。


「いや、この扉の先には行ってない。」


「扉? ああこれやね。」


男は扉の前に立つ。すると再び声が聞こえてきた。


ー汝、この先に進みたいのなら質問に答えよ、パンはパンでも食べられないパンはなーんだ。ー


やっぱり小学生レベルのなぞなぞにしか聞こえない。まあ、先程のパターンから察するにフライパンじゃダメなんだろうけどな。


「うーん、せやね。僕に食べられないパンはないで。」


いや、もうそれ答えになってなくない?


ー正解だ。ここを通るがよいー



「はぁぁぁぁぁぁぁぁあ⁈」



なんだこのダンジョン!



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