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12.結成式

メルト国の冒険者ギルドでグランドマスターを務めるマスター・フェルナンド、彼は今首都メルトにある冒険者ギルド本部に居た。


彼の部屋に部下が入ってくる。


「フェルナンド様、そろそろ時間です。精鋭として声をかけた冒険者の方達がギルドホールに集まっております。」


今日は魔王軍に対抗するためにギルドの各支部から募った精鋭を集めていた。


ここでパーティの結成式をする予定なのだ。


「わかった、今行く。冒険者はどのくらい集まっている?」


椅子から立ち上がりながら集合状況を尋ねる。


部下は手元の資料をめくる。


「冒険者153人の候補から、今日はは53人が集まっております。」


「53人か……。ランクはどうなってる。」


思ったよりも少ない数字に落胆する。しかしSランクが多ければなんとかなるそう思いランクを聞く。


「はい、Sランクの冒険者は27人中12人が参加してくれています。残りはAランクが37人、Bランクが4人です。」


思っていたよりもSランクの数は多かったため彼は少しホッとする。


部下が続けて報告する。


「何人か連絡がつかないものもおります。Sランクの「迅速」「神風」両名ともに所在がつかめてません。あと、Aランクのアラドさんとその弟子数名は参加を確約していたのですが今日は姿が見えません。」


何名か所在の分からないものもいるらしいが冒険者という職業柄べつにそこまで不思議な事でもない。


「連絡が取れ次第、精鋭パーティに加わってもらえるよう交渉しろ。」


「はい、では各支部に伝えておきます。」


フェルナンドは特に気にもとめず部屋を出てギルドホールへ向かう。



そこにはすでに各支部から集められた選りすぐりの冒険者が集まっていた。



彼はギルドホール中央にある台の上に登る。



「御機嫌よう冒険者諸君。初めましての奴もそうじゃない奴もいるな、私は冒険者ギルドのグランドマスター、マスター・フェルナンドだ。今日は集まってくれて感謝する。」



「いよっ! グランドマスター!」

「おっさーん! 挨拶はいいからさっさと本題を話せ!」

「……。」


冒険者はホールに設置したあるテーブルやベンチに腰をかけて好き勝手にヤジを入れたり、あるいは反応しなかったり、様々な反応を見せる。


規律で縛られた軍隊ではあり得ない光景だろう。


フェルナンドはこう言った冒険者の悪く言えば無秩序、よく言えば自由な所を尊重していたためヤジを止めようとはしない。


そのまま話続ける。


「さて、ここに集まってもらった理由はもうわかっているだろう。現在隣国のカナンが魔王軍によって攻められている。カナンが征服されれば次はここ、メルトに進軍してくるはずだ。魔王軍の力は強大、対抗するためにメルト国の戦力の全てを投入する必要がある。」


フェルナンドの声はギルドホール全体に響きわたる。


「我ら冒険者は数は少ないが一人一人が一騎当千だ。魔王軍との戦闘でも活躍してもらうぞ!」



「うぉぉおぉぉぉおぉぉぉぉぉお!」



冒険者達の士気は十分に高まっている。少数とは言え冒険者ギルドの精鋭達なのだ、使い所さえ誤らなければかなりの戦力になる。フェルナンドは頼もしさをかんじた。


そんな時ーーーー!



ドッシャーーッン!


ギルドホールに猛烈な勢いで入って、いや突っ込んでくるものがいた。



「はぁっ。はぁっ。すいません! 遅れました、ワンドック支部から来たカナメです!」


フェルナンドは思った。


なんでこんなに汗だくなんだ?




✴︎



俺は走っていた。首都メルトにあるギルド本部に向かって全力で走っていた。


なんでかって?


