プロローグ
……ああ、そうか。僕はこれから死ぬのか。
十八歳の夏、まさに受験シーズン。僕は廃ビルの屋上にて短夜の風を浴びていた。
飛び降りればすべてがなくなる。嫌な経験も、嬉しかったあの日の思い出も、僕が生まれて初めて感じた両親の温もりも。全部が全部——なくなる。僕の中では。
そういえば、中学時代思いを寄せていた彼女は元気にしているだろうか?
そういえば、最近どこかに引っ越した隣の頑固おやじはまだ生きているだろうか?
そういえば、僕を嬲ったクソ共はとっくに死んだだろうか?
……いや、どうでもいいことだな。
何せ、僕は今から死ぬんだ。思い返したって、掘り起こしたって、それは意味のない徒労だ。
彼女も頑固おやじもクソ共も。みんな揃って僕の中からさよならだ。
だから、後は安心して死ぬだけ。少しだけ勇気を出して、ここから飛び降りればそれでお終い。
僕は体を理に預ける。重力に任せる。
「……さよなら、こんな世界」
そのまま頭から落下。地面との接触までおよそ五秒。
そうだな、せめての報いで異世界転生なんてないだろうか。少しだけ夢見てたし。
よくあるよな、小説とかアニメなんかで。
うん、勿論できればでいいけどさ。……欲を言えば、穏やかでほっこりとしたそんな生活が——。
グチャ。
……………………。
………………。
…………。
……。
こうして僕——小野瀬 庵の人生は終わりを告げた。
おそらく、ピリオドには自殺の二文字が添えられることだろう。赤い字で……。
書きたかった異世界転生ものです。
評判が良ければ続きも出していきたいと考えています。
とりあえず今日はプロローグということで、ごかんべんを!
おっと、早く寝ないと大きくなれない(/・ω・)/