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13.Sランクの実力

「五千の魔物だと⁈ どういうことだ、詳しく説明しろ!」


フェルナンドは伝令に更に説明を求める。


「はい! ツーランの駐屯兵から音速鳩が届きまして、手紙によるとツーラン領の山脈から街に向けて大量の魔物の群れが進行中。数は確認出来るだけでも五千、更に増える可能性もあり、至急Sランクの冒険者を寄越して欲しいとの事です。」



伝令係の知らせでギルドホールはざわめく。


「五千だって?」

「聞いた事ねえぞそんな話。」

「天変地異の前触れか?」


当然だろう。魔物は群れといっても百を超えることすら滅多に無いらしいからな。


これは明らかに異常事態だ、フェルナンドも誰を向かわせるか慎重に考える。



しかし、彼が誰を派遣するか決める前に名乗りをあげるものが。



「私に行かせて下さい! ツーラン領は私の故郷なんです。」


エリーだ。エリーの孤児院はツーラン領にある。


「フェルナンドさん、俺も行かせてくれ。あそこには知り合いがいる。」


俺も名乗りをあげる。


ここからツーラン領はそこそこまで遠くないのでエリーがいればすぐに到着できるだろう。



あそこには孤児院のみんながいる。数少ない知り合いなんだ。守れるなら守りたい。


フェルナンドは少し考えてエリーに質問をする。


「《魔龍》、ドラゴンの姿なら何人まで乗せて飛べる?」


「10人くらいは乗せられますがかなり速度は落ちます。速度を落とさないなら3人が限度です。」


「三人……。よし、わかった、《爆炎》と《土軍》、それにカナメの三人を乗せて行け。 一応応援の部隊も向かわせるが時間がない。出来るだけ早くツーランに向かってくれ。」


フェルナンドは俺とエリー意外にも二人を選び連れて行くように指示する。


《爆炎》とは先程俺の喧嘩を止めた薄い金髪の男だ。


もう一人、《土軍》と呼ばれた者は女性だった。女の冒険者なんてエリー意外じゃ初めて見たけど大丈夫なのだろうか。一応二つ名を持っているという事はSランクではあるのだろうが……。



俺とエリー、そして指名された二人はギルドホールから出てすぐにツーランへ向かう。



「皆さん、しっかりつかまってて下さいね。飛びます!」



三人を乗せエリーが飛び立つ。


知らない二人と一緒で気まずいかな〜なんて 思っていたが案外そうでもなかった。


《土軍》と呼ばれた女性が提案する。


「とりあえず、ツーランに着くまでに軽く自己紹介でもしませんか?」


ありがたい申し出だ。俺は基本誰かと共闘する事は滅多にないからある程度、味方の情報は欲しい。


誰からも異論は挙がらず自己紹介が始まる。


「では、まず私からさせて貰いますね。私はリンナ・ウォール、二つ名は《土軍》。主にゴーレムで戦います。前衛は任せて下さいね。」


提案した《土軍》ことリンナさんが初めに名乗る。彼女はその二つ名とはかけ離れた、美しい容姿をしていた。人間の姿のエリーとは違う、妖艶な雰囲気だ。話し方もどこか艶っぽい。


