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26.ラーメン屋

俺はたまたま立ち寄った店で偶然にもレイ・リーと遭遇した。


「レイ・リー! なんでここに?」


レイ・リーは俺の座っているカウンター席のすぐ後ろ、テーブルの席に座っていた。


「おお、カナメやん。偶然やなぁ、僕この店よく来るんやけどカナメもそうなん?」

「いや、俺は初めてだけど……。」


驚きつつ、俺は店員さんにお願いして席を移る。レイ・リーの向かい側に座った。


「それにしてもほんま驚いたわ、カナメってここら辺に住んどるん?」


運ばれてきたラーメンを啜らながら話すレイ・リー。


「色々事情があってな。しばらくの間だけここに滞在する事になったんだよ。」


俺も遅れて運ばれてきたラーメンを啜る。


どうでもいいけど獣骨ラーメン、くっそ旨いな。



「どんな事情?」と尋ねるレイ・リーに俺はギルド本部に泊まる事になった原因、ウロボロスに所属する暗殺ギルドとの一件を話す。


「……ってわけで、しばらくはギルド本部に泊まる予定だ。」

「ふーん、カナメも大変やなぁ。」

「本当にな。厄介な組織に目をつけられたもんだよ。ハァ。」


俺はため息をつく。



トンッ



「ところで……今の話で一つ気になった事があるんやけど聞いてもええか?」


レイ・リーは汁まで飲み干したラーメンの器をテーブルに置いた。



「なんでカナメはそのタックスっちゅー奴を殺さなかったんや?」


いつになく真剣な目をするレイ・リー。


「なんでって……。」

「殺さなかったんやなく殺せなかった?」

「それは……。」


俺はレイ・リーの質問に対して明確な答えが出せない。


俺はタックスを殺せたが殺さなかった。峰打ちで気絶させただけだ。


理屈で考えればあの場面では殺す事が最良の判断となるかもしれない。。タックスとリリアンヌは一人ずつならそこまで苦戦もせずに倒せただろうからタックスを殺せばこちらの勝利は決定的なものになる。でも……


「これは……結果論だけど、もし俺がタックスを殺してたら人質交換は生まれなかった。そのおかげで奴らは撤退したんだし、殺さなかったことが完全にダメってことではないと思う。」


これは紛れも無い事実だ。そう思ったがレイ・リーは見透かしたように微笑む。


「まるで自分に言い聞かせてるみたいやなぁ。あっ、店員さんおかわりよろしく。」

「へい! ただいま!」


レイ・リーは替え玉ではなくお代わりを頼む。


「カナメ、人質交換が成立したのはカナメが仲間を切り捨てられないと見抜かれていたからやで?」

「見抜かれていた?」

「そうや、敵すら殺さないくらいなんや。仲間を切り捨てられるわけないやろ?」

「たしかに……それはそうだな。」


俺の頭の中にリリアンヌに言われたセリフが甦る



「強がってもダメよ、敵も殺せない人間が味方を切り捨てられるわけないでしょ。」



レイ・リーの言う通りだった。


「逆にもしカナメが殺せていたら暗殺者どもには勝ち目がない。人質交渉に応じる確証もないまま下手にカナメの仲間に手を出しても反撃を食らう可能性があるからそれも出来ない。奴らはカナメが標的である以上殺せないのなら撤退するしかないんや。」

「へい、ラーメンお待ち!」

「おお! おーきに。」


二杯目のラーメンに手をつけながらレイ・リーは話を続ける。


「カナメ、中途半端な戦い方してるといつか必ず後悔するで。」

「後悔か……。」


レイ・リーの言ってあることは正論だ。だが……


「悪人とはいえ人を殺すなんて。頭ではそうすべきと理解しててもそう簡単に出来ることじゃないだろ。」


俺はやけになったようにまだ残っている汁を胃に流し込む。


「カナメの言う通りやな。頭で考えているうちは無理や。殺せないことを恥じる必要もあらへん。」


レイ・リーは二杯目のラーメンも食べ終わり席を立つ。


「でもな、カナメ。ウロボロスも魔王軍も全力で殺しにくる、遠慮はしてくれん。君の躊躇いが仲間を傷つけることもある。それは理解しときや。ほな、また今度な。」


レイ・リーはそれだけ言うとそのまま店を出て行った。



中途半端な戦い方してるといつか必ず後悔する……か。


ここは平和な日本じゃない。いつ魔王軍が攻めてきてもおかしくない異世界。



俺もこの世界の住人の一人になった以上ゆっくり意識を変えていかないといけないのかもしれないな。




✳︎


翌日の朝、俺を含めたパーティーメンバーの全員がフェルナンドによってギルドホールに集められていた。


呼ばれたのは俺たちのパーティーだけではない。レイ・リーやスカー、リンナさんもいる。どうやら精鋭に選ばれた冒険者全てが召集されているようだ。


ギルドホールの真ん中でフェルナンドが話し出す。


「みんな、今日はよく集まってくれた。先日伝えていたクエスト、《ウロボロス》についてみんなに話したいことがある。」


フェルナンドは全員を見渡す。


「クエストの決行日が決まった。奴らとの決戦は二週間後の昼だ。今から回す資料を見てくれ。」


フェルナンドは受付嬢に資料を配らせる。


「これはウロボロスの幹部と要注意人物をリストにしたものだ。我々の勝利条件はここに載っている12人の幹部を捉えること。ウロボロスはあくまで犯罪ギルドの寄せ集めでありギルドのまとめ役の幹部さえ捉えればウロボロスは瓦解する。」


