異世界召還された僕
楽しんでいただけたら幸いです。
僕、伝助十五歳、四鷹って所にお母ちゃんといっしょに住んでいたんだ。
お母ちゃんと一緒に朝のお散歩をしていたら赤なのに三歳くらいの女の子が飛び出していた。
横を見れば大きな車がすごい速さで近づいて来た。お母ちゃんの手を離れ、女の子に体当たりをして救出した。あ、でも駄目だもう車は目の前だ。お母ちゃん。お父ちゃんが死んでから僕にべったりだったけど。お別れが少しだけ早くなっちゃうね。ごめんね。
ものすごい衝撃が僕を襲って僕は思いっきり吹き飛ぶのだった。
淡く優しい光が僕を包み込んでいる。なんだろうか? わからない。
「~~~」
何か良くわからない言葉が僕に向けられているけど何だろう? あ、でも、なんだか光に包まれていく。
「どうですか? 翻訳魔法を使ったから私の言葉がわかると思いますし、話せると思うのですけど?」
光が収まると目の前に女の人がいる。
「わかるよ。うん」
「そう、良かった。私の名前はシャクヤ、あなたの名前は?」
「僕? 僕の名前は伝助」
「デンスケっていうのね、私は魔王を倒す旅をしているんだけど、ある遺跡を調べたら召喚魔法っていうのを見つけたの、それでそれを使ってみたんだ。説明だと別の世界から死んだ魂を呼び寄せるって聞いたんだけど?」
「うん、僕死んだよ。多分。そっか、それで僕を呼んでどうするの?」
「その、契約をして、私と一緒に魔王を倒す旅をして欲しいんだ」
シャクヤが僕にそうお願いしてきた。うーん、でも。
「僕、喧嘩なんてしたことないよ?」
「そうなの? そんなに大きな体しているのに?」
大きな体? 僕の体は普通位だったと思うんだけど……。
「えっとね」
シャクヤが本をパラパラとめくる。
「あ、あった。召喚されると死ぬ前よりも強い体を手に入れるって書いてある」
「そっか、そうなのか、じゃあシャクヤが小さいんじゃなくて僕がおっきいんだ」
「そうだね。そうだ、確認してみればいいよ、鏡の魔法」
シャクヤがそう言うと目の前に鏡みたいのが現れた。
そこには僕の姿が映し出されていた。
えっと、うん、本当に僕おっきく成ってる。前の体より、一回り、二回りどころか、倍近いよ。鏡の横に数字が書いてある。どれくらいの大きさかわからないけど体高百七十くらいか。
あれ? 今の?
「今のなあに?」
「今のって、鏡の魔法よ。自分の姿を映し出す鏡を呼び出す魔法よ。女の子だったら必需品の魔法よ。こんなガサツでも、勇者やってても女の子なんですからね」
「ごめんなさい。うん、そうだよね。お母ちゃんも鏡の前で髪を整えるのはのは毎日していたし」
「そうよ」
シャクヤがぷりぷりと怒り出してしまった。
「って、そうじゃなくて魔法って?」
「ん? もしかして魔法を知らない?」
「知らない」
「そうなの、じゃあちょっとだけ見せてあげる。火の玉」
シャクヤがそう言うとシャクヤの手の前から火の玉が飛び出た。
「火の玉」
僕が真似してそう言うと体から何かが飛び出る感覚があった。そして僕の目の前に火の玉が現れて消えた。
「すごいすごい。デンスケすごい。ねえデンスケ、やっぱり私と契約して一緒に魔王討伐の旅に出ましょう」
シャクヤが抱きついてきた。ちょっと恥ずかしい。
「うん、こんなにすごい力があるんなら僕、シャクヤに協力する」
「ありがとうデンスケ、じゃあ契約魔法使うね」
「うん」
そう言ってシャクヤは呪文を唱えて僕と契約した。一応シャクヤが主人で僕が従の契約魔法だ。
「よろしくねシャクヤご主人様」
「よろしくねデンスケ」
ご主人が僕の頭を撫でてくれた。
こうして僕とご主人との旅が始まった。
最初はいろいろ大変だったけどすぐに慣れた。
ゴブリンとか、オークっていう敵が出てきたが、僕のパンチ一発で吹き飛んでいった。
木のお化けは硬いから火の玉を使って燃やす。
ご主人が水流と土の弾という魔法を教えてくれた。
夜は火を前にしてご主人と一緒に寝て、敵が来れば僕が起きてご主人を守る。
ご主人が持っている本は勇者の本と言われていて、次に向かう場所を示してくれるらしい。
ご主人と一緒にいろんな所へ行った。
海の上でイカの化物と戦ったり。とある遺跡でオーガっていう巨大な化物と戦ったり。
ある日、本に導かれて行った遺跡で試練を攻略して本のページが埋まったらしい。
ご主人がそのページを読んで僕を呼んだ。
「えっとね、これは使い魔の為のページなんだって、このページを開いたまま使い間の頭に触れればいいのね」
そう言ってご主人は僕の頭を撫でた。
