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パルクール・ランナーズ  作者: 桜崎あかり
第2部

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コスプレイヤー

・2021年10月27日付

細部調整

 ARパルクールをプレイしているのは、普通にゲーマーだけではない。中には、実況者や歌い手等もプレイしている事がSNS経由で判明している。


 その中に有名アイドルグループのメンバーは含まれていなかった。これには別の理由があり、特定芸能事務所がネット炎上を誘発しているとして自粛要請をしているのである。


 ただし、これは草加市及びオケアノスに限定される事であり、他の場所では問題ない。例えば、秋葉原や竹ノ塚――北千住と言ったエリアでプレイする分には何も問題はないようだ。


「芸能事務所の方は――別のガーディアンがやってくれるだろう。こちらは、あくまでも露払いに特化すべき――」


 同日午後1時頃に突如として、彼女は草加駅に姿を見せた。周囲の通行人も、彼女の外見を二度見してしまう――それ位の衝撃がある。CM等のロケが行われる場所でない所で、半裸に近い女性が突如姿を見せたら――。


 実際はARインナースーツを着ている為、全裸等ではないようだが――オケアノスの事情を知らない人間からすれば衝撃の光景だろう。


 インナースーツの色は肌色ではないのだが、彼女が筋肉質と言う事もあって全裸と勘違いしている可能性は高い。


 彼女は駅を降りた所で、50メートル弱の距離にあるコンビニに視線を向け、設置されているセンターモニターに興味を持つ。


「あれがARゲームか――」


 周囲の視線は全くお構いなしでセンターモニターの場所まで歩いて移動するが、それでも一部の写真を撮ろうとしている人間がスマホ片手に近づいてくる。


 しかし、彼女は瞬時にして彼らの動きを無力化した。一体、何が起こったのかは分からないが――警察の事情聴取に対して『急にスマホの電源が切れた』と証言したと言う。


 周囲のギャラリーも、この光景に関しては気付かなかったという話が多く、警察もARゲーム絡みの事件と特定し、注意のみで済ませたようだ。


【草加駅にアマゾネスが現れたようだ】


【映画の撮影か? この場合は特撮か?】


【コスプレイヤーの撮影会ならば、定期的に行われているようだが――】


【しかし、ここはオケアノスだ。あまりにもアレな服装ではない限りは、問題ないだろう】


【だが、有名コスプレイヤーであれば出没情報とか、ネットに出回るのでは?】


 ネット上でも突如として姿を見せたアマゾネスには、かなりの反応があった。実際の写真はアップされていないのに――である。


 アマゾネスと言う単語が唐突にトレンド入りした事に対し、都内某所で情報を収集していたある人物の耳にも入った。


「まずいな――勝手に動き出したと言うべきか。それとも――」


 賢者のローブ姿のヴェルダンディは、パソコンで閲覧していた所にトレンド入りしたアマゾネスに――ふと誰かを連想する。


 それは、別のSNS経由で名前を知ったウルズだった。ヴェルダンディは何回か会話をした事があるが、顔を見た事はない。


「先にスクルドを含め、合流してから作戦を実行するべきだった――」


 これを言っている段階では、既に遅かった。スクルドも同じ様な考えを持った仲間なのだが――彼女ともSNSで数回ほどの遭遇しかしていないのだ。


「しかし、向こうは特に協力の意思はない可能性も高い。結局は自分だけで実行すべきなのか」


 スクルドはヴェルダンディの考えには同調するが、実行となると否定的な意見を出していた。ただし、ARゲームとオケアノスの現状に疑問を持っている事は同じである。それに関してはウルズも同じなのだが――。



 同じタイミングで草加駅に姿を見せたのは――西雲春南にしぐも・はるなである。しかし、電車に乗っていた訳ではなく、自転車で駅まで姿を見せたのだが。


「あの一角だけ――?」


 西雲はコンビニのセンターモニター近くで多数の人だかりが出来ている事に気付く。そして、そこへ近づこうとしたが――自転車に乗ったままでは通行できない様なエリアなので、降りてから近づく。


「あのアマゾネスって、コスプレイヤーかな」


 何とかしてアマゾネスの姿は確認出来たのだが、顔を確認しようにも人の数が多すぎて近づけない。警察が近寄ってくるような流れでもないので、可能ならば顔は確認しておきたい――と。


 しかし、彼女が着てきた服装が仇となった。いつもの癖でメイド服を着用して自転車に乗り、ここまで来てしまったのである。


 草加駅近辺でメイド服は珍しい部類ではないが、秋葉原でしか目撃していないようなカメラ小僧には――格好の餌となるだろう。


 すかさず、西雲はARガジェットを起動して周囲のカメラ小僧を振り払おうとしたのだが、それは出来なかったのである。

ARゲームフィールドが展開されていない場所でARガジェットは起動できない――それが大原則だ。


 アマゾネスの服装はインナースーツなので消える事はない。インナースーツが消えたら、逆にアマゾネスが警察に捕まるのは明白だろう。


 しかし、西雲が使用しようとしていたARガジェットは――ARゲームにログインしないと使えない部類。極めつけは、ランダムフィールド・パルクールの設置場所は増えているが、草加駅近辺は対象外だった事でもある。


(ARガジェットで対応しようにも、ここでは――)


 ガジェットの機動はするが、ARアーマーを含めたガジェットの呼び出しは出来ない事に対し――西雲は驚くしかない。マニュアルのチェックミスと言われれば、それまでなのは間違いないだろう。


 しかし、カメラ小僧に対して逃げ出すような人物も含め、対処したのは――アマゾネスではなく、別の人物だった。


「こっちも噂の人物を確かめようとしたら、こうなるとは――」


 カメラ小僧に対し、スマホを取り上げて動きを止めていたのはビスマルクだったのである。アマゾネスの人物が誰なのかを知っていそうな口ぶりだったが、次の瞬間には取り上げたスマホを隣にいた別のガーディアンに手渡した。


 どうやら、取り上げた際に一部の画像を見たビスマルクが中身に関して――と言う事の様である。


「草加市で盗撮まがいの事をやるとは――ドローンやジャミングシステムがあるのに、度胸があるわね」


 ビスマルク自身も呆れかえるしかない。どれだけ炎上対策を強化しても、結局は抜け穴を見つけ出して実行するだろう。


 それが――ネット炎上勢力のやり方である。まとめサイト勢力以外にもアイドル投資家等と組むパターンもあり、社会問題にもなっていた。


「炎上勢力がいる限り、コンテンツ市場流通は正常化しない――それを容認はしないし、擁護もしないけど――」


 ネット炎上勢を完全駆逐すると宣言する過激派を、ビスマルクは一切擁護しないが――このような行動をする人物を見ると、それも――。


 目の前の光景を見ることしかできなかった西雲は、過激派の発言を否定もしないし、過剰な肩入れもしない。


「これが、自分が入り込もうとした世界――?」


 ネット炎上がWEB小説でしか書かれていないフィクションの様な光景を連想させる。まるで、自分が過去に見てきた光景のデジャブ――そう明言するしかない状態になっていた。

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