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これはこれでありなのかもしれない

 今現在この状況。


 河頼は新山が自分の発言によってキレてしまっているなんて思わず

 口調の変化に違和感をもち、「なんで怒ってるの?」と、しか思えず、新山の気迫に押され何も言えずにいるのだろう。


 だが俺の場合新山がなんで怒っているかも理解しているし、気迫に押されているからといっても俺に向けられたものではないから喋れないほどでもない。

 だが俺は今動揺を隠せない。

 言おうとしていたことがはるか彼方へ飛んで行ってしまった。



 俺たちの様子を気に留めることもなく彼女は言葉を続ける。


 「大体なぜこちらがあなたの個人的相談を解決までしなくちゃいけないの? 私たちは相談部よ? 基本的には相談を受けて助言をするだけでいいのよ。部活名を見てそうは思わなかったの? ただ私たちが勝手に解決までもっていこうとしてるだけなの。ボランティアよ。それにこちらには断る権利はあるわ。人間だもの。できることに限界はあるしやりたくないことだってある。私たちのやってることを知らないで何が「当たり前」よ。ふざけるのも大概にしてほしいわ。」



 俺が新山にした質問と同じこと言ってる。

 何時間か、前の話がまだ心の中ではっきりしていなく残っていたから無意識に口に出したのだろう。

 いっていることはもっともだがもともと俺と似ている思考をしていたのかもしれない。



 「……で……でも、凛花のことはちゃんと「解決」したじゃんか!」


 「彼女の相談内容は解決できると思えたし、彼女も彼女なりに考えて行動まで移したわ。たとえその行動が成功しようが失敗しようが関係ないのよ。その人が本当に困ってて本気で、「()()」で解決しようとしていなければ意味がないの。結局私たちがするのはサポートであってメインの行動は相談者がやらなければいけないの。それにあなたの態度も気に入らない。他力本願で神風主義。対して仲良くもない人にフレンドリーな口調で。上から目線で。あなたと仲良くしたいなんて思ってないわよ。問題は時間が解決してくれるとでも思ってるなら間違いよ。好きな人のタイプになるための努力をするというなら自分の癖くらい自分で直したら? それくらいできないのなら人に好かれるなんて到底無理よ」



 「……………………」



 そう論破された河頼が次に発する言葉はなかった。


 今の河頼からしたらこの相談部というのは自分の相談なんか受ける気がなく、自分を泣かせてくる悪人と認識されているだろう。

 はたから見ればこの状況は新山が正しいとみるはず。

 だが残念なことにこの場には河頼、新山。俺の三人しかいない。

 河頼が明日、またはこの後

 「二日連続で相談部にひどい目にあわされた」

 「今回は新山も加わってきた」

 なんていうのを広めでもしたら。

 新山や俺は悪人と認識されるだろう。

 俺が悪人と思われるのは今更だが

 新山莉織が()()()()()()()()()()()()()()()()


 このレッテルを新山が張り付けられるのはさけなければいけない。

 被害を食らうのは俺だけで十分だ。

 俺と同じような経験をさせてはいけない。


 だが彼女の言葉は止まらない。


 「あなたが少しでも()()()()()。というのはわかったわ。誰でも迷っていること。困っていることは少なからずある。だからそれを私たちに相談しに来たのはいいことだわ。でも得策とは言えないわよ。そちらの身近に関係することならまずは一番仲のいい人たちに相談するべきよ。いくら茎根さんの紹介といっても私たちは関わったことのないただのクラスメイトよ? 赤の他人といっても過言ではないくらいの関わり。そんな人間に対し一言二言話しただけで心を許したように、仲良くなったように感じてるなんて馬鹿なんじゃないの? 敬語くらい使いなさいよ」


 「…………」


 「まだそうやって黙るの? そうやって黙るのなら私たちに相談したときみたいにオドオドしながら喋ればまだ私の気を引けたかもしれないのにね。 しゃべらなくて静かにしていれば私があきれて何も言わなくなると思う? 私はおしゃべりなの。だから()()()()()()、あなたが泣き出しても。私の話を聞かないようにしても。明日になっても。ずっと。ずっと言い続けるかもしれないわね」



 なんて気兼(きが)ねなく、忌憚(きたん)なく告げる新山に俺は恐怖を覚えた。

 相手にしなくてよかったと心から思う。



 「はぁ。もういいわ。私の話はこれで終わりでいいわ。帰りたかったら帰っていいわよ? どうせ今日はもうやることはないし。今日こんな目にあってもまだ私達を、私達しか頼れないというのなら明日の放課後、()()()()をもってここに来なさい。解決策を持ってきてあげるわ。」


 新山は河頼に半目で、見下すようにそう言った。

 河頼は椅子から立ち床に置いていたカバンを拾いこの部屋から出る。

 その表情は暗かったが泣いてはいなかった。



 「なあ。ちょっとやりすぎたんじゃないか?」


 「何言ってるの。昨日のあなただってこんな感じだったわよ。」

 

 「いやお前ほどひどく言ってねえよ」


 「女の子からしたら男の子の怒鳴る対象となるのは男の子が思ってる100倍怖いのよ。精神的には私のほうが嫌だったと思うけど圧倒的に恐怖を与えた大きさはあなたのほうが大きいわよ。その証拠に昨日は泣いて今日は泣かなかったじゃない。」


 「むう……確かにそうだな……」


 「そうなのよ」


 「だがお前いいのか? キレて理性の調整が聞かなくなって「本当の自分」を出したよな? 普段誰にも見せない、俺にしか見せてない自分を見せてよかったのか?」


 俺にしか見せてないといったのは誤算だった。

 俺にしか見せてないというのは俺の勝手な思い込みで俺が知らないだけである。


 「あーまあいいんじゃないの? いつかバレるしもうあなたにバレているし。ただバレるのが早すぎただけよ。」


 「ま、まあお前がいいと思ってるならそれでいいんだが。てか河頼の件やり通すっていったじゃねーか。もし明日来なかったらやり通せないぞ」


 「だから解決策を持ってくるっていう餌を持ってくるって河頼さんに告げたじゃない」


 「それでも来ないかもしれないだろ」



 「来るわ」


 「いやだからわからんだろうに」


 「来るわ」


 「いやだから」


 「絶対に来る」


 「……」


 絶対的自身を持ちそう言い続ける彼女に俺は呆れてしまった。



 なぜこんなにも簡単に信頼できるのだろう。



 いや……信頼ではなく()()しているのか。


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