第五話 ダンジョンアタック2
新しくオルトが仲間になったことで有頂天になってこけて恥ずかしい思いをしたアルメスでございます。ああ、恥ずかしや、恥ずかしや。だけども続くよダンジョンアタック。泣きたい。
ちなみにだけど、戦うのはもちろん俺だけじゃない。お父さんとお母さんは見守っているけれど、兄さんたちは前に出て魔物たちと戦ったりしている。まあ、モンスターと魔物とでは力が大きく違いすぎる。
ちなみにだがこれはなぜか?魔物には魔力がある。だが、それは生命維持に使われており、自分の成長のために一気に使うのではなく、キープして使われているのだ。だからこそ、魔物は魔法を使う個体もいるのだが、強力な魔法は使わない。
しかし、モンスターは違う。主がモンスターを守ることを約束しており、さらに他にも仲間のモンスターがおり、後先考えて魔力を温存しておく必要がなく、自分の成長や強力な魔法のために魔力をつぎ込んでしまえるのである。その証拠に、オルトは魔物の時より遥かに強力な個体へと一瞬で進化を遂げた。
これは、異世界転生物でもよくあるネームドと呼ばれることと同じなのだ。この場合は、ほんのわずかに仲間のモンスターが新たにモンスターになる魔物に魔力を譲渡しているのも理由の一つである。しかし、モンスターはそのほんのわずかでも、強い魔力であるし、何より元々魔物であった魔力なので、簡単に体に馴染んで進化を遂げるのだ。
これが、モンスターマスターが恐ろしく強い一つの理由である。そりゃそうだろう。まず野生でネームドと出会うなんてことは有り得ないといっていい。ダンジョンマスターでも、効率の悪さ、そして魔物がその魔力になじむかどうかがわからなく、生還率が極少であるため、ネームドはいないといってもいい。
過去にネームドモンスターがいたがそれは有り得ない強さを持つスライムで、そのスライムはモンスターマスターの間では語り継がれる最強の最強である存在八魔柱の一柱になっている、というところから、自然発生のネームドの恐ろしさがわかる。ちなみに八魔柱はダンジョンを一撃で消滅させる実力を持っている。
故にモンスターは強い。そのかわりまず魔物がモンスターになる確率が低い。低い理由もここからきている。魔力の波長が合わなければどれだけ強かろうがどれだけ賢かろうが、モンスターになることはない。
まあ何が言いたいかといいますと、まさしく無双。相手になってねぇ~。アラク兄もラメリア姉もフィメリ姉もリア姉も蹂躙してんすよ。冒険者の中で新人っぽい人たちや、まだモンスターマスターを見たことがなかったという人達は初め皆開いた口が塞がらない顔をしていた。
俺が初め戦いに出た時も、マジで心配そうにやめておけという声も出たのだが、簡単に倒した後からそんな声は一切出なかった。というより、
「ハハハ。おかしいなぁ。アイアンタートルってあんなに簡単に甲羅が砕けるものだっけ?」
「マジックグリズリーの剛腕や魔法を腕ではじき返すとかいろいろとおかしいよなぁ。腕での一撃なんてふっとばされる可能性があるから冒険者の間でも警戒されてるはずなのになぁ。」
「あれ?シャドーウルフだよね?あれは斥候泣かせで有名な速さの持ち主のはずなのに一瞬で追いつかれてやられるってどういうこと?あるぇ?」
という風に、知らなかった人たちが、モンスターマスターの実力を本当の意味で知って自信喪失しているさまがよく見受けられたよ。知っていた人たちが
「モンスターマスターは俺たちとは全くの別もんだ。気にすんな、真似をしようともすんなよ。あの人たちはバケモンだからな。」
「ありゃあまず俺たちとは違うんだ。モンスターってのと人間とを比べて落胆すんな。」
「仕方ないわよ。私たちは人間。あの子たちはモンスターマスター。オッケー?」
なんて慰めているのを見ていたり。改めて思う。モンスターマスターはチート。
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さて、さっき言っていたようにうちの兄姉強すぎ...?ということになっているが特にアラク兄は本当に強い。連れているモンスターが色々と強いのだ。
