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17.谷底

「魂を吸うってのはどういうことだ?」


俺はあまり意味が理解できず質問する。


「簡単に言うとこの刀にはステータスがあるんです。」


アリスはステータスについて説明を始めるが……


「まず、ステータスというのは基本的に生物にしか存在しません。なぜならステータスとは魂に蓄積された経験値を可視化したものだからです。だから魂の存在しないモノにはステータスが無いんです。」

「まず経験値ってなに? 」

「え⁈ 知らないんですか?」


アリスはひどく驚く。


当たり前のように言われたがこの世界で経験値なんて言葉聞いたことないぞ。


「ステータスを表示してみて下さい。その時一番下に出てくる数字が経験値です。」


俺は言われた通りにしてみる。するすると……

◯経験値、10852436pt


たしかに一番下に表示されていた。


どうやら俺はいままで見落としていたようだ。


しかし、よく考えてみれば課金以外のレベル上げの手段なら必ず存在しているはずだ。そうでないとこの世界の住人はレベルを上げることができない。


逆になんでいままで気づかなかったんだろうな。


アリスも呆れたように俺を見る。


「普通はこの経験値で自分のレベルを上げないといけないのに……。いままでどうやって生きてきたんです?」

「うーん、課金かな。」

「課金?」

「いや、なんでも無いよ。続きを頼む。」


俺はアリスに説明を促す。


「わかりました。ではまずこの刀を持った状態でステータスを表示して下さい。」

「わかった。」


俺は今度は刀を持った状態でステータスをみる。


すると……。


「おお、項目が増えてる!」


◯ステータス


身体能力レベル562

魔法能力レベル435

調整能力レベル253

抵抗能力レベル32

ディセンダートレベル1



俺のステータスには新しく「ディセンダートレベル」というものが追加されていた。


アリスがドヤ顔で話す。


「どうです? この刀は他の刀と違ってレベル上げができるんです! 経験値を与えれば与えるほど切れ味も耐久力も上がっていきます。 鍛え上げれば最強の刀になるんです!」

「これはすごいな。これならいずれ俺が望む武器になるかもな。」


お世辞抜きで俺に合った武器かもしれない。俺なら普通の人と違い課金でレベルを上げることもできるのだ。すぐに高いレベルまで上げることが出来るだろう。


俺はもうこれに決定しようかと思ったがさらにアリスが情報を付け足す。


「実はもう一つ、この刀には他の刀と違った機能があるんです!」

「もう一つ?」

「はい! 先程私はこの刀は魂を吸うって言ったのは覚えてますか?」

「ああ、憶えている。それは経験値を与えることができるって事だろ?」


俺はてっきりそうだと思っていた。


しかしアリスは「まだまだだよ! 」と言わんばかりに話し出す。


「チッチッチ、それなら成長する刀です。魂を吸ってるわけではありません。」


人差し指を立てて否定する。


アリスはノリノリになってきたようだ。


「魂を吸うってのはつまり、魂に刻まれた特殊能力や種族能力を吸収することが出来るんですよ!」

「吸収⁈ ……それってかなり強くないか?」


俺はゴクリと唾を飲む。


流石の俺でもこの凄さは理解できる。


以前エリーから聞いたことがあるのだがこの世界には種族能力と特殊能力というものがある。


種族能力とは例えばエリーのドラゴンブレスなどがそうだ。種族固有の魔法能力でその種族のもの以外には決して現れないものだ。


対して特殊能力とは俺の持つ「課金」などのように、種族、性別に関係なくランダムで発現する能力のことだ。これは遺伝もしないし後天的に現れることもないので持ってないものは一生持てないのだ。


しかし……


「特殊能力とか種族能力を吸収って、つまり相手から奪えるってことか?」

「はい、その通りです、倒した相手の能力を奪えます!どうです? 私の刀もなかなかなものでしょう?」


アリスは胸を張りドヤる。


でも実際これは相当な武器だ。てかぶっちゃけ俺の課金を超えるチートだ。課金はあくまでレベル上げをショートカットしているだけで他の人だって時間をかければレベルは上げられる。しかし特殊能力を奪えるというのは他の者には絶対に不可能だ。


そもそも特殊能力を持つ者がそこまで多くないため吸収する機会はそこまでは多くないだろうが一人で一つ、二つ特殊能力を所有しているだけでも敵に対して相当有利になるだろう。


これは買いだ。


「アリス、この刀をくれ! いくらだ?」

「うーん、そうですね。お客様は初回ですし一億ペルのところを99999999ペルでいいですよ!」

「わー、やった〜。」


バカか、高すぎだろ! てかなんだそのお得感を出そうとする感じ、よくセールとかで見るよ!


俺の全財産の10倍近い値段を払えるわけはない。


「はあ、流石に手が出ないな。お金を貯めてまたくるよ。」


かなりの金額だが高額のクエストをこなし続ければいつかは手が届きそうでもある。


しばらくはお金を貯めるか……。


そう思い俺は店を出ようとする。しかしーーーー


「待ってください! 今なら特別プランがありますよ!」


アリスが俺を引き留める。


「もし、[不変石]を一緒に取りにいってくれたらただでいいです!」

「ただ! 本当か?」


俺はただという言葉に反応する。


いやー、ラッキーだね。よくわからんが[不変石]とやらを取ってくればいいんだろ?


