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20.パーティー結成

「うーん、いまいちしっくりこないなー。」


アリスの店でディセンダートを手に入れてから三日間、俺はずっとワンドックの近くの山で討伐クエストをこなしていた。


理由は刀を扱う感覚に慣れたいからだ。


俺は転生前は特に武道をやっていなかったため剣術に関してはずぶの素人だ。ただ力任せに刀を振るだけでは刀を装備した意味があまりない。そう考えまずは刀に慣れようと討伐系のクエストをこなしている。


しかし……


「やっぱり敵が弱いだけなのか?」


正直言って、刀に慣れる以前に刀のメリットすら感じることができていなかった。


少なくともここら辺のモンスターを倒すだけなら鞘から刀を抜く手間の方が大きいと感じる。


本来なら道場に通って剣術を学ぶのも悪くはないが生憎この世界では剣術は騎士のものとしてしか考えられていない。一般市民向けの道場などは存在しないのだ。


「……帰るか。」


俺はここで魔物を倒し続けても剣の腕は上達しないと悟り街に帰ることにする。


誰か剣術のできる冒険者を探して教えてもらった方がいいかもな。


ワンドックの街の冒険者ギルドに戻るとそこにはエリーがいた。


「ああ、カナメさん! 見つけた!」


俺を見るなりこちらに走ってくる。


「おお、エリー久しぶり。」

「なにが久しぶりですか! 今までどこにいたんですか、全然見つけられなかったんですよ!」


エリーはなんだか怒っているようだ。


「いや、さっきまで山で討伐クエストをやってたんだけど……なんか用?」

「はぁ、すっかり忘れてるみたいですね。今日は首都メルトに呼び出されていたじゃないですか。」

「メルト? ああ、そういえばそうだったな。」


俺はすっかり忘れてしまっていた。


今日、俺とエリーは首都メルトにある冒険者ギルドの本部に呼び出されていたのだ。


「一緒に連れて行って欲しいって言うから待ってたんですよ? なのにカナメさんはクエストですか!」

「悪かった、悪かったって。そんなことより早く行かなきゃ遅刻するぞ。」

「どの口が言ってるんですか!」


エリーは少し不機嫌だ。


このままでは本当に遅刻してしまいそうなので俺たちはギルドの外に出る。


「じゃあ飛びますよ。」


そして俺はドラゴンの姿のエリーに乗ってそのまま首都メルトにあるギルド本部を目指す。


エリーに乗って空を飛ぶのは久しぶりだ。


俺はエリーに話しかける。


「なぁ、エリー。今日はなんで本部に呼び出されたんだ?」

「さあ、なんででしょう。受付嬢さんも特に詳しい事は言ってませんでしたからねぇ。ところでカナメさん、武器を持つことにしたんですか?」


エリーはどうやら俺の腰に刺さっている刀に気づいたようだ。


「ああ、魔王軍と戦うなら武器くらいは持っていた方がいいかと思ってな。」

「へぇ、カナメさんが武器を使ったら手がつけられなくなりそうですね。」

「そうなるといいんだけどな。エリーは武器を持たないのか?」


俺はエリーに尋ねる。