まず、モンスターマスターのモンスターは本当に滅茶苦茶なほどに種類が多く、種族が同じでも強さ、特徴がぜんぜん違う、なんてことはざらにあるのだ。
そして、モンスターマスターのモンスターがさらに特殊であることに一役買っている事象がある。それは、モンスター同士の交配である。
...ここで、某有名なド〇ク〇のモ〇ス〇ー〇を思い浮かべた人がいるだろうが、流石にそこまでおかしなことにはなっていない。あれは異種族の間でも当たり前のように交配させてるとかいう明らかに生物学に喧嘩売ってるようなもんだったけどな。しかも、子育てもせずに去る親たち。育児放棄がデフォとかやばいよな。
そういうのではなくほとんど同種族の間だけで親が去ることも無く子を成すというのが交配なのだ。そしてそこから生まれてきたモンスターというのは、親が望んだ進化を遂げたり、親の特性を引き継いだり、はたまた親の強靭な体に豊富な魔力量を持って生まれてきたりなど、恐ろしく強くなっているのだ。
ハイブリッドともいえるモンスターの有名種の一つにオリハルコンスライムがいる。このモンスターは、いわゆるメ〇ル〇ラ〇ムなのだが、恐ろしい硬度を誇る。速度は遅いのだが、その硬度と、耐久度からモンスターでもドラゴン以上の強さを誇るスライムとしても有名なのだ。
ドラゴンはファンタジーの恒例最強種なのだが、交配により生まれたモンスターマスターのモンスターはその常識すら軽く覆してしまうほどの強さを持つ。これが、モンスターマスターが特に他の追随を許さないほどに強い理由の一つだ。
しかし交配の恩恵に与るのは本当に至難の業だとされている。まず、気の合うモンスターがいたとしても、ちょうどその種が同じ種族であるというわけではないし、同じ種族であったとしても、親が望む進化や、親の特性を持って生まれてくるということは、親が強く、そしてそれですら足りないほどの修羅場を潜り抜けさせていないと普通のモンスターとして生まれる可能性の方が高いのだ。
故にアラク兄が、もう既に交配で生まれたワイバーン種速度特化のゲイルワイバーンを仲間にしているのが天才の証明であることはわかるだろう。他にも半竜種炎属ボルケーノラグーンや、魔蛇種炎属エルドスネーク、魔鳥炎属ククルカン、不定形炎属エンネツという、まさしく炎中心の攻撃型パーティーだ。
ちなみにゲイル、ラグーン、エル、クルル、エンと呼んでいる。
モンスターマスター五年目でこれは色々とおかしい。ここまで属性がそろうのもそんなにないし、攻撃型なのにここまでバランスが良いパーティーが組めるということ自体がこの年数では有り得ないといっていい。しかもモンスター達は精強揃い。
ゲイルは先ほどシャドーウルフを一方的に仕留めたぐらいの速さがある。ラグーンはその攻撃力とタフネスはピカ一。アイアンタートルの甲羅を一撃でたたき割り、マジックグリズリーの剛腕すらも意に介さない。エルはその索敵能力によりパーティーのレーダー役兼魔法サポートで、クルルは空からの急襲を行い撹乱しつつも敵を減らすし、エンはその不定形の体を生かした盾の役割を果たしている。
下手な大人のモンスターマスターにすら勝てるほどの力を持ちながらも、さらにモンスター達とも研鑽を重ねるアラク兄。イケメン+天才とかいう天は二物を与えたもうたを地で行く兄。これを破れとかなかなかに無理ゲーなお話だよなぁ。だけど、俺は強くならないといけない。最強を目指してますからね、これでも。
なんて、お話をしている間に、浅層ダンジョンボスフロアに到着。ここのボスはコカトリス。あ、石化能力はないよ?あんなチートにもほどがある魔眼能力があったらコカトリスはドラゴンよりも段違いに凶悪だろう。
そういうのではなく、毒爪を持ち尻尾は蛇その他は大きな鶏で火も吐くという、ドラゴンとキマイラを足して鶏で割ったようなそんな魔物だ。
それに挑むのはラメリア姉とフィメリ姉とリア姉だ。さてさて、どれほどの力か詳しく見せてもらおうか!