フェルナンドの説明を聞きながら俺はそのリストに目を通す。


それは昨日、俺達のパーティーがフェルナンドの部屋で見せて貰った資料とほとんど同じものだった。


しかし、幹部と要注意人物だけでもなかなか多いな。幹部だけで十二人もいるんだもんな。


俺がそう思っているとフェルナンドは再び話し出す。


「幹部のうち九人は違法アイテムや奴隷の販売、詐欺などを行うギルドのトップだ。ずる賢い奴が多いが戦闘ではそこまでてこずらないだろう。だが、残りの三人、資料では一枚目の上から三人だ。こいつらはSランククラスの実力を持っている可能性が高いから気をつけろ。」



なるほど、ゲームなどでは幹部イコール強いってイメージがあるがこの世界では幹部だからといって必ずしも強いって訳でもなさそうだ。


とりあえず俺はフェルナンドの言っていた危険な幹部、三人の情報を見る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


◯マキナス・マグネット

違法武器ギルド、ギルドマスター。



◯シュガー・ウール

暗殺専門ギルド、三人の幹部の一人。銀髪の美少年。残りの幹部の二人、タックス、リリアンヌと遜色ない戦闘能力を持つ。



◯クロード・ラストフェンサー

裏傭兵ギルド、ギルドマスター。大剣使い、常に黒い鎧を着ている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


マキナスに、シュガー、クロードか、どうやらシュガーってのはタックスやリリアンヌの仲間らしいな。


あと……マキナスって名前、どっかで聞いたような。


「この情報はウロボロスに潜入している我々の仲間が提供したものだ。掴みきれなかった情報もあるかもしれないから何かあればその場で臨機応変に動いてくれ。幹部達を捉えることが理想だが難しいなら殺してもいい。」



フェルナンドはその後も敵戦力の説明を続ける。


するとどこからか質問が聞こえてきた。



「でも、なんで決行日が二週間後なんだ? これだけ情報があるなら今すぐにでも攻めた方がいいんじゃないか?」


その疑問にフェルナンドは答える。


「ウロボロスの幹部どもは普段は国のありとあらゆる場所に散らばっている。だが、二週間後の昼ラグナン領でウロボロスの幹部会議があるらしくてな、我々はそこを狙

い幹部全員を一度に捕まえる。これが二週間後に動く理由だ。」


なるほどな、確かに数自体は多くない精鋭冒険者を各他に割くのは戦力の分散と言う意味でも危険だ。その方がいいのかもしれない。


みんなも納得したようだ。


こうしてフェルナンドからの報告はおわり二週間後に向けて各自が準備を進めることになった。


集められた冒険者達はゆっくりとギルドホールから去って行く。


そんな中ーーーー


「カナメくん、エリーちゃん、久しぶりね。」


俺とエリーに声をかけるものが、《土軍》ことSランクの冒険者、リンナさんだ。


「どうもリンナさん、お久しぶりです!」

「こんにちは、リンナさん!」


リンナさんと会うのはツーラン領で共闘したとき以来か?


しっかし、この人は相変わらず綺麗だよな。話しかけられたとき少しドキッとしてしまった。


「リンナさん、私たちになにかご用ですか?」


エリーがリンナさんに尋ねる。


「ううん、用ってわけでも無いんだけどね。カナメくんやエリーちゃんのパーティーに娘がいるから挨拶しておこうと思ってね。」

「「娘?」」


リンナさんの娘が俺たちのパーティーにいる?


それってーーーー


「ルーナがいつもお世話になってます。二人とも、これからも仲良くしてやってね。」


リンナさんが微笑む。


俺とエリーがびっくりしていると、後ろから顔を真っ赤にしたルーナがとびだしてきた。


「お、お母さん! 恥ずかしいからパーティーにまでくるのはやめてって言ってるでしょ!」

「あらあら、照れちゃって可愛いわね。」

「うう、頭撫でないでよ。」


エリーが尋ねる。


「カナメさん、このこと知っていましたか?」

「いや、もちろん知らなかった。ダン、お前は知ってたか?」


俺も近くにいたダンに尋ねる。


「俺は知ってましたけど、ルーナはあまり話したがらないので言ってませんでした。」

「話したがらないって、あの二人仲悪いのか?」

「いえ、そうでも無いですよ。たまに二人で買い物とかにも行くそうですし。単にみんなの前だったってのが恥ずかしかったんじゃないですか?」

「ふーん、そんなもんか。」



まあ、そういう時期は誰にでもあるよな。


ルーナはリンナさんに文句を言っている。まあリンナさんは全てスルーしてルーナの頭を撫で続けているのだが。


「あっ、そう言えば伝えたい事があったんだった。」


リンナさんが急に思い出したように声を出す。


「ルーナから話聞いたんだけどこのパーティーはあまり戦闘経験がないのよね。」

「そうですけど……。」

「もしよければ私の知り合いの冒険者紹介しましょうか? とってもパーティーでの戦闘に詳しい人がいるの。」

「いいんですか⁈」

「ええ、もちろん。」


これは願ってもいない事だ。正直な話、あとたったの二週間ではクエストをこなしてもパーティーで強くなれる気がしていなかったのだ。


俺はリンナさんからその人の名前を教えてもらう。



これがのちに大きな出会いになるとはこの時は誰も思っていなかった。



昨日から1日経ってる現在は日間ランキング2位でございます!


ありがとうこざいます!


面白かったら、ブクマ、評価くれると嬉しいです。


あと、最近新キャラ出る頻度早いですか?


感想でもツイッターでもいいので一言お願いします。



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