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理由の過去

  俺が今やっていることはとてもおこがましい事なのだろう。



 「ほら......早く言えよ。」


 彼女は俯いている。


 「なんで......言わなくちゃいけないの」


 そう言い俺のほうを見た彼女の顔からは先程の笑顔は消えていた。


 「それはだな、これから同じ部にいる訳だから理由もわからず地雷を踏むわけにはいかないだろ? 分かってさえいれば地雷なんて踏むことはないし、近づくことだってないわけだ」


 「あなたと今後話さないってことは出来ないの?」


 「いやできねぇだろ。お互い一人ではやることに限度があるはずだ。相談なんか特に。だから残念ながら常時互いの気を使い、助け合わなきゃいけない、ということをしなくてはならないんだ。わかったか?」



 はぁ、自分で言っといて何だが、気を使うの大嫌いって前から思ってたのにな。

 ほかの言葉が出てこなかった自分の語彙力の無さに絶望するよ。


 「そう...ね...」


 納得してくれたようだ。


 「でも、私が言うのだからあなたも言いなさいよ。過去のトラウマを」


 「残念なことに黒歴史ならあるがトラウマと言える程までいったものはないな」

 

 本当はトラウマなんて山ほどあるし言いたくないことだってある。

 でもな人間は嫌なことからは目をそらすからな。

 ほとんど忘れちまったよ。

 覚えているのはほんとに印象的だったものだけ。

 ()()()()()()()()()().().().().().().().().().().().().()

 「そうなの? それはそれで凄いわね。まあ、黒歴史なんて知ってそれを馬鹿にして遊ぶほどあなたとは仲良くないからべつにいいわ。・・・じゃあ話すわね」



 一呼吸おいて新山は話し始める。


 「これは小学四年生のころからのこと。その頃から私はモテていたの。可愛くて元気な子で周りからの信頼もあったからね」



 そんな自慢話から始めんなよ。

 いらねーよその情報。



 「それでね、もうその頃から私に告白してくる輩が出てきたの。当然振ったわ。私にはその気が全くなかったから。でもその告白してきた輩の中の数人に好意を持っていた女の子達がいたの。その子達は当然私を敵視するようになったわ、だからその子達にこう言ったの。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・ってね」




 うわー小4からそんなことわかってるって怖いなー

 魔女じゃんか。



 「それでカップルができることが増えたわ。私のおかげね。そんな日々を繰り返し繰り返し送ることになった。でも中学二年のときにとある男子が話しているのを聞いたの」



 『新山さーまじいい女だよな。かわいいし周りからの人気もあって、付き合えたら超自慢できるよなーw』


 『何言ってんだよwお前もう振られただろww』


 「……って」




 ………………ん? 

 どういうことだ。

 これは話す必要があったのか。



「そのあと考えたの。そしてわかったの。あっちは私が()()()を演じていることを知らない。私がすごく気を使ってることを知らない。私の表面しか見れない奴ばっかりだったってことに」



 そうか……それなら俺の告白に即答したことやあんなに酷くあしらったことにも説明がつく。



 「高校に入ってあなた以外にも告白されることも少なくなかったわ。その人達もみんな同じだった。一生大事にするとかほかの誰にも渡したくないとか、はぁ、全くわけわからないわ。関わったことないくせに何を言ってるのかと思った。結局あの人たちの目当ては私のなんかじゃなく自分の優越感を保とうとすることだったのよ。さぁ、これで終わりよ。なにか質問でもある?」



 ………………はぁ...わかったぞこいつの正体が。

 こいつ………………めんどくさいやつだ。

 自分で表面上良くしてるくせにそのいい部分しか見ないやつはダメだってことか。

 自分の悪いところや欠点はださないくせに、そのよくない点を見つけて理解して欲しいのだろう。

 こいつは今()()()()()



 「あるぞ。お前は表面上『いい人』を気取っているのになぜ俺の時弱いところを見せた?


 『もう...あんなことは嫌なの』


  って言ったよな。それは……なんでだ?」


 本当の理由を多く知って損は無いと思う。

 だからちゃんと質問はする。


 「卒業して春休みになって気が抜けていたのね。まさか初日から告白してくるなんて思ってなくて気が緩んでいたのかしらね」



 ……なんだそんな理由か。

 少しがっかりだ。


 「わかった。悪いな、話してもらって」


 「はぁ、まったくよ。私は疲れたわ。ではもう帰りましょう」

 


 そう言い新山莉織はバックをもって廊下に出た。

 そしてこちらを向き笑顔で


 「じゃあ、また明日ね!」


 と、言い去ってしまった。



 なんだあいつ二重人格かなんかかよ。

 少し照れちまったよ。

 それにしてもたいした理由じゃなかったな。

 俺からしたらそう思うだけであいつからしたら相当なことだったのかな。

 でもほんとにそうか?

 まだ隠してることがあるんじゃないか……

 今は考えてもしょうがない。

 また今度だな。




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