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世界は不条理である

 

 朝は憂鬱な時間だ。


 学校という名の監獄に自ら遅れず収監されるがために、自分の体にムチを打って起きなければならない。

 健康的には朝食も必要らしく毎朝食べているが

 お腹が減ったと感じない体質なので

 食べなくてもいいと思ってしまう。

 学生で部活もしてない俺からしたら

 脳を動かすためのブドウ糖さえ取っていればOK

 つまりコスパ的に食パンが最強である。

 味に飽きてもジャム塗って味変えるだけでいいからな。


 それにしても眠い。

 流石に睡眠時間2時間はきつい。

 あんな遅くまで本読んでるんじゃなかった。


 だが、読んだ価値はあった。

 そう思っているからこそ今は満足気であることと眠気とか混ざりあって気持ち悪い。



 朝ごはん食べれるかな。


 リビングに向かっている途中香ばしいいい匂いがしてくる。


 この匂いは...トーストか。

 リビングのドアの開けると

 そこでは姉こと鎖結(さゆ)

 朝ごはんを作っている。


 「おはよー鎖結姉」


 「お、愛人。起きたのか。おはよう」


 ニカッと笑う姉。

 いつ見てもいい笑顔だ。


 姉は基本的には誰にでも優しい。

 関係の深いものには特に。

 多分家族だったら何をしても怒らないだろう。

 逃伊崎家はみんな心が広いからな。


 当然俺もだ


 鎖結姉は友達も多くて親からの小さく簡単な願いを叶えている。


 うちの親は自分たちの願いを名前に込めたらしい。

 鎖結姉の名前の由来は

 鎖で結ばれる程の強く頑丈な関係を持て

 ということらしい。


 ちなみに俺の由来はそのままで

 人を愛せ

 らしい。


 うちの親はどんだけ人と関わり持ちたいんだよ。

 子供を、媚を売りまくる新人社員にしたいのかな。

 姉は由来どうり、弟は全くの反対に育ってしまってほんと申し訳ない。

 親不孝だな。


 だから時々小学生の頃仲良かったやつに家に遊びに来てもらって友達いますよアピールしている。

 実際俺は仲良いと思っているし。

 呼んだら来てくれるから唯一の友達であることは間違いないだろう。



 「食べないの。冷めちゃうよ」


 おっとこんなこと考えてたら朝ごはんが準備されちゃってるじゃないか。

 頂こう


 「いただきます」


 そう言いトーストを頬張った。


 んーこのサクサク感。

 さいこーだな

 これを食べたあとにもうひと眠りできたらもっと最高なのにな。



 「ん、鎖結姉は食べないの?」


 ソファに座り携帯をいじっている姉にそう聞いた


 「つまみ食いしちゃって……もうおなかいっぱいなんだ。……てへっ」


 舌をぺろっとだし、手で頭をコツんっと可愛こぶる姉。


 「あーそうなの」


 塩対応で返す俺。

 こんなもの日常だ。



 姉というのはどれだけ可愛くても、綺麗でも、

 年上好きであっても

 まったく何も感じないものだ。

 家族だからかな。

 もしこれが幼馴染みとかだったらなんか変わってたのかな。

 いやおれにかぎってそんなことはないだろう


 「鎖結姉大丈夫なの? 時間。そろそろ友達が迎えに来る頃じゃない」


 「あ、ほんとだ! やばいやばい」


 そう言ってパジャマを脱ぎ投げつけてくる。


 飯食ってんだからやめてくれよ。


 下着姿で決して大きいとは言えない胸が露わになっている。

 スタイルもいい。



 ……でもやっぱり何も感じない

 こんなもんなんだよ現実は

 アニメのように姉や妹と恋に落ちる

 ランデブーエンドなんて存在しないものだよ。



 制服姿に着替えた鎖結姉は

 俺の方に向かって笑顔で


 「行ってきます!」


 と元気よく言って家を出た。

 あの元気な所は猫かぶってる時の新山に似ていた。


 さて朝ごはんも食べ終わったし俺もそろそろ準備をするか。

  制服に着替えバックを背負い靴を履く。

 そして家から一歩目を出しながらこう言った。




 さあ今日も残酷で残念の1日の始まりだ。





 かっこつけた矢先に虫が耳の真横を通り


 「うぇ〇✕△」


 と言語を話せないほど驚いた。

 目の前にいた集団登校している小学生がこちらをじっと見ている。



 いや待って、流石に今のは誰でも驚くでしょ?

 だからそれをわかって、察してお願い。


 と、一秒ほどしたあと彼らは笑い出した。



 やだなーもう

 一番前の子なんか指さしてくるじゃん

 お母さんに言われなかったのか

 人に指さしちゃいけません!

 って。


 俺の気持ちも知らずにゲラゲラ笑っている。


 あーもう恥ずかしい

 穴にあったら入りたい

 小学生が行くまで手で顔を隠していよう

 顔赤いと思うからね



 心の中でこう叫ぶ

 なんで朝からこんな事起こるの!

 可愛そうだよ俺!

 もう! ほんとに怒るよ!


 ・・・起こると怒るをかけたんだ。



 ………てへっ


 そんなしょうもないことをしているうちに小学生は行ってしまった。


 ほらもう残酷で残念の1日の始まりが始まったよ

 別に朝から嫌なこと起きなくていいのに……

 幸せで安全な時間をくれよ




 今日も逃伊崎愛人は不幸な一日を送るだろう。




 とてつもなく不平等で不完全な世界に生きる彼に安らぎを。



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