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ヴィーナスドライヴ  作者: 庵字
第12話 セクシャルヴィーナスナンバーワン
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ヴィーナスドライヴ全員集合

 夕食の時間となり、全員はレジデンスの食堂に集まった。

 カウンターの中でレイナは食堂内を見回して、


「総勢十九人。ヴィーナスドライヴ、全員集合したわね」


 食堂はテーブル席、カウンター席全て埋まり、レイナ、タエ、アキの三人はカウンターの中のテーブルに食事を並べていた。


「ということで、食事の前に、啓斗(けいと)とコトミに合流したメンバーの自己紹介をしてもらうわ」レイナは新たに加わった五人の顔を順に見て、「パーソナルナンバーの若い順に、まず、アイリから」

「はい」


 レイナに促されて、アイリは椅子から立ち上がった。


「アイリ」アキが声を掛けて、「年齢も言うんだぞ」

「えー、そうなんですか? まあ、いいですけどー」アイリは、こほん、とひとつ咳払いをして、「アイリです。ルカの補助で看護師をしています。料理が得意なので別働隊では救急と日々の食事、家事も担当してました。パーソナルナンバーは〈12〉年齢は十七歳です」

「あ、俺と同じだね」


 啓斗が言うと、アイリは、うふふ、と笑った。続けて啓斗は、


「でも、十七歳で看護師になれるの? この時代は?」

「この時代というか、戦時下でしたから特例みたいなもので」


 アイリの答えに、啓斗は、


「ああ、そういうことか」


 と納得した声を出した。アイリが座ると、


「次は、私だな」チサトが立ち上がり、「チサト。アキの下でエンジニアやってる。トライアンフの最終調整は私がしたんだ。パーソナルナンバー〈13〉の年齢十九歳。よろしく」

