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さすがに予想できなかった

鎖結姉が明太子のふりかけがかかったお米を食べながら真剣にテレビを見ていた。

その横で俺は暖かいカフェオレを飲んでいる。

『今日の運勢』とか『街行くカップル』とか俺の今日の気分を害するものばかりが流れていた。

やったー、いいね!青春。と

どうやら今日の運勢一位でだったらしい。

それで

「あ、愛人最下位だったよー。どんまい!」

って。

「でもラッキーアイテムが金のハートだって。うちにあるかな……」

首をかしげて姉はそうつぶやいた。



いやかわいい弟のことを思ってくれるのは嬉しいけどいらないから。

教室、自分の席で金のハートの形したものを

「今日のラッキーアイテムか……」

とか思っていじってたら周りにいる女子から

「え……あいつあんな趣味あんの……きもっ…………」

って言われちゃうよ。

え? なんでわかるかって?

そんなの決まってるじゃん。



経験則だよ。



運勢最悪ってことは今日はうまくいかないんだろーなー。

それで河頼の件は長引くだろうなー。

今度は俺か新山のどっちがキレるのかなー。


あっ。

っととあることを考える。


「なあ鎖結姉」


「ん~?」


「鎖結姉って今大学2年じゃん? 今まででほとんど関わったことない人に陰口を言われたり嫌がらせをされてるのを見たり聞いたりしたことないか? 鎖結姉が。でもいいけど」


「あ~あるよ。実際高校の時にいじめにあってる人いたし男女両方とも。まあ大学でもいるけど」


「そういうのを鎖結姉が相談受けることはある?」


「あるある。結構あるよ」


「そういうのってどうしてんの?」


少し河頼の件に似せたことを聞いている俺。

決して解決方法が思いついていなくて教えてもらおうとか思ってるわけじゃないぞ。

そう……参考だ参考。

自分よりは人生経験がある姉に相談しているだけなのだ。


「いや~基本的になにもしないかな」



「え……?」


思い描いていた想像と違って驚きを口に出してしまった。


「いやいや驚かないでよ。()()()()()だからね。あまりにもひどいこと、暴力やことや陰湿ないじめ、つまりものを隠される、盗られるとかが起きて、自殺や不登校とかにとかなった場合は私直々に手を下してるね!」


「ああ……ちゃんと助けるのか。よかった」


「ん? なにがよかったの?」


姉の言葉に威圧を感じる。

笑顔の裏に隠れた顔が初めて見えた気がした。


「それで助かったんならよかったじゃないか」


「いやいやいや違うでしょ。愛人なら理解できると思ってるんだけどな~。わかんない?」


俺の目の奥を覗き込むように顔を近づけてきた。


…………


言葉が出ない。

俺は知っていた。

なぜそれが助かってないか。

言葉が出ないのは日頃能天気である鎖結姉がそこまで考えていたからだ。


「その無言は私がそこまで考えてない馬鹿だと思ってたからでしょ? 残念ながらその通りだけどそうじゃないんだな~。」


「現状打破は必要だよ。でも問題はそのあとじゃん? 愛人もわかってるだろうけどいじめられたりしている場合は自分で解決が一番。第三者が解決するのほんとは違うと思うんだよね」



「……なんで」


「だからさ~わかってるのに質問するのは愚者の考え方だよ。お互い腹を割って話そうよ兄弟なんだからさ。」


「…………」



「……どうせわかってるだろうけど答えてあげる。お姉ちゃんだからね!」


「私が、他人が解決しても解決にはならない。ずっとわたしが近くにいるわけでもないから嫌がらせは止まらないよ。見てないときに過激になるだろうね。場合によっては私にも火花が散ってくるし状況はさらに悪くなるかもしれないでしょ?」


「それだったらなんで助けようとすんだよ」



「……流石に怒るよ? それくらい誰にでもわかるでしょ。お姉ちゃんに失望させないで。」


キッと姉を睨み付けるように目で返事をした。


「全く怖いな~もう。ただの自己満足だって~いいじゃんか別に~」


「違うだろ」


「え」


「自己満足じゃなくて見下して楽しんでんだろ? 助けるのだってほんとは被害にあってるやつがもっとひどくなるのが面白いからそんな正義のヒーローごっこやってんだろ」



朝から俺は怒鳴るのかと。

なぜここまで姉に噛みついているのかと。

姉を悪者にして自分の考えを貫こうとしている自分が正義のヒーローを気取ってるのではないかと。


「それでも自己満足じゃん? いいじゃない」


「否定は……しないのか」


「しないよ。腹割って話そうって言ったじゃん。だから話し始めたんでしょ」


「……姉ちゃんは……昔からそうだったのか……?」



動揺、不安、悲観、恐怖などの負の感情が混じった声震え声でそうきくと



「ん~昔っていうのがいつからかわからないけど物心ついたときからそうだね」


「……今こうやって話したのはもういい人ぶるのに飽きたからか」


「い~や。愛人ならどうせ気づいてると思ってたからさ。まあ知らなかったみたいだから私の早とちりだったみたいだけどぉ」



「あ、もう時間だね。んじゃ先行ってるね~」



俺の気持ちを置き去りにしてさっさと家をでていった。


16年も一緒にいて姉の本質に気づかなかったのだ。

こんな身近にいる人間のことすらわからないのに出会って数か月のやつに偉そうに言うのは

()()()()()()のかな。

そんな俺の本質を姉は見据えていたのかな。




…………



てかなんで相談のつもりで聞いたのにこんなことになってんの。

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