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王にウザがられたら脅迫状が届いた。

 王城内の謁見の間。

 すでに業務時間を大幅に過ぎていたため、マーレーは頬杖をつきながら、タカシの話を聞いていた。


 タカシは家で起こった出来事の一部始終を、マーレーに報告した。



「ほうほう、だいたいわかった」


「け、結構投げやりなのですね……」


「なんもなかったら報告しなくてもいいし、権限は委託したではないか。なんでこんな時間に来るの? 嫌がらせ? 儂にそんなことして、楽しい?」


「いや、あの……もし、自分が報告しなかったら、派兵していたのかもしれませんし……それに報告は義務なのではないかと思いまして……」


「ルーシーよ、そなたは些か堅物なところもあるようだ。いいか、ときには柔軟性も必要ではあるぞ。フレキシブルに、物事を考えていこうではないか」



 タカシは一瞬、不機嫌そうな表情を浮かべるが、それをすぐに引っ込めた。



「……その柔軟性というものは、何事よりも王の予定を優先しろという意味ですか」


「お、言うねえ。皮肉かあ、くー」


「…………」


「いやいや、べつによいのだ。たまにはこういうことがあってよかろう。それもまた柔軟性よ」


「は、はぁ……」


「それで、報告は終わりか?」


「あ、いえ、あとじつはもうひとつありまして……」


「なんだ?」


「アンのことでして……」


「屍人の少女だな」


「はい、このことを内密にしていただきたいのです」


「ふむ。それはまた、なぜだ?」


「あいつの憶測ではありましたが、あいつは何かの研究の研究対象でした。もしその対象が突然消え、どこかへ行ったとなれば、その研究者は連れ戻すか、処分してしまうと思うんです。このまま放置、という可能性は極めて低いかと……ですから、この情報を――」


「できるだけ広めるな、と。儂は構わないがな」


「よろしいのですか?」


「よろしいもなにも、このことは元より極秘事項であると言ったはずだ。そなたのほうこそ、むやみやたらに口外しないように」


「あ、はい、よろしくお願いします」


「おっと、忘れていた。これは明日にでも伝える要件だったが……」


「はい、なんでしょう」


「おまえにひとり、部下ができる」


「は?」


「とりあえず、そういうことだな」


「ちょ、ちょっと待ってください」


「なんだ、この後飲みに行く予定なのだ。手短に頼むぞ」


「あの、部下とは?」


「なに、おまえもよく知っている者だ」


「というか、そもそも自分はまだ青銅なのに……部下というのは……?」


「我が国の騎士総数は、雑兵に比べ、青銅以上の数が圧倒的に少ない。よって青銅騎士以上の騎士には、ある程度の指揮権限が与えられる。これは騎士学校でも習うはずだが……」