「チサトは、アキさんのことを師匠って呼んでるんだね」


 啓斗が言うと、チサトは、


「ああ、そうさ。アキは師匠だからね」

「その呼び方、やめろって言ったんだが……」


 アキは、ため息をついて言った。


「師匠は師匠じゃん」


 チサトは意に介した様子もなく答えた。

 チサトが座ると、次にリノが立ち、


「リノです。トライアンフの操縦を担当しております。パーソナルナンバーは〈17〉年齢は二十五歳です。どうぞよろしく」


 そう言って頭を下げた。


「リノ、きれい」コトミが声を上げ、「お嬢様みたい」

「あらあら、ありがとうございます」


 リノは手を口元に当てて笑みを浮かべ、コトミに向かって頭を下げた。


「確かにリノって、お嬢様っぽいな」と啓斗も言って、「そうなの?」

「うふふ、秘密です」


 リノは、それには答えず椅子に座った。


「次は、私か」ジュリが立ち上がって、「ジュリ。トライアンフの火器管制担当。パーソナルナンバー〈18〉の二十三歳。よろしく!」


 そう言って啓斗に向かってウインクした。


「よ、よろしく」


 啓斗は、そのウインクをもらい少したじろいで言った。


「何だよ-、啓斗、私のこと嫌いなのかー?」

「そ、そんなこと! 嫌いとかじゃなくて……」


 不満そうな声で言ったジュリに、啓斗は返した。


「ふふー、でも」と、ジュリは身を乗り出して、まじまじと啓斗の顔を見つめると、「レイナ、いい子を拾い上げたね」

「何が?」


 レイナが聞き返すと、ジュリは、


「聞いてた通り、いい男じゃんか」


 そう言って、もう一度啓斗にウインクを投げた。


「はは、ど、どうも……」


 啓斗は赤くなって頭を掻いた。それを見たミズキとコーディは、むっ、と口を尖らせた。


「最後は、私!」ソーシャが立ち上がって、「ソーシャ。戦闘員。パーソナルナンバー〈19〉年齢十六歳。よろしくぅ!」

「ソーシャ、昼にも年齢聞いたけど、俺より若いんだね。それなのに戦闘員やってるなんて」


 啓斗が言うと、ソーシャは得意げな顔になって、


「ふふふ、アイリもだけれど、戦時下では年齢がどうのこうの言っていられないからな。私が来たからには、もう安心だぞ」

「何言ってるの、あんまり調子に乗らないでね」


 カスミが言うと、それに続いてコーディが、


「啓斗、ソーシャは、ちょっと、おっちょこちょいなところあるけど、根はいいやつだから」

「はい、ソーシャがおっちょこちょいなのは、もうわかってます」

「啓斗ぉ!」ソーシャは座りかけたが途中でまた立ち上がり、「そう言えば、まだ約束を果たしてもらってないな!」

「だから! 約束とかしてないから!」

「ソーシャ」と、ミズキが割って入り、「別行動してるときも、きちんと走り込みはしてたの?」

「そ、それは、もう……」

「どうなの? リノ」


 ミズキが訊くと、リノは、


「はい、さぼりがちでした」

「リノぉ!」ソーシャはリノに向かって叫んだ。


「はいはい、ここまで」レイナが手を叩いてソーシャを鎮めて、「この五人が加わって、ヴィーナスドライヴ全員集合よ。啓斗、コトミ、この五人も含め、改めてよろしくね」

「はい!」


 啓斗とコトミは揃って返事をした。


「じゃあ、いただきましょう」


 レイナの合図で十九人全員は一斉に「いただきます」をして食事にかかった。


「タエの料理、久しぶり。やっぱり美味いな」


 ジュリは、ご飯とおかずをかき込みながら満面の笑みで言った。


「ふふ、ありがとう」タエも笑顔になって、「別行動してたときも、ちゃんと三食食べてたのかい?」「うん、アイリがご飯作ってくれてたし。あ、アイリのご飯も美味しかったぞ」

「気を遣ってくれてありがと」アイリは笑って、「でも、こうして食べてみると、やっぱりタエにはかなわないなー。プロなんだから当たり前だけどねー」


 アイリは、ひょい、と箸で切り分けた焼き魚を口に放り込んだ。


「アイリ、料理上手だった。手伝ってもらったんだよ」

「コトミ-、ありがとうー」アイリは隣に座ったコトミの頭を撫でて、「コトミも、すっかりタエの助手って感じだったねー。もう、レイナったら私がいない間に、こんなかわいい子を入れてー」


 さらにコトミの頬やら首やらを撫で回と、


「アイリ、くすぐったい」コトミは笑いながら体をよじる。


「はいはい」と、レイナは、「じゃれるのは、また今度。早く食べて。今日はみんな疲れてるから、早く寝るのよ」

「あ、そういえば、レイナ」カスミが箸を止めて、「工場の無事だった居住区に、お風呂があったわよ。レジデンスの浴室とシャワーは同時に三人くらいしか使えないから、工場のほうも使って分散して入るのはどう?」