「うーん。わたしは大抵の敵はドラゴンブレスで倒せますし、必要性を感じた事はあまり無いですね。それにドラゴン用の武器ってあまり無いですし。」


エリーの説明に俺は納得する。


考えてみればドラゴンブレスを超える破壊力の武器なんて、それこそ元の世界からミサイルでも持ってこない限り難しいだろうからな。


俺のようにドラゴンブレスを耐えられる方がイレギュラーなのだ。


俺たちはそのまま雑談を繰り広げる。


そしてそのまま首都メルトの冒険者ギルド本部に到着した。


人間の姿に変身したエリーと俺はギルドホールに入る。


そこには何人か、他の冒険者もちらほらいた。


さらにホールの真ん中にはギルドのグランドマスター、フェルナンドもいた。


俺はフェルナンドに話しかける。


「久しぶりですね。フェルナンドさん。」

「おお、カナメか。それに《魔龍》も一緒か。よく来てくれた。」

「フェルナンドさん、今日俺たちはどんな用で呼ばれたんですか?」


俺はここに呼び出された理由を尋ねる。


するとフェルナンドはホール全体を見渡しーーーー


「ちょっと待ってくれよ……、よし、もういいか。」


俺たちだけではなくホール全体に呼びかける。


「みんな、集まってくれ。話がある。」


すると20人程の冒険者がこちらに集まって来た。こいつらも俺たちと同じで呼び出されたのか?


フェルナンドは冒険者達に話しかける。


「まずは本部まで来てくれてありがとう。ご苦労だった。今日ここに集まってもらった冒険者は前回精鋭として集まってもらったなかでパーティに入ってない者だ。今日はここにいる者同士は四人から六人でパーティーを組んでもらう。」


フェルナンドは説明を続ける。


「本来なら前回結成式の段階でパーティーを組んでもらう予定だったが予定外の事件が起こったからな。魔王軍が攻めて来るまでどれほど時間があるかわからない以上連携が取りやすいように出来るだけ知り合い同士で組んで欲しい。ではパーティーを組んだものからこちらに報告してくれ。」


フェルナンドの説明が終わる。


周りの冒険者達からも特に反発する声は上がらずパーティー作りが始まる。


どうやら冒険者同士仲のいいものも多いらしくすんなりパーティーはできてゆく。


俺もパーティーメンバーを集めなければいけないためエリーに声をかけようとすると……


「カナメさん、一緒にパーティー組みませんか?」


エリーの方が誘ってきた。


「ああ、いいよ。一緒にやろう。」


俺はもちろん了承する。まずはエリーがメンバーになった。


パーティーは四人から六人と言っていたので最低でもあと二人集めなければならない。


「エリー、俺はこの中に知り合いはいないんだが……、誰かパーティーに入ってくれそうな人に心当たりはあるか?」


俺は冒険者になったばかりなので知り合いは少ない。精鋭ではエリーにレイ・リー、スカーにリンナさんの四人だけだ。


ここにはスカーもリンナさんもいない。二人とも既にどこかのパーティーに入っていたという事だ。レイ・リーはソロで活動していそうと思っていたが意外なことにこの場にはいない。そこは驚きだ。