僕の中に何かが入り込んでくる感覚がある。なんだろうこれ……。(お友達召喚)
えっと、前の世界のお友達をちょっとの間だけ召喚出来る。なるほど。
「デンスケ使えそう?」
「うん、大丈夫」
「そっか」
ご主人はそう言ってにっこりと笑ってくれた。
とある日、僕達はピンチだった。
いつもなら弱いゴブリンだけど、今日はそいつらが千匹以上いる。
倒しても倒してもキリが無い。
「大丈夫デンスケ?」
「大丈夫だよ。そうだ、こんな時に使うんだ、よし! 召喚」
あ、でも、誰にしよう……。お友達、強そうなお友達。そうだ、イーガサラ公園でお友達になった華ちゃんを呼ぼう。
「華ちゃーん」
僕がそう叫ぶと光が集まって大きな塊になって形作られていく。
「その声は伝ちゃん?」
「そうだよ華ちゃん」
僕が大きくなったから華ちゃんは気づかないけど華ちゃんの体もすんごく大きくなっている。
「華ちゃん、助けてあいつらに囲まれて大変なんだ」
僕が顎を向けると華ちゃんはそっちの方を見た。
「すごい沢山ね、伝ちゃんがしている怪我はあいつらにやられたの?」
「うん」
「わかったわ。いくわよ」
華ちゃんはその大きな体を震わせてゴブリン達に向かっていった。
ゴブリン達は華ちゃんの体に押しつぶされ引き潰されていった。
さすがの敵も華ちゃんの大きさと力に恐くなって逃げ出して行った。
「デンスケあれは?」
「お友達の華ちゃんだよ。この間の遺跡で手に入れたお友達召喚を使ったんだ」
「そ、そう」
ご主人が冷や汗をかいて、笑顔が引きつっている。
「それよりも華ちゃんと一緒にあいつらを殲滅しよ」
「そうね」
僕とご主人と華ちゃんでゴブリン達を追って全滅させることに成功した。
「ありがとう華ちゃん」
「いいのよ伝ちゃんの頼みなんだから。あれ? でも、私死んだはずじゃあ? それに体も若い頃のように良く動くし」
「それはね」
僕が説明しようとすると華ちゃんの体が光輝きだした。
「あら、駄目ね、そっか、伝ちゃんが私を呼んでくれたのね?」
「うん、また危なくなったら呼んでいい?」
「いいわよ、沢山呼んで、伝ちゃんの頼みならいくらでも叶えてあげるから、それに若い時みたいに動けるのはうれしいし」
「わかった。またね」
「またね」
そう言って華ちゃんは消えていった。
僕とご主人の旅は一年続いた。
たまに華ちゃんに助けて貰いながら敵を倒してついに魔王の城までたどり着いたのだ。
「これが魔王城ね。でも、城門が開かないわね」
押しても引いても門はびくともしなかった。ためしに僕が体当たりしても動かない。
「ここは華ちゃんに頼むしかないね。華ちゃーん」
「はーい、伝ちゃんお待たせ」
「あの門を壊したいんだけど」
「私におまかせー」
華ちゃんの大きな体での体当たりで門は簡単に壊れるのだった。
それから城の中を華ちゃんが壊しながら突き進んだ。
出てくる敵も華ちゃんにひき潰され、押しつぶされ、それに逃れられた敵も僕のパンチやご主人の勇者の剣の一撃で倒されていく。
「良く来たな勇者とその使い……」
偉い人の座るいすに座っていた人がなんか行っていたけど華ちゃんの体当たりで壁に叩きつけられちゃった。
「ふ、我は不死身だそんな攻撃」
なんかさっきの人生きていたけど、足がぷるぷるしてる。
「魔王はこの剣でしか封印出来ないのよ。ありがとうデンスケ、ハナちゃん」
ご主人はそう言って足がプルプル震えて動けない人を串刺しにしていた。
「魔王を倒したわ。ありがとうデンスケ、ハナちゃん」
「あら、シャクヤさん、どういたしまして」
「華ちゃんありがとうね」
「伝ちゃんまたね」
華ちゃんが消えて僕と主人は主人の生まれ故郷へと帰っていったのだ。
その後、僕は教会といわれるとこの総本山っていう所で住む事となった。
たまに主人が会いに来てくれるし、ご飯も毎日神父さんがくれる。
魔王ってのを倒してからどうも体の調子が悪くなってきた。
そっか、前の世界だと僕もうおじいちゃんだったし、体が魔王退治の為に若くなっていたのか。
華ちゃん、もうすぐ僕、華ちゃんのところへ行くね。
勇者と契約し、勇者と共に魔王を倒した神犬デンスケは魔王討伐の一年後に眠るように亡くなった。
勇者シャクヤはその死を悲しみ、一年間喪に服したという。
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感想をいただけるとれしいです。
批判もどんとこいです。
お母ちゃんと呼ばれていた人は人間のおばあちゃんです。