アリスはこの[不変石]について説明する。


「不変石っていうのは温度が変化しない変わった石なんです。温めればずっと高温ですし冷やせばずっと低温、これがあれば仕事がかなりやりやすくなるので是非一緒に撮りに行って欲しいんです!ここから少し離れたところにある大きな谷にあるんですが私一人じゃ取ることが出来なくて……。それで協力して欲しいんです!」

「わかった。要は谷から石を取ってくればいいんだろ? 楽勝だ。」


俺は気前よく承諾する。


今の俺なら谷底だろうと簡単に到達できる。本当にありがたい話だ。


「よし、そうと決まったら早速行こう!アリス一緒に馬に乗ってくれ。」


俺は外に出てアリスを馬に乗せ、自分も馬に乗る。


「さて、じゃあしっかりつかまってろよ!それっ!」

「うっ? きゃぁぁ⁈」


俺の馬はもちろん爆速で走る。


アリスは驚いたようで俺の背中をギュッと抱きしめる。


てか……アリスさん? ちょっとしっかり捕まりすぎじゃないですかね。胸が当たってるんですが……。ま、いっか。これは日頃の行いがいいから、そういう事にしておこう。


俺は気をとり直して馬を走らせる。


途中からはアリスも慣れてきたようで俺を案内する余裕も出てきたようだ。


時々進路を修正しながらもしばらく走り続け目的の谷に到着した。



近くに馬を止め谷底を覗き込む。


「結構深いな……。それになんか骨がたくさんあるぞ?」


そこは谷というよりは大きな地割れといったほうが正しいかもしれない。


谷底の幅は割と大きく活動になんの支障もないほどの広さがある。しかし、予想以上深かったため薄暗く、しかも何やら動物の骨が散乱している。


死の谷、とかそういう名前があってもなんの違和感もない。


「見えるんですか? すごいですね、私は暗くてさっぱりです。」


まあそうだろうな。 俺の視力はとんでもなく強化されてるからな。冒険者でもないアリスが見えなくてもなんの不自然もない。


「じゃあ、ちょっと行ってくる!」


俺は谷底目掛け飛び降りる。


アリスによると不変石は谷の底にあるらしいのだが谷底には大量の巨人族がいるらしく、Sランクの冒険者ですら苦戦することもあるそうなのだ。


本当なら不変石かどうかの確認のためにもアリスを下まで連れていきたいがそう行った理由で俺だけが下に降りる。


ドンッ!


地面に着地する。


あたりを見渡すと赤く輝く石がまばらに落ちていた。おそらくこれらが[不変石]なのだろう。


割とすぐにに見つかったな。


俺は適当に何個か拾い集める。


「それにしても本当に暗いな。」


ここは谷底なので当然光は少ない。調整能力で目の感度を上げているから問題はないのだが、前後に広がる谷の側面は俺に相当の圧力を感じさせていた。


早くこんな場所から出てしましたい。


そう思い石を拾うスピードを上がようとするとーーーー!



ズッドッーン、ズッドッーン。



「やっぱり出てきたか。」



谷底の奥から一つ目の巨人、サイクロプスが現れた。


八体ほどだがかなりのデカさだ。


最低でも7メートルくらいはあるのか? 一体一体か大木の丸太をまるで棍棒のように片手で持っている。


こちらをじっと見つめながら近づいてくるあたり俺のことを認識はしているのだろう。


俺は刺激しないように谷から脱出しようと高くジャンプしたのだがーーーー!



ブンッ!



空中で方向転換ができなくなったタイミングを狙って先頭にいたサイクロプスが俺に丸太を投げつける。


「くそっ!おらっ!」


俺は丸太を殴りへし折る。


ダメージは全くないが脱出に失敗してしまった。俺が着地するまでの間にサイクロプスの集団は既に近づいており戦闘は避けられなさそうだ。


おおかた縄張りを荒らされたと感じて怒っているのだろう。


ちょうどいい機会だ。まだ使ったことのない魔法の実験台になってもらおう。


俺は魔法を唱える。


「エネ・グラ・バインド!」


サイクロプスたちは一瞬魔法を警戒したが何も起きないと判断して三体ほどが一斉に襲いかかってくる。


するとーーーー!


「ギュル⁈」


サイクロプスたちは急に倒れこむ。


どうやら魔法は成功だ。


俺が使った魔法は俺に敵意を向けた敵に対する罠魔法だ。いまサイクロプスたちは身動きできないほど自分の体が重いと感じているはずだ。これは敵の感覚を感覚を狂わせることで戦闘不能にする支援魔法なのだ。


あくまで体重が重くなったと錯覚させているだけなので直接的な攻撃力はない。でも拘束するだけならこれで充分だ。


こちらからずかずかと彼らの縄張りに入ったうえに攻撃されたから殺すなんて事は流石に可哀想だ。


黙って殴られるなんて事はしないが理不尽に殴るなんて事もしたくない。


「悪いな、俺が谷から出たら魔法は解除するから見逃してくれ。」


言葉が通じるかはわからないが取り敢えず敵意はないことを説明する。


するとサイクロプスは突然叫び出した。


「ギュラァァァァァァァァァァァァ!」

「なんだ? 急にどうしたんだ?」


突然の事に戸惑っていると……


ズンッ!ズンッ!ズンッ!ズンッ!


またもや谷の奥から地響きが鳴り始めた。


そして、そこにはーーーー!



「マジかよ。デカすぎない?」



おそらくサイクロプスのボスであろうゆうに20メートルは超えそうなとんでもない個体が現れた。



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