ここで俺は河頼美奈のことをどうしようもない奴だと感じた
放課され俺は何をするでもなくただ部室に向かった。
河頼が来てくれることを願うのではなく直接呼び出しり、茎根や新山に呼び出してもらえればいいのだが。
俺の心境的にも今日の河頼的にもそれじゃだめだ。
先日河頼は話題作りのために人を馬鹿にする発言をやめたいと相談してきたが。
俺の言葉で傷つき。
そのことを今日「すべて逃伊埼が悪い」という風に話していたことで俺は
こいつ本当に直す気あんのか
と。
それでも俺は新山と約束した。
いや、仮契約か。
河頼の問題を解決すること。
解決するためには俺や新山がどれだけ頑張っても意味がない。
河頼自身が本気で変わろうとしなければならないのだ。
だから俺は待たなければならないのだ。
コンコンコン………
ドアのノックに俺は気を引き締める。
……が入ってきたのは新山だった。
「はぁ、なんだお前かよ」
「河頼さんじゃなくてごめんなさいね。」
「でもあなたと一対一にさせるわけにはいかないじゃない。この世の中に先日キレられた男と二人っきりで同じ内容の話をしたいと思う女子がいると思ってるの? いるとしたら相当なマゾヒストか三歩歩けば忘れる鶏くらいなものよ」
「鶏に何言ったって言葉が通じないから覚えるものすらないだろ」
「言葉が通じなくたって怒鳴なれれば鶏にだってストレスがたまるでしょう。そしてストレスが強くなりサルモネラ感染などのリスクが高くなるわよ」
「鶏が三歩歩けば忘れるんならストレスすら忘れるんじゃないのか?」
「ストレスはたまるものよ。昨日のあなたのようにね」
「……」
「発散する相手がいないからたまっていくのは仕方がないけどそれを初めて話した人にぶつけるのはどうかと思うわ」
「昨日のことを掘り出してくんなよ……」
「それにたまってたものの一部はあいつのせいでもあるから八つ当たりという風にぶつけたわけじゃないだろ」
「ぶつけたことは認めるのね?」
「……ああ、ぶつけたよ。ぶつけました。確かに僕はたまってたストレスを河頼にぶつけてしまいました。これでいいかよ」
新山は、ふふっ、っと微笑して
「これで気も緩めれたかしら? あんまり張りつめなくてもいいと思うわよ。」
「今回はちゃんと私も手伝うんだから」
新山は俺のためにどうでもいい話をして、この後起こりゆる自体のために気を休ませてくれたのか。
「……ありがとな」
「どういたしまして」
「んじゃあ河頼を待ちますかぁ」
俺が
んーー
と身体を伸ばしながらそういうと
「あのもういるんだけど……」
空気が固まるのをかんじた。
いったいいつからいたんだ。
というかどこから聞いていた。
「お…おいお前……いったいいつから……」
「え、少し前かな……」
「少し前とは……?」
「相談室前に来てなんか話してたっぽくてはいれなかったし内容もよくわかんないけど、「鶏」がどうとかきこえたよ」
結構前からいたんじゃねえかぁぁぁぁぁああああ。
内容聞かれてないだけよかったよほんと。
「あのそれで相談が……」
「あ、ああ。そうだ………な……?」
あれ、なんで普通にしゃべってるんだ。
俺はあまり気にしないがこいつにとって俺は嫌いな対象だろ。
あまり関わりたくないはずだろ。
まさかこいつ………
鶏なのか!!!!
