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3.討伐クエスト

ランク試験を終え、俺はギルドの受付のすぐそばにあるクエスト掲示板を見ていた。


掲示板には沢山のクエストが様々な条件と共に貼られている。


例えば、《薬草採取》といった普通のものや、《古代兵器討伐討伐》、《商人の護衛》などだ。


もちろん初めてのクエストから《古代兵器討伐》なんてものを選ぶわけもなく俺は手頃なものを探して受けることにした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◉クエスト、ダブルヘッドウルフを10体討伐。


クリア条件、ダブルウルフの牙を10×4個収集


受注資格、Bランク以上


報酬、50000ペル


備考、魔法スキル不要。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「とりあえずこれにするか。」




俺は掲示板からクエストの書いてある紙を取り、受付で手続きを済ませてこのクエストを受けることにした。



受付嬢さんにダブルヘッドウルフの出現する場所を教えてもらいそこまで走ってく。



普通なら歩いて30分くらいはかかる場所らしいが俺が走って5分もしないうちに目的地に到着した。



「ここがビースト平原かぁ、結構綺麗なところだな。」



平原には青い芝生が生い茂り、天気も快晴。牛はいないもののまるで牧場に来たような気分を味わえた。



「さて、それじゃ始めますか!」



俺は目をつぶって耳をすませる。



これは先程気づいたのだが俺は視力、聴力、嗅覚といった五感もかなり強化されてい

た。


ランク試験で、ろくに喧嘩もしたことない俺がゴーレムのパンチを避け続けることができたのも動体視力が上がっていたからだう。



耳は今までとは比べものにならない精度で周りの音を拾ってくる。



遠くの方での足音がする。それにーーーー!


「これは悲鳴か⁈ 」


俺は声の聞こえた方に走る。



そこには一人の少女が獣の群れに囲まれていた。少女を囲む獣は頭が二つある。おそらくあれがダブルヘッドウルフだろう。


「うぉりゃぁぁぁあ!」


俺は少女に飛びかかったダブルヘッドウルフを殴り飛ばす。


「怪我はないか⁈」


「はい、でもまだ狼が……。私に構わず逃げて下さい‼︎」


よかった。間一髪助けることが出来たようだ。


俺に殴られた狼は100メートルくらい吹っ飛んでけっこうグロい感じになっている。一体一体がこのレベルならたとえ100匹いても勝てるな。受付嬢さんのゴーレムと比べたら雑魚そのものだ。


俺は少女を片手で掴み腰に抱える。そしてそのまま近くの狼を殴り飛ばす。全て一撃で仕留められる。


「えーと、君、俺が何体倒したか数えといて!」


「え、え? わ、わかりました!」


俺はさっきから狼の顔面以外を殴るように気を使っているので数までは数えられない。


なんで顔面を避けるかって? 牙まで砕いたらクエストをクリア出来ないからだ。


そのまま五分ほどでかなりの数を倒した。残りの狼たちもかなわないと悟って一目散に逃げていく。


「俺、何匹たおした?」


「えーと、23匹です。多分……。」


少女はあっけにとられていた。


余裕でクエストクリアだな。あとは牙を取れば終わりだ。


でもその前に聞かなければならないことがある。


「どうして君みたいな女の子が野獣のでる場所にいるの?」


少女は来ているものこそみすぼらしいが顔立ちは整っており肌も白く透き通っている。髪も綺麗なオレンジ色だ。控えめに言っても美少女。しかし、どう見ても冒険者ではない。武器すら持ってないのだ。


いや、俺もないけどさ。


「そ、それは、お母さんのため薬草を取りに……。」


少女はゆっくりと話し出す。


「私はアンナ・スカーレットと言います。普段はお母さんと一緒に街で食堂をやってるんですけど、三日前、お母さんが病気で倒れて……、それで病気を治すため薬草を取りに、それで襲われて……。」


少し涙目になる彼女。


でもーーーー


「なんで冒険者ギルドに頼まなかったんだ? ギルドでは薬草収集クエストも受け付けていたはずだぞ?」


俺は先程クエストを選ぶとき薬草収集もあったことを覚えている。楽そうなので受けたかったが学力ランクがA以上でないと受注できなかったので諦めたのだ。


たしかに知識皆無の素人が薬草集めなんて出来っこない。カラフルなキノコで中毒死する未来しか見えない。


少女は俺の質問に答える。


「初めはギルドに依頼しようと思ってたんですけど、お金がなくて。」


「それで自分で取りに来たってわけか。」


「いえ、そのために家宝の星コインを売って、それでお薬を買おうとしたんですが……星コインを落としてしまって。それでしょうがなく自分で……。」


ん? 家宝の星コイン?


俺の脳裏に先程課金するときに使った、星のマークの入った銀製のコインがよぎる。


「あの、ちょっと聞くけどさ、その星コインってどんなもの?まさか銀製のコインとかじゃないよね?」


「知ってるんですか⁈ そうです、銀の、このくらいのコインです! もしかしてどこかで見たんですか?」


やっべーな。


俺、確実にそのコインで課金しちゃったよ。


「そ、それってどのくらいの価値があるの?」


「多分、城一つ建つくらいですかね。私の家系は昔の大貴族だったらしく代々星コインを受け継いで来たんです。」


し、城一つか! それなら俺のステータスがバカみたいに跳ね上がったのも納得できる。


「もし、見かけたなら場所を教えてくれませんか? もしお母さんが死んじゃったら、私、私……。」


アンナは感極まって泣き出す。


これ絶対「使っちゃった! てへ。」とか言える空気じゃない。


超絶気まずいぃぃい!なんで命を救ってこんな思いをしなきゃならないんだ!


よし、決めた!


「アンナは薬草の知識はあるのか?」


「へ? あ、ありますけど……。」


「なら俺が薬草集めを手伝ってやる。」


流石にこれでアンナのお母さんに死なれたら後味が悪すぎる。


罪滅ぼしってわけじゃないがこのくらいはやらなきゃな。



「いいんですか⁈ でも、あなたは冒険者ですよね……、私報酬払えません。」


再び顔を下に向けるアンナ。こんなときに報酬もクソもないだろう。


「じゃあ、報酬はアンナの笑顔でどうだ?お母さんの病気が治ったら、今みたいに泣いてないで笑顔も見せてくれ。それが俺にとっての報酬だ!」


俺は某銭形のとっつぁんの「ル◯ンが盗んだのはあなたの心です。」並にくさいセリフを言う。ぶっちゃけちょっと恥ずかしい。


でもしょうがないじゃん! 俺すでに先祖代々受け継がれてきた家宝使っちゃってんだよ。これ以上金なんて受け取れるか。


「本当にいいんですか? お金もなにもないんですよ?」


「だから、いいって言ってんだろ。これは罪滅ぼしでもあるんだし。」

「罪滅ぼし? 」


「いや、こっちの話だ。とにかく、俺にクエスト依頼するか?」


「はい、お願いします冒険者様!私と一緒に薬草集めをしたください!」


アンナはお辞儀をする。


「了解。じゃ行くか、早速いくぞアンナ。薬草のある場所を教えてくれ。」


「はい、冒険者様。」


「冒険者様はやめてくれ。俺は財前 要だ。カナメでいい。」


「はい、カナメ様!」



こうして予想外の緊急クエストを受けることになったのだが、この時はまだ、薬草クエストの恐ろしさをわかっていなかった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 若干場面が変化するのが急な気がする。すぐにウルフに襲われている少女の元へ着くのではなくてワンテンポあってからその場にたどり着く方がいい
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