リンナさんの次は《爆炎》だ。


「俺はスカー・フレイム。二つ名は《爆炎》だ。主に焼く、燃やす、溶かすのが得意で基本後衛だ。よろしくな。」


《爆炎》ことスカー・フレイム。長身だが歳は多分俺と同じくらいだろう。名前からも推測出来るが炎系の魔法を使うんだろうな。


その後、俺とエリーも自己紹介をする。


エリーはともかくスカーもリンナさんも先程の男とは違いBランクと言うだけでバカにしたりと言う事はなかった。



「皆さん、そろそろツーラン領です!」



エリーはかなり飛ばしていたのだろう。


軽く自己紹介をしただけで着いてしまったようだ。


上空から見るとすぐにわかった。


ツーランの北にある山脈の麓、そこには平野が広がっていたのだが真っ黒に染まっている。おそらくあれが魔物の群れなのだろう。


強化された視覚で見てみるとゴブリンやスライム、ダブルヘッドウルフにトリプルヘッドタイガー、スケルトン、オーク、巨人など沢山の種類の魔物が入り混じっている。



群れの進行速度はそこまで早くないため幸いにもまだ街には到達していないようだ。


「とりあえずまだ孤児院も街も無事っぽいな。」


街を見下ろすとおそらく駐屯兵だろう人達が住民を避難させていた。魔物五千体を食い止める事は出来ないと考え街を放棄して人命を優先したのだろう。


「ええ、本当に良かった。じゃあおります。」


エリーは街と魔物の群れの間に着地する。俺たちもエリーから飛び降りる。


「さて、魔物の群れだがこれほどの数と種類が偶然山を降りてきたとは考えづらい。何処かに群れを纏める個体がいるはずだ。エリーとカナメはそいつを探し出して仕留めろ。」


スカーは俺たちに指示を出す。


確かにスカーの言う事は正しいかも知れないが……。


「それだと魔物の群れはどうやって食い止めるんだ? まさかスカーとリンナさん二人でやるつもりか?」


いくらSランクでもそれは難しいんじゃ……と思ったがスカーは自信満々に答える。


「まさか、ではなく普通に二人で十分だ。殲滅は難しいかもしれんが食い止めるだけならどうとでもなる。」


すげーな、そんなことをはっきり言えるなんて。俺でも五千体相手は流石にきついと思うのに……。


そんな俺の心配を見透かしたようにリンナさんが魔法を唱え始めた。


「ソイル・ドール・ソング」


すると……。


ボゴッ、ボコボコッ! ドッズーンッ!


地面の土から3メートル程のゴーレムが出来上がっーーーー!


ボコボコッ、ボゴッ、ドッズーンッ、ボコボコッ、ドッズーンッ、ボコボコッボコボコ!



いや、何体でてくんだよ。多過ぎない?



リンナさんは合計で百は超える数のゴーレムを作り出した。


「私のゴーレム達が盾になって群れを食い止めましょう。」


リンナさんはまた魅惑的な笑みを浮かべる。



「エリー、これなんて魔法? リンナさん凄すぎない?」


俺は思わずエリーに解説を求める。


「リンナさんは生命系の魔法の使い手です。土に簡易的な魂を込めてゴーレムを作り出すんです。常人なら同時に五体くらいが限界なんですけどリンナさんは余裕で百体くらいなら出せるんです。だらか二つ名も《土軍》なんですよ。」


なるほどな、生命系のってのはゴーレムとかそう言うものなのか。


確かに統率されたゴーレムの群れは土の軍、って感じだな。なんで女性なのに《土軍》なんて二つ名なのか気になっていたがこれは確かに《土軍》だ。



リンナさんは生み出したゴーレムの軍隊を横一列に並べて魔物の群れの進軍を食い止めた。


「今はなんとかなってるけど長期戦だと持たないかも知れないから早めに決着つけるわよ。スカーくん、お願いね。」


リンナさんはスカーにウインクをする。


「わかりました。じゃあ《爆炎》の力見せてやりますよ。」


そう言うとスカーは腰にぶら下げていた剣を抜き魔法を唱える。


「フレイム・マザー・タンク」


すると彼の頭上に巨大な火の玉が現れる。


彼は更に魔法を唱える。


「フレイム・キッド・バレット」


すると彼の頭上の火の玉からボウリング玉くらいの火の玉が分裂して魔物の群れ目掛けて飛んでゆく。


まるでマシンガンのように火の玉を乱射するスカー。



「ギャルウルフルゥウルゥ!」

「ヴェェェエえええええ!」

「びえてえてえええええええええ!」



魔物の群れのあちらこちらで爆発が生じ悲鳴、いや断末魔が聞こえてくる。



「確かにこれは《爆炎》だな……。」


なんのために剣を抜いたかはイマイチよくわからないがとにかくとんでもない火力だ。


一対一の勝負ならともかく多数を相手取るならこの二人の戦力は俺やエリーを大きく上回るだろう。


二人を心配する必要は全くなさそうだな。



俺たちは最初スカーに言われた通りに群れのボスを仕留めることにした。



「エリー、飛んでくれ。上空からボスっぽい奴を探すぞ!」


「はい!」



俺はエリーに乗って再び空を飛ぶ。


今は食い止められていても多勢に無勢ではあるのだ。スカーとリンナさんが疲弊して前線が崩壊する可能性はゼロではない以上早目に群れのボスを倒しておきたい。



「ところで……。」


群れの上空を飛びながらエリーが尋ねてきた。


「ボスっぽい奴ってどんな奴ですか?」



「………………わからん。」



思わぬところで作戦は破綻の危機を迎えていた。



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