「河頼さんどーしたの? 機嫌いいみたいだけど?」
はい出た「いい人モード」
切り替えが早すぎる。
「ん? やっぱりそう見える? うふふ」
「うん。とっても嬉しそうな感じ」
「実はね~ついさっきまで是留舵君と二人で恋バナしてたんだ~。是留舵君の好きなタイプとか知れて努力できる目標ができたって感じなの~えへへ」
「やっぱり河頼さん岡山君のこと好きだったんだ~。前来た時岡山君のこと気にしてたようなこと言ってたからそうなのかな~って思ったんだよね~」
「え?! うそほんと?? 全然覚えてないんだけど~。無意識って怖~い」
「怖いね~」
そうやって二人が話し合ってる中俺は話に入らず心の中で
あの。
俺の存在忘れてませんか。
いや知ってたよ君が岡山君のこと好きっだってこと。
知ってたけどそういう話を唐突に始めるのは違うと思うよ。
それに何のためにここに来たんだよ。
確かに上機嫌の理由は知りたかったけどさりげなく前の時の話を挟んで俺をビクビクさせるのやめてほしいんですけど。
話始めたいんですけど。
とね、思ってるわけですよ。
それも知らずに彼女たちは
「いつも一緒にいる赤鬼君や柳君とはどうなの?」
「赤鬼君はね~優しくてやるときはやるんだけど、もうちょっと痩せてほしいかな~。顔の肉を落としてほしい。柳は幼馴染だからそんな風に見れないし今は是留舵君一筋だからね!」
「いいね~幼馴染も一筋も。二人ともサッカー部で一年なのに前の大会でベンチ入りしてたらしいね」
「そうそうそうなんだよ! も~サッカーしてる姿ほんとかっこよくてね~あの二人が一緒にプレーしてるところ見たらきっと新山さんも惚れちゃうよー。三年生になったらキャプテン副キャプテン確定だねあれは。あ、でも是留舵君は渡さないからね!」
「…………あー……そうかもね。ははっ」
一瞬新山の顔が曇ったのを俺は見逃さなかった。
「新山さんも惚れちゃうよ」
という部分で。
そんな感情もったことないから困ったんだろう。
いつも思われるばかりで人のことを思ったことがないから。
てかほんといい加減あの話しないの?
しないなら俺空気だからいてもいなくても変わらないからかえりたいんだけど。
「それで河頼さん。本題に移り変わるけど今日来たのは先日の話の続きってことでいいんだよね?」
ナイス新山!
河頼は思い出したように
「あーうん。そうなんだよ。昨日はそこに居座ってる男のせいで話が中途半端に終わっちゃったけど一日たったし色々案考えてきてくれてるんでしょ?」
…………は?
なんだこの女。
確かに俺が悪いというのは反省したよ。俺は。
でもこいつ結局人任せじゃねぇかよ。
「逆に河頼さんは何か考えてきたり、何かしたりしたの?」
俺の機嫌が悪くなったのを感じた新山は俺の代わりに質問してくれた。
「え? 何もしてないし何も考えてこなかったよ?」
「それはなんでなのか聞いていい?」
作り笑いが引きつってるぞ新山よ。
お前もイライラしてるんだな。
「だって相談部なんだからこっちの相談をすべて解決してくれるんでしょ? 是留舵君や理香子たちに「河頼さんが何を言ってても仲よくしてあげて」とか私のグループの人の好きなこととか嫌いなこととかいろいろ聞いてに私に教えてくれたりしてよ。それくらい相談部なんだから全部そっちがやるのはあたりまえじゃん」
当たり前だと?
ふざけんじゃねぇ
さすがに頭に来た。
もう知らねぇこんなやつ。
自分の問題に対して考えもせず少しも行動しないとか。
新山や茎根には悪いがこんな救いようのないやつ、崖に落としちまえばいいんだ。
そうするために俺は行動に移る。
「おい」
「ねえ」
同じタイミングで発された言葉は、俺とさっきまでへらへらしていた河頼の顔を固まらせるほど低く冷たい声だった。
「こっちがおとなしく話を聞いていれば都合のいいことばっかり。あなたちょっと調子に乗ってないかしら?」
その一言はこの場を凍らせるには十分すぎるほどの圧があった。
何故か。
それはあの新山が。
日頃猫をかぶり周りの人には「いい人」演じている新山が。
このとき俺ではない人物に『本当の自分』を出したからだ。