「うーん、わたしも基本ソロでしかやらないので知り合いはいませんねー。」


エリーの知り合いにメンバーになってもらおうと思ったがどうやらダメそうだ。


「他の冒険者に声をかけてみましょうか。」

「そうだな。」


俺とエリーは近くの冒険者をパーティーに勧誘する。しかしーーーー


「あのー、俺たちと一緒のパーティーに入ってくれませんか?」

「ん? あんたは……。悪いね、俺は既にパーティーに入ってるんだよ。他を当たってくれ。」


「あのー、わたし達のパーティーに入って貰えませんか?」

「わたし達? ああ、Bランクがいるのか。遠慮しておくよ。」


誰も入ってくれなかった。


どうやら俺がBランクであると知られているのがダメっぽい。


精鋭が集まっている中わざわざBランクがいるパーティーに入りたがるものはほとんどいないのだ。


「全然入ってくれないな。」

「入ってくれませんねー。」


俺とエリーは誘うのも疲れて近くのベンチに腰掛ける。


「せめて俺がAランクあればなー。」

「先頭なら私よりも上なのにもったいないですよね。」


ランクは半年に一度の試験でしか更新できない。今はどれだけ強くてもランクは上がらないのだ。


俺とエリーはメンバーを半分諦めかけていた。


しかし、捨てる神あれば拾う神があるのだ。


「そこの二人、もしかしてパーティーメンバーが足りなくて困っていないか?」


突然。金髪のイケメンが話しかけてきた。


「えーと、誰?」

「突然話しかけた無礼は許してくれ。僕はアーサー、Bランクだが実力はSランクの冒険者だ。君たちさえ良ければ僕をパーティーに加えて欲しいのだが。」


どれだけ誘っても誰も見向きもしなかった俺達のパーティーに入りたいとは物好きもいたもんだ。


俺はエリーに相談する。


「エリーどうする。パーティーに入ってもらうか?」

「カナメさんさえ良ければ私は歓迎ですよ。」


エリーは俺に一任してくれた。今は数が欲しいからな、俺はアーサーを迎え入れることにした。


「よろしくな、アーサー。俺はカナメだ。」

「私はエリーです。よろしくお願いします、アーサーさん。」

「カナメに、エリーか。よろしく頼む。」


とりあえずメンバーを一人確保だ。


パーティーは最低四人なのでもう少しメンバーが必要だ。


周りの冒険者はほとんどパーティーを組んでいたのでこれ以上人を集めるのは難しいかと思ったが……


「あのー、まだメンバーは募集してますか? 私達をパーティーに入れてもらいたいんですけど……。」


俺たちに声をかけるものが二人、若い男女のペアだ。


男の方が話す。


「俺はダン、こっちはルーナです。俺たちは普段二人で冒険者やってるんですけど、どこのパーティーも二人じゃ入れてくれなかったんです。もしメンバーが足りないなら入れてもられませんか?」


二人とも礼儀正しい感じだ。どうやらこの二人も俺たちと似たような状況らしい。


「入ってくれるなら大歓迎だ。エリーもいいよな?」

「ああ、もちろん、人が足りなくて困っていたのは私たちも同じですからね。」


俺たちは二人をパーティーに迎える。


本当は二人のランクや実績などを聞いてパーティーに入れるかどうか検討した方がいいのかもしれない。しかしこの際贅沢は言っていられない。それに、この二人も精鋭として集められているためある程度の実力は保証されているはずだ。


二人は俺達がパーティー加入を承諾してホッとしたようだ。


「ふぅ、やっとパーティーに入れたな。」

「うん、本当に良かった。ありがとうこざいます。」


女の子の方がペコリと頭を下げる。


「いいよ、お礼なんて、こっちだって人が足りなかったし入ってくれてありがとな。」

「いちおう人数は揃いましたしフェルナンドさんに報告にいきますか。」


俺とエリーも立ち上がり五人でパーティー結成の報告に向かう。


「フェルナンドさん、パーティー出来ましたよ。」

「おっ、やっと出来たか。お前達で最後だ。」


フェルナンドさんは最後のパーティーが出来てホッとしているようだ。


気持ちはわかる。


学校でグループを作る時とかも先生はハブられる子がいないか気にかけるしな。フェルナンドさんも立場的に孤立する冒険者がいないか心配だったのだろう。


幸い、今回の他のパーティー結成はうまくいっていたようで俺達がパーティーを結成した時点では全ての冒険者がどこかのパーティーに属していた。


フェルナンドは再び全体に向けて話し出す。どうやら精鋭パーティーの説明のようだ。


「今、冒険者の諸君にはパーティーを組んで貰ったわけだがメンバー同士の連携が取れないようではパーティーとしての意味が無い。魔王軍と戦う以上お互いの力を十分に引き出しあえるようにしてもらいたいのだ。しかし、パーティーを組んだばかりでは上手くはいかないだろう、そこで君たちにはこのクエストをクリアして貰う。」


フェルナンドは一枚の紙を取り出した。


「闇ギルド《ウロボロス》の討伐だ!」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◉臨時クエスト、闇ギルド《ウロボロス》の討伐


クリア条件、《ウロボロス》の崩壊


受注資格、グランドマスター指定の冒険者


報酬、1000万ペル


備考、敵の種族は多様、幹部にはSランク並みの者もあり

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


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