馬が盗まれたんだよ、チキショー。



俺が馬を走らせ道のりの半分ほどを進んだ所で俺はトイレに行きたくなった。


幸い小の方だったので馬を止め近くの茂みで立ちションしていたのだが……、その隙に盗賊が俺の馬に乗って逃げていった。馬泥棒を追いかけて捕まえてたかったが尿を撒き散らせて走るわけにもいかない。


結果、ズボンのチャックを閉める頃には馬と馬泥棒は目に見えないほど遠くに逃げていた。


馬に身体能力強化魔法をかけたのが仇になったのだ。



時間もないし、追いかけてもしょうがないので俺は自分に魔法をかけて全力で走った。


それはもう息が切れるくらい全力で。


そして……。


「はぁっ。はぁっ。すいません! 遅れました、ワンドック支部から来たカナメです!」



ギリギリ間に合い今に至る。



ギルドホールには沢山の冒険者がいて、中央の台にはひとりのオジさんが立っている。


みんな突然現れた俺を見て驚いている。



「カナメさん! どうしてあなたがここに?」



よく見るとその中にエリーも居る。少し驚いたがよく考えてみれば当然か。確か精鋭が集められてる筈だからな。Sランクのエリーがいても不思議ではない。


エリーが俺に話しかける様子を見て回りは少しざわつく。


「あの男なにもんだ?」

「いま話しかけてるのって「魔竜」のエリーだよな。」

「あいつもSランクなのか?みたことないぞ。」



その騒ぎを沈めるように中央のオジさんが俺に話しかけてくる。


「カナメくん、だったか? 君も精鋭候補にいたのか? ランクは……えーと。」



どうやら俺が精鋭候補かどうか確かめようとしてるみたいだ。


手元の資料を調べている。


「君はBランクなのか! しかし実績は凄いな、「魔龍」と協力してビルド・ジャガーを討伐している。」


どうやら候補いたってことはわかったようだ。


ところで……。


「なぁ、エリー。さっきから言ってる「魔龍」ってなんだ? お前のことなのか?」


聞きなれない単語が気になる。


エリーは説明してくれた。


「あれは私の二つ名です。Sランクの冒険者には二つ名が与えられるんです。私は「魔龍」のエリーとも呼ばれているんです。」



なるほどなぁ、なんかカッコいいな二つ名って。


俺も「氷雪」とか「爆炎」みたいな二つ名欲しいな。いや、氷も炎も使えないけどさ。



俺がバカなことを考えているとまわりから笑い声が聞こえてくる。


「二つ名すら知らないルーキーかよ。」

「Bランクって、よくここにこれたな。俺なら恥ずかしくて引きこもってるぜ、ゲハハ。」

「どうせビルド・ジャガー討伐も「魔龍」の手柄のおこぼれだろ?」



うーん、この初心者に優しくない感じ。流石は我の強い冒険者達だ。


別になんと言われようと不正してここに来たわけではないので堂々としていよう。無視だ、無視。あんなヤジにいちいちかまってられるか。



俺は特に反論もせずエリーが座っていた椅子の隣に座る。


台の上の男が話し出す。


「数はいくらあっても困ることは無いからな、実績は十分だし精鋭としての資格は揃っている。カナメくん、精鋭パーティに歓迎しよう。」


よかった。なんとか魔王軍と戦うための精鋭には入れたようだ。


ところで……。



「あのオジさん誰?」


俺はエリーに尋ねる。


エリーは呆れたように答える。


「はぁ、あれはギルドのグランドマスター、マスター・フェルナンドさんです。今のギルドのトップは彼です。」


「ふーん、じゃあ凄い人なんだな。」


雰囲気からして只者ではなさそうだったがギルドのボスだったのか。


「では、これで揃ったな。今から4人から6人でパーティを作る。基本的には支部で固まってもらう。」



彼はそれ以上俺について言及しようとはせず話を進めようとする。


しかし、それを制止するものが。


「ギルマスよ、ちょっと待て。俺はこんなルーキーが精鋭なんて認めねえ!」


