普通なんて俺は知らない
わからない
この言葉はなんとも都合のいい言葉だと思う。
「そんなことしらなかった」
「聞いたことない」
などど、しらを切るのに便利なことであるからだ。
だけどもほんとに知らなかったことだってある。
わからないことだってある。
実際いま俺はその状況下にある。
昨日初めて女の子を泣かしてしまった。
いや、これまでにも泣かせたことはあったかもしれないが忘れているだけかもしれない。
だからどうしようかと考えているのだ。
放課後どう謝ろうか、ということを。
だってなんで泣かせたとかわからないし。
・・・・・・よし決めた。
「昨日は泣かせてごめんな。これから仲良くしてくれないか?」
よしキタコレ。
しっかりと謝った上になんで泣いたかということに触れず、これからの関係を持つというなかなかいい線いってる案だと思う。
問題は結構なテンプレな件についてだ。
今はクラス内で普通にしているがなかなかに気まずい。
こういう時どうしたらいいんだろう。
誰か教えてくれよ。
そう考えているとクラスの後ろの方が何だか賑わしい。
聞いたことある名前が聞こえた。
岡山是留舵くんだ。
周りには5人ほど集まっている。
「いやいやありえないって」
「いや、あるから! マジあるあるだから!」
「まぁそれも一理あるかも。てかやっぱ柳がおかしいよ。」
「えー!! 美奈も反論すんのかよー....」
などどよくわかんない話をしているのは……誰だったかな。
確か反論されたのが柳灯狼で
あるあるいってるの井原理香子。
んでショートが似合いそうな少女は河頼美奈。
その横で愛想笑いしているちょい太めのやつは赤鬼修斗。
そして気を使ってオロオロしている茶髪のは茎根凛花
のはず。
おー知ってるもんなんだな
楽しそうにしているように見えるが顔色伺って動いているやつが2人いるな。
大変だなーあーやって気を使うの。
そんなんで人生楽しいのかね。
気を使うのは嫌いだな。
使う相手いないけど。
今更ながらこのクラスは5、6ほどのグループにわかれている。
岡山くんがいる所。
アニオタの集まり。
いーな俺も混ざってみたい。
運動部の集まりが二つほど。
マジうざい。
あとは少数組が点々と。
これはグループとしていいのかな。
この環境にいるのはなかなか大変。
一番はうるさいこと。
新山莉織のほうを見るともういなかった。
部室に行った様だ
俺はクラスを抜け部活に行くことにした。
相談室のドアの前で大きく深呼吸をする。
・・・よし。
ガラララ....
ドアを開け最初に目に入ったのは髪をかきあげて本を読んでいる新山莉織だった。
太陽の光がいい感じに入り、すごく......きれいだ。
クラスではうるさい奴が一人になると文学少女に変身するってすごいな。
すると新山は人が入ってきたことに気がついたようでこちらに目を向けた。
俺だとわかった途端、目を鋭くし睨んでくる。
・・・そりゃそうですよね。ごめんなさい。
脳内で謝りそんなこと気にせず新山から離れた席に座った。
そして俺も本を読み始めることにした。
このときにはもう謝ることを忘れていた。
静かだ。
普通なら昨日なんで怒ったのか、泣いたのか、とか聞くものだろう。
だがそれを聞いて昨日の二の舞になるのはごめんだ。
だから待たせてもらう。
10分程経っただろう。
新山莉織がチラチラこっちを見てくるようになった。
多分何か言いたいのだろう。
「はぁ……何か用か。」
ため息混じりでそう聞く。
ほんとに性格悪いと思うよ俺。
「……昨日のことなんだけど」
俯きながらそう言葉を発し話を続ける。
「昨日はごめんなさい。急に怒ったりして。少し昔のことと重なってしまってカッとなってしまったの。だから忘れてくれないかな。」
彼女はいまする必要のない反省をしている。
心が痛い。
「やめろ。謝るな。元はと言えば俺があんなことしなければ良かっただけなんだから。気にしないでくれ。」
彼女は顔を上げ俺の顔を見てニッ、と笑った。
「じゃあお互い忘れよう! それでいいでしょ?」
普通ならここでうんといって仲直りすればいいはずなのだが
残念ながら俺は普通じゃないらしい。
友達作りを諦めた今の俺は
なにをしようが俺の勝手だろ、理論に入ってしまっている。
だからデリカシーとか過去のトラウマなんて気にしない。
先に忘れようと言ったのはこっちのクセに。
そんなことを関係なしに俺はこう言った。
「よくない。お前に何があるのか教えろ」