5.少女の願い
日間ランキングで77位になりました!
ありがとうございます!
「昼は突然襲ってすいませんでした!」
突然、部屋の前で頭を下げ謝ってくるドラゴンを名乗る少女。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。とりあえず部屋の前で騒ぐのはやめろ。 中に入ってくれ。」
俺は周りの部屋に迷惑をかけまいと少女を招き入れる。
「えーと、エリー・ブラウニーさんだっけ? 君がドラゴンってどういう事?」
俺はまったく状況が理解できてないため尋ねてみる。
彼女はどう見ても人間だ。
「えーと、もう一度自己紹介からさせていただきます。私はエリー・ブラウニーと申します。今の見た目は人間ですがこれは魔法で姿を変えているだけで、ドラゴンです。」
魔法で姿を変える、 そんなことが可能なのか? 俺は魔法能力レベルを強化した時色々な魔法の知識が頭に流れ込んで来た。しかし、その中に姿を変えるものなんて無かったはずだぞ。 もしかしてこいつ、とんでもなく魔法能力は高いのか?
俺がそんな疑問を抱いているとは知らずエリーは話を続ける。
「昼の戦闘であなた様がとてつもなく強いという事は身を持って体感いたしました。今宵は力では及ばないと考えたため交渉に参ったのです。」
「交渉? どういうことだ?」
「あなた様が洞窟から盗んだ財宝、返していただきたいのです。」
「返す? 悪いがそれはちょっと難しいかな。」
なんせ課金に使っちゃったし。
しかしエリーには返して貰えなければならない事情があった。
「あのお金が無いと困るんです。実は……私は人間に育てられたドラゴンなんです。」
エリーは話し出す。
彼女には本当の親がいない。事情は分からないが物心つく前に人間の孤児院に捨てられたそうだ。普通ならドラゴンというだけで欲しがる人間は山ほどいる。特に子供となれば調教もしやすいとあって高値で取り引きされるそうだ。
「当時は孤児院にも沢山の奴隷商人や冒険者の方が私を買いに来たそうです。でも、院長先生は私を守ってくれました。一緒に育った人間の子たちもドラゴンの私に優しくて、あの孤児院は私の故郷のようなものなんです。」
彼女は幸い魔法の才能があったようで5歳の頃には今のように人間の姿に変身して過ごして来たそうだ。彼女は14歳になって孤児院を卒業してもドラゴンとしてではなく人間として生きる道を選んだ。ドラゴン族としての身体能力と類い稀なる魔法の才能があったため冒険者として暮らしていくのになんの問題も無かった。
彼女は冒険者になっても自分を育ててくれた孤児院の院長と手紙のやり取りをしていたらしい。
「私は充実した日々を送っていました。しかし、半年前、状況が一変しました。孤児院が潰されてしまうかもしれなくなったんです。」
エリーは真剣な目で俺を見つめる。
「何があったんだ?」
「孤児院のある地域の領主が変わったんです。領主は街を再開発しようしました。そして、その再開発が実行されれば孤児院のある場所は道路になってしまいます。そうなれば孤児院は無くなってしまうでしょう。」
なるほどな、俺の元いた世界でもよく聞く話だ。日本の場合土地が道路に取られる場合は手厚い補償が貰えたりする場合も多い。しかし彼女の話ぶりを聞くにこの世界ではそんなものは無いのだろう。
ひどい話だ。俺は少し憤りを覚える。
「なんとかできないのか? その領主を説得するとかは出来ないのか?」
俺は感情のままに尋ねる。 再開発なんかでエリーの孤児院が無くなるのはなんとなく気分が悪い。
「俺に出来ることがあれば手伝うぞ!」
なんなら領主に殴り込みでもやってやる。
「本当ですか⁈ じゃあお金を返して下さい!」
って、 あれ?
「実は領主と交渉した結果、孤児院を残したいなら5億ペルで土地を買い取れって言われたんです。あなたが洞窟から取ったお金は私が半年間、必死で孤児院を守るために集めていたお金なんです!」
やっベーな、またやっちゃったよ。
あの洞窟の財宝にこんな裏話があったの?知らなかったよ! 知ってたらこんなに重たい課金しなかったよ!
もちろんすでに全額使ってしまったいるので返せるわけがない。
ここは素直に謝るしかないか。
「ほっんと、ごめんなさいぃぃい!知らなかったんです。全額使っちゃったんです。お金を返す以外で出来ることならなんでも手伝います! ごめんなさい!」
誠心誠意、謝罪する。
「え? あの額のお金をもう使ったんですか? え、本当に? そうですか……。」
エリーは落胆、いやもう絶望といった顔をしていた。
「ほんとにごめん……。」
「いや、元を正せばあんな場所にお金を隠していた私が悪いんです……。」
「いや、悪いのは俺だ。」
「気にしないでください。私はドラゴンですから、高値で私を買ってくれる奴隷商人を探します。間に合うといいなぁ……。」
やめて、もうやめて! 罪悪感ハンパないから!いっそのこと罵ってくれた方がマシだ!
俺はもう、これでもかってくらいいたたまれない気持ちになっていた。
「エリー、お前冒険者って言ってたよな? ランクはいくつだ? 」
俺は一つ、お金を稼ぐ方法を思いついた。
「え? いちおうSランクですよ。まあ、これからは奴隷になるから関係ないんですけどね……。」
やめろぉぉぉ! これ以上俺の罪悪感を刺激するんじゃない!
「エリー、冒険者ギルドに報酬8億ペルのクエストがあった筈だ! それを受けるぞ!」
俺の思いついた方法とはシンプルだ。単に報酬の高いクエストを受ける。
昼間に見たギルドのクエスト掲示板には沢山のクエストが張り出されている。
そしてその中に8億ペルのクエストがあったのを俺は覚えていた。Sランクの冒険者しか受注出来なかったので諦めていたが幸運にもエリーはSランクの冒険者だ。
「そのクエストを受注してくれ! 俺も全力でそのクエストを手伝うから、報酬も全部エリーが貰っていいから、これで許して下さいお願いいます!」
俺は絶望モードのエリーに頭を下げる。
もう限界です。俺の罪悪感のダムは決壊寸前なんです!これで手を打ってくれ、頼む!
「わかりました。実は私は以前そのクエストを受けたんですが一人ではクリア出来なかったんです。でもあなたが手伝ってくれるならクリアできるかもしれません。受けましょう!」
よかった、どうやらダムは決壊を免れたようだ。
こうして、俺は二つ目のクエストで早くもSランクのクエストをすることになりました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◉クエスト、古代兵器「ビルド・ジャガー」の討伐
クリア条件、目標の破壊の確認
受注資格、Sランクのみ
報酬、8億ペル
備考、危険
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次回、古代兵器討伐です。