先程俺を笑っていた冒険者のうちの一人だ。


大柄の丸坊主男、顔には無数の傷がある。


「どうせビルド・ジャガー討伐も「魔龍」の手柄を貰っただけだろ! 知識もないルーキーに討伐できるわけないもんな。」


いちゃもんをつけてくる。


「別にそう思うならそれでいいよ。俺は魔王と戦えればそれでいいんだし。」


めんどくさいから反論はしないがそれが火に油を注いだようだ。


男は俺を指差し叫ぶ。


「魔王とか生意気なことを言ってんじゃねえ! このインチキ野郎が、少し冒険者の厳しさを教えてやる。」


男は指を鳴らす。


「おい、インチキ野郎、勝負だ。無抵抗の相手をぶん殴るわけにはいかないからな。かかってこい!」


やだよめんどくさい。と言いたいがそうは問屋がおろさないようだ。


周りの冒険者も俺に戦うようにヤジを飛ばす。


しょうがない。


俺はゆっくり立ち上がる。


「それで?勝負ってどうすれば勝ちなんだ、お前を気絶させればいいのか?」


「それでいいぜぇ、ただし間違って殺しても文句は無しだ! いくぜぇ!」



殺す気まんまんじゃねーか!


男は大きな斧を俺に目掛けて振り下ろす。 彼も精鋭として呼ばれただけあってそこそこ速く、威力もありそうな攻撃だ。


全然避けられるけどな。


俺はあっさりと回避に成功する。


「ほう、俺の一撃を防ぐなんてなかなかやるじゃねえか! 運だけは褒めてやる、オラ!」


男はさらに追撃を加える。


俺はその斧目掛けて拳を振るう。


バッキーンッ!


俺の拳は一撃で斧を粉々にした。


今まで人間と戦ったことはなかったからな、加減が難しい。下手に殴って死なれても困る。だから武器を壊して戦闘不能にしたのだ。


「ほら、もういいだろ?それとままだやるか?」


俺は男に降伏を促す。


「うるせぇ! どうせなにかの仕掛けがあるんだろ! このインチキ野郎!」


もうこいつただのクレーマーじゃん。


俺はもう一度拳を握りしめて……。


「たしか、間違って殺しても文句は無しだったよな?」


ちょっと脅しをかけることにした。もちろん殺す気はない。


男は黙り込むが他の冒険者もいる手前、後には引けないようで降参もしない。


場は膠着する、そんな時……。


「もういいだろう、両方とも。勝負はルーキーの勝ちだ。」


ギルドホールの端っこに座っていた男が俺たちを制止する。


「あんたは、「爆炎」!」


男は驚いている。「爆炎」って二つ名から推測するにこいつもSランクの冒険者なのか?


「爆炎」と呼ばれた男はギルドホールの中央に歩いてきて言い放った。


「これ以上の馬鹿騒ぎはやめろ。続けるってんなら二人とも俺が焼くぞ。」


俺に絡んだ男だけでなく俺を笑っていた冒険者も少しひるむ。


てかなんで二人とも焼くんだよ。俺、完全に被害者だったろーが。


なんて事も思ったが一応場は収まったのでよしとしておくか。


騒ぎが収まったのを見計らってふたたびギルドマスターのフェルナンドだっけ? が話し出す。


「みんな元気だけは十分だな。先程も言ったがみんなにはパーティ単位で動いてもらう。仲良くしてくれ。それではパーティ編成を始め……」



ドッシャーーッン!



フェルナンドが話している最中に再び誰かギルドホールに飛び込んできた。


「またか! はぁ、今度はなんだ?」


なかなか話が進まない。フェルナンドはため息をつきながら入ってきた男に話を聞こうとする。


しかし……、今入ってきたものは冒険者ではなかった。



「マスター・フェルナンド! 北のツーラン領に大量の魔物が発生しました! 至急応援をお願いします!」



彼はギルドの伝令係だった。


そして彼が持ってきた知らせは絶望に満ちていた。


「魔物の数は5千を超えます! 」




次回・VS魔物5000匹

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