『た、タカシさん……あの、習っていませんけど……』



 ルーシーが震える声でタカシに言った。



「覚えてないだけだろ……?」


『いえ、座学は比較的得意でしたから……』


「……あの、習っていない……とおもうのですが……」


「そうか、じつは今決めたのだ」


「そ、そんな横暴な……。それに第一、自分のような小娘が部下をもつなど、無茶です」


「そこも抜かりはない。たしかに、明日着く部下はそなたより年上ではあるが、それでも同年代だ。そこまで心配するほどのことでもない」


「あ、明日!? 明日って、もう数時間後の明日ですか?」


「それ以外どんな意味があるのだ」


「き……急すぎる……。というか、ちょっと待ってください。さきほど、明日報告するって言ってましたよね?」


「言ったな」


「それで、その騎士が来るのは明日の朝なんですよね?」


「そうだな」


「もし、自分がここに来なかったら……?」


「事後報告だ」


「なぜだ!?」


「なぜだって言われても……」



 マーレ―は顔を紅くさせると、指で頬をぽりぽりとかいた。



「なぜ照れておられるのですか……。それに、さきほども申したのですが、なんでよりによって自分なのですか? もっと適任者がいるような気が……」


「その者が、そなたと共に仕事をしたいと言って聞かないのだ」


「なぜそのような面倒くさい者を、騎士として採用なされたのですか……」


「それは難しい質問だな……、だが、理由をひとつ挙げるとするのなら、面白いからだ」


「おも……、おもも……なに?」


「そう。面白いからである。以上」


「そんな無茶苦茶な……それに、その者とはいったい誰なのですか?」


「『面白いからだ』といっただろう? この場で言うわけがないだろう。明日の朝、そなたの寮へ向かわせる予定だ。楽しみに待っておれ。話は以上、解散!」



 マーレ―は高らかに笑ってみせると、タカシの肩にポンと手を置き、部屋を後にした。

 タカシは膝をついて、ガクリと項垂れた。





「おかえルーシー!」



 タカシが寮へと戻ると、寮の前で待っていたのか、ドーラが駆け寄ってきた。



「おまえ、ずっと外で待ってたのか?」


「ああ、ヘヤのなかじゃヒマだからな! もうすぐかえってくるかなっておもって、まってたんだ!」


「……あのさ、明日来る騎士って、おまえじゃねえよな?」


「ん? なんのことだ?」


「それはあり得ないよな……。いや、知らないならべつにいいや」


「それよりルーシー! そのてにもってるのはなんだ?」


「これか? これはあの屍人が作ってくれた弁当だ」


「アンデッドって、あのギンパツゾンビか?」


「そう、あの銀髪ゾンビが作ってくれた弁当だ」


「……ダイジョーブなのか? クサってそうだけど」


「かなりいけるぞ。あいつの料理の腕はかなりのもんだ」


「ホントかー? ……クンクン……クン……でも、そのベントーからはすごくいいにおいがするぞ!」


「言っただろ、あいつの飯はうまいって」


「あ、そうだ! ルーシーにひとつ、デンゴン(・・・・)があったんだった!」


「伝言……? 誰からだ?」


「よくわからない。なんかヘヤのドアにはりつけられてた」


「紙か。見せてみろ」


「はい」


「えーっと……『ルーシー殿、明朝あなたの大事なものをいただきに参ります。首(隠語)を洗って待っていてください』って、なんだこれ」


『予告状……ですかね。見た感じですと』


「そうみたいだけど、大事なもの……? おまえ、なにか心当たりがあるか?」


『うーん……家族とか、ですかね』


「おいおい、てことはまた実家にとんぼ返りか?」


『……ごめんなさい、タカシさん。これが悪戯ならそれに越したことないんですけど……』


「まあ、もし放っておいてルーシーの家族になんかあったら、シャレにならねえからな」


『ほんとごめんなさい。よろしくおねがいします』


「ああ、わかってる……ドーラ」


「んー、なんだルーシー」


「いまから実家に戻るぞ」


「さっきかえったばっかじゃなかったっけ?」


「いま帰ったら、アンの作り立ての料理食えるかもよ」


「いますぐかえるぞ! ルーシー!」





「た、達者で暮らすんだぞ……!」


「ルーちゃん! ドーラちゃん! ツラかったらいつでも帰ってきていいからね!」



 翌日の、昼間。

 ルーシーの実家の前。

 家族がルーシーとの別れを惜しむように、涙を流していた。



「……なんだこれ、デジャブか?」


「わたしの料理、いつでも食べに来ていい」


「ギンパツゾンビ! あたしはヒマだからちょくちょくかえってやるぞ! うれしいな?」


「あなたはいい」


「なんだとぉ! ほめてやってんのに!」


「トカゲは嫌い」


「わたしはトカゲじゃなくてドラゴンだー!!」


「もうそういうのいいから、帰るぞ」



 タカシは暴れるドーラの首根っこを掴むと、そのまま家路についた。



「……それにしても、何もなかったな」


『はい、ただの悪戯みたいでよかったです。けど、なんだか気持ち悪いですね……』


「まあ……、いい気分にはならねえわな」


『でも、なんにせよ、両親が無事でよかったです。ありがとうございました、タカシさん』


「礼はいらねえよ。こっちは体借りてんだから、これくらいはしねえとな」


「カラダをかりてる? なにいってるんだルーシー?」


「なんでもねえよ。おまえはぶら下がってろ!」



 タカシはそう言うと、ドーラを持ったまま腕をグルングルンと回した。



「うわぁ! あははは! もっともっとー!」

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