「ああ、それはいいわね 」


 レイナが言うと、すぐにコーディが、


「じゃあ、啓斗、一緒に工場のほうに入ろうぜ」

「ちょ、ちょっと、コーディ、どうして……」

「なんだと?」


 コーディと啓斗の言葉に真っ先に反応したのはトライアンフ火器管制担当のジュリだった。ジュリは動かしていた箸を止めてコーディを見つめ、


「コーディ、お前、今なんて言った?」

「え?」コーディは味噌汁のお椀を置いて、「啓斗と一緒に風呂に入るって言ったんだけど」

「ルカ!」ジュリはルカを見て、「啓斗とは、一切の性交渉を持っちゃ駄目なんじゃなかったのか!」

「そうよ。気を付けるのよ」


 ルカは箸を止めないまま答えた。


「コーディは、一緒に風呂に入ると言ったぞ!」

「風呂くらいなら問題ないだろ!」


 コーディはジュリを睨むように見て言った。


「お前!」ジュリもコーディを見返して、「男と一緒に風呂に入ったら、普通するだろ!」

「そうとは限らないだろ!」

「ていうか、お前、なに普通に、一緒に入る、とか言ってるんだ!」

「もう一緒に入ったことあるから」

「な、に……?」ジュリは、ガタリ、と立ち上がると食堂を見回して、「ま、まさか、みんな?」

「大浴場をやったときによ」


 レイナの言葉を聞くとジュリは、


「啓斗! 私と入ろう!」

「ええ?」

「駄目だ」コーディも立ち上がって、「先に言ったのは私だ!」

「じゃあ、三人一緒にっていうのは?」

「望むところだ」

「レイナ!」


 二人のやりとりを赤い顔で聞いていたミズキは、たまらず、といったような声を上げてレイナを見る。


「はいはい、二人とも」食事を終えて「ごちそうさま」をした直後のレイナは、「仲良く一緒に入るのよ」

「レイナ!」ミズキは、さらに声を上げる。


「まあ、いいじゃない。みんな連日の戦いで疲れてるんだし。いいリラックスになるんじゃない?」

「リラックスって……」ミズキはレイナからコーディとジュリの顔に交互に視線を移して、「わ、私も入るから!」

「ミズキ!」啓斗が叫んだ。


「ねえ、カスミ、工場のお風呂って何人くらい入られるの?」


 マリアが訊くとカスミは、


「うーん、そうね……八人くらいはいけるんじゃない?」

「よし」と、それを聞いたジュリは、「私、啓斗、コーディ、ミズキ、これで四人」

「私も入れてよ」


 マリアが口を挟んできた。


「ちょっと、よろしいですか」一連の会話を聞いていた、トライアンフ操縦担当のリノが、「ここは、私たち別働隊を優先してもらうべきだと思います。他の皆さんは、もうすでに啓斗との混浴を済ませているのでしょう? 不公平ですわ」

「賛成ー」と手を上げたのは看護師のアイリだった。


「そういうことになると、だ」エンジニアのチサトは指を折って、「別働隊だった、私、アイリ、リノ、ジュリ、ソーシャ、これで五人。啓斗を入れると、残り枠は二人しかないぞ」

「私は、どうあっても入れてもらうぞ。この席で最初に啓斗と風呂に入ると言い出したのな、私なんだからな!」


 コーディは胸を張って言った。


「わ、私も、ジュリとコーディの次に、入るって言った……」


 ミズキも顔を赤くしたまま主張する。


「えー、何よー」マリアは口を尖らせてソーシャに向き、「ねえ、ソーシャ、譲って」

「ダメー」ソーシャは即座に答えた。


「よし、これで決まったな」ジュリは満足げに頷いた。


「そうと決まれば、さっそく行くぞ!」


 コーディは、完食した食器の載ったトレイを手にカウンターの中に走った。他のメンバーもトレイを手に続く。


「啓斗、まだ食べてるのか? 私が手伝ってやる」


 啓斗の近くに来たチサトは、啓斗の食事皿に残っていた焼き魚の切り身を指で摘み、自分の口に放り込んだ。啓斗以外の七人のメンバーは全員食事を終え、トレイも片付けて待ち構えている。チサトが切り身を食べたことで空になった啓斗のトレイをミズキが手に取り、流しまで運ぶ。コーディとジュリは、それぞれ左右に立ち啓斗の脇に手を入れて啓斗を立たせた。


「さあ」

「行こうぜ」


 左右からステレオでコーディとジュリが啓斗に言った。


「ちょっと待て!」その前にアキが立ちはだかった。


「な、何だよ、アキ」ジュリは、腕を組み足を広げて立つアキに気圧されるように言った。


「私も行こう」アキは、そういってメガネのブリッジを指で押し上げる。


「ええー? 何でだよ!」


 ジュリが叫ぶと、アキは間髪入れず、


「監督としてだ。このメンバー構成じゃあ、不安でならない」


 アキは啓斗以外の七人を見回した。


「不安って、何がだよ」


 ジュリの声にアキは、またしても即座に、


「お前らだけで混浴させたら、やるに決まってるだろうが!」


 アキは、ビシリ、と指をさして叫んだ。


「あら、失礼な」と、リノは頬を膨らませて、「私は、そんなこと。……まあ、他の皆さんがやるのを止めはしませんけれど。もちろん、その際には私もお相伴に与りはしますが」

「アキ!」と、ミズキが声を上げ、「そんなことするはずないでしょ! 啓斗と、や、やるってことは、世界を救う手立てがなくなってしまうということなのよ!」

「信用出来ないな」


 アキは、じとり、とした目でミズキを見た。


「な! わ、私……」ミズキは頬を染めて言いどもった。


「世界を敵に回しても、遂げたい想いがある」


 拳を握りしめてコーディが言うと、ミズキが、


「ほら! 冗談でもそういうこと言うから!」

「ああもう!」と、ジュリは、「何でもいいから、早く行こう! 私、ずっとトライアンフの調整と試運転で、もうストレスが溜まって溜まって……」


 ジュリは、鼻息も荒く啓斗の腕を引いた。


「監督、いるだろ」


 アキがミズキに言うと、ミズキもジュリを見ながら、「う、うん……」と、呟いた。

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