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第四話 ダンジョンアタック(ただの遠出)

はい、やってまいりました。王道ダンジョン。王道つっても、モンスターマスターにとってはそんなに危険でも何でもないんだけどね。いつでも逃げられるし、罠も即死はないうえに、モンスターには効かないから全然大丈夫。


あ~そもそも王道ダンジョンはそんなに不親切ではない。ダンジョンマスターがまず、DPというものを稼いでいるんだけど、モンスターマスターのモンスターってのはそれが恐ろしく多いんだそうだ。これは、生命体の強さや魔力に比例して、DPの上昇度は加速度的に上がるらしい。


だから、ダンジョンにモンスターマスターがやってくるのは、ダンジョンコアが壊されない人間やその他生命体に協力しているダンジョンマスターにとってはウハウハといって構わないほどのフィーバータイムだそう。そもそも、猫可愛がりしているダンジョンの魔物や、有能で賢い魔物はよほどでないかぎり、ダンジョンマスターに忠誠を誓っており、スカウトされてしまうなんてことは起こらないそうだ。過去にネコ型の魔物をスカウトされてキレていたが、可愛がりが度を越しすぎていて嫌われたためだと判明し、膝から崩れ落ちたダンジョンマスターもいたそうだが。


つまるところ、王道ダンジョンでスカウトできる魔物といえば、ダンジョンマスターにとっては痛くもかゆくもないし、倒されてもそれ以上に補給が効く収入を得るための餌だという程度の認識だと聞いた。そんな程度の認識だから、もろ手を挙げてモンスターマスターは歓迎されるのだ。特にここは、モンスターマスターに合わせて、その人に会った魔物を戦わせてスカウト確立を挙げてくれる、モンスターマスター御用達のダンジョンでもあるんだよね。最早、接待プレイなんじゃね?これ?


しかも、モンスターマスターがダンジョンに潜るということは、スカウトできずに倒された魔物の素材や、途中にある宝箱から出る武具や財宝などを打ってもらえる機会でもあるので、商人によってキャラバンが組まれる。安全に、そして質の良いものが安く仕入れられる機会でもあるので、商人たちがついてくるのだ。


冒険者たちも同じで、もしかしたら、強力な武具や効能の高い薬を入手できるかもしれないし、何より道中まで安全にリスクなく降りていくことができるのだから、モンスターマスターの近くには人の集まりができる。極めつけに承認にはモンスターマスターの取りこぼしによる万一の惨劇も防げるし、冒険者には商人御用達になれるつてができる可能性も存在している。安全でなおかつ需要がある人が近くにいるのだから、移動しつつ商売し始める者もよくいて、その周りの人はダンジョンでも暖かくできたての物を食い、風呂を浴び、いい寝具で寝られるのだ。


しかも、今回は一人ではなく家族総出で動いており、安全度が桁違いであるために商人も冒険者も相当いる。酒を売ったり、ジュースを売ったり、菓子や薬、その他さまざまなものが売っている。まるで歩く移動都市だとでも言わんばかりである。


モンスターマスターが動けば経済が動くといっても過言ではなく、そしてモンスターマスター達はお人好しで暴利をとらないために、冒険者も商人もニコニコ顔。これがモンスターマスターを敵に回したら世界を敵に回すという真相だ。他にも国々が、モンスターマスター達に建国の助けを受けていたり、国の危機を助けてもらったりしているので、国々がモンスターマスター達がエスキア国とは別に友好条約を結んでいるくらいだ。


本当にこの世界は生き残るのだけならイージーモードです。本当にありがとうございました。ダンジョンのくせしてまるで街にいるかのような心境です。


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そんなふうに遠い目をしながらダンジョンを潜り進めていたある時、ダンジョンの魔物が目の前に出てきた!出てきた魔物はアイスウルフと2頭のウルフ。どうやらアイスウルフは結構な希少種らしく、幸先のいい出会い方だ。


「アルメス、行ってこい。お前ならやれる、フロストと共に頑張れ。」

「ああ、父さん。勝ってくるよ。行ってくる!」


ついに、俺とフロストの初陣だ!初めてのバトルだ!気を引き締めていこう!


「フロスト!まずウルフを氷の息で凍らせてやれ!」

「ガアアア!」


まず先手を打ってフロストがウルフ達に向かって氷の息を吐きつける。相当な強風の氷の風が、フロストの口から吹き荒れる。それで、ウルフ2頭は凍り付いた。だが、アイスウルフはもともと氷を身にまとっており、フロストの氷の息を気にすることなく走ってくる。


「フロスト、噛みついて倒せ!」


俺の指示に反応して、飛びかかってきたアイスウルフをフロストは氷の息を吐いていた口をそのままアイスウルフに向けて噛みついた。そのままフロストに首元を噛みつかまれ、キャインキャインとアイスウルフは鳴き声をあげながら、フロストに振り回されている。瞬発力・速度・膂力全てにおいて、フロストが上だ。そのままアイスウルフが振り回されて、そして力尽きて地面に倒れた。その時点でどうやらウルフ2頭も力尽きて死に、その体が素材へと変わる、。


と、不意にアイスウルフが立ち上がった。まだ立てるのか、と内心で驚きながらすぐにフロストに警戒させるように伝えるが、そのフロストからは警戒心も、先ほどまでのあの圧もない。なんだ?


「まさか!おおっ、初めてでか!本当に幸先が良いな!」


父さんと母さんに兄さんたちも何かに気付いたようで、少し興奮しているようだが、何に興奮しているかがさっぱりわからずに首をかしげていると、ゆっくりと近づいてきたアイスウルフが、俺の目の前でいきなり腹を見せてハッハッと息を出しながら俺を見ている。え?嘘だろ?スカウトができる確率なんて、このダンジョンでも10000分の1だなんていう統計が出ていたくらいなのに?


俺が、アイスウルフの腹をなでてやると、アイスウルフは嬉しそうに目を細める。そして、腹をある程度撫で続けてやると、俺とアイスウルフを光が包み込み、そしてすぐに光は収まる。これは、どうやらスカウトした時の証明?らしい。そして、アイスウルフはスカウトする前よりも少し大きくなり、毛艶は見違えるように綺麗になっている。これがスカウトによるモンスター化なのか。すごい変化するんだな。


「アイスウルフか。う~ん...よし。お前の名はオルトだ!これからよろしく頼むな!オルト!」

「バウバウバウッ!」


オルトは嬉しそうに吠え、俺の足にすり寄ってきた。ははっ、愛い奴め。異世界転生お馴染みのモフモフが仲間になるはどうやらマジなんだな!しかも一発目!なんて幸先のよさ!しかもまあまあレア!やったぜ!これからも頑張れるってもんだ!


アイスウルフことオルタが仲間になったアルメスはもの凄く嬉しかった。思わず有頂天となるぐらいに。しかし、そんな時間とは長く続かないのもまたお約束ともいえよう。何故ならば...


盛大に転んだのである。小石に躓いて。見事なまでに引っかかって、それはもう芸実的なまでにパターンと。有頂天になりかけた瞬間の出来事で、ここに神がいるのなら、間違いなくこう言っているのだろう。


調子になんかは乗らせません、と。


その瞬間は驚かれるが小石に躓いただけだと分かり、後ろで笑いが起こる。そんなことになって、有頂天になって足元がおろさかになって皆の前で派手に転んだことに恥ずかしさのあまり、頭の中でどうしてこうなった、どうしてこうなった、と自問自答を繰り返すアルメス。


2度とこんなことは起こさないと恥ずかしく思いながらもまだまだアルメスとその一家とさらにそのキャラバンのダンジョンアタックという名のただの遠出は続く。


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