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世界救うとかどうでもいいから異能の力を授かって!  作者: A46
Chapter6. お昼の風景詰め合わせ(仮)
29/29

#29 胸を分けてくれたら

 12時40分。

 シルヴェストル学院に、昼が来た!


 大村家では各日昼休み、ある一人に重大な役割が与えられる。


 それは、四阿の確保だ。


 四角形に近い形で4つの校舎が建っているシルヴェストル学院には中庭があり、10ヶ所ほど四阿が建っている。

 4時限目に、一番四阿に近い位置(基本的には1階、さらに出口に近い場所)で授業を受ける一人がその四阿のうちひとつを確保すること。それが「役割」だ。


 4つの校舎のうち、Ⅰ学年からⅢ学年までのホームルーム教室があるA館(通称・中学棟)とⅣ学年からⅥ学年までのホームルーム教室があるC館(通称・高校棟)が向かい合っていて、そのA棟・C棟に沿って四阿がある。


 今年、Ⅱ学年からⅥ学年に在籍する6人の中で、ホームルーム教室が1階にあるのはⅥ学年である俺だけなので、クラス解体授業がほとんどと言えどやはり1階で授業を受ける機会の多い俺が大抵の日に四阿の確保にあたる。


 窓際から順に五十音順に席順が決まるこのクラスにあって、「お」の筆頭たる俺はギリギリ窓際最後列のいう素晴らしい席を得ることができた。


 なので、四阿確保の日にすることといえば——


 - 授業担当の教師の退室を確認。

 - 窓の外に人がいないか確認。

 - 窓を開け、靴を脱いで窓の外に。

 - 椅子に乗っかって、窓枠に手を掛け、

 - 窓の外にジャーンプ!


 ……と、このような具合で教室の窓を飛び越えて最速で中庭に出て、斜め左あたりの四阿の確保するのである。


 SWAのおかげで、窓枠に引っかかることなく軽々と飛び越えられるし、着地した瞬間には既に靴が履けた状態になっている。この異能の力、日常のライフハックにはなかなか便利だ。眼が光らなければもっといいんだけど。


 余裕で四阿を確保したので、妹たちに報告する。


 礼洋◆C2確保したどー


 C2。C館側・校門方面から数えて2つ目の四阿、という意味だ。

 そうこうしているうちに、妹たちが集まってくる。そう、大村家6兄妹は毎日このように集まって、昼食タイムなのだ。四阿と言う割には壁も屋根もしっかりしているので、小雨くらいなら変わらず四阿に集まることにしている。


「私が最後でしたか、お待たせしました」


 6人の中で最後に来たのが有彩。紙袋を抱えてきている。


 何を隠そう、これが大村家のお弁当である。どうせ一緒に食べるのだからと、6人分まとめて重箱に入れ、有彩が持っているというわけだ。


 12時40分から13時30分まで、50分間の昼休み。この時間は「学校が定めた休憩時間」であり、授業や課外活動は原則できない。生徒も教員も、休憩時間はしっかり休憩するのがルールだ。授業終了のチャイムが鳴り終わった時点で、いかに切りが悪かろうと教師はそれ以上授業を続けてはならない決まりになっているし、もし授業を延長しだしでも、生徒はそれを無視して弁当おっ広げたり学食に向かっていいことになっている。


 その他もろもろ、先生たち曰くだいぶ「大学に近い」制度をとっている学校らしい。特に、学年が上がるごとに規則が緩くなり、どんどん大学に近くなっていくとか。


 閑話休題、こうして昼休みに集まることで、同じ学校にいてもなかなか会うことのない兄妹が一堂に会するわけである。この結果として、平日は3食とも全員集まって、というのが基本だ。


「ほんと、弁当のことはいっつも任せっきりで申し訳ないな、言えば全然手伝うのに」

「いえいえ、好きでやってることなので」


 有彩が弁当を用意する横で紙皿と紙コップ2つずつを並べる。重箱のほかにお茶と汁物で魔法瓶が2つ用意されている気合の入れようだ。これをほとんど毎日ときてるから頭が下がる。


「それに、変にお弁当箱6個に分けるぐらいなら、こうやってまとめて持ってこれる方が詰めるのも洗うのも楽ですから」

「高い!嫁力が高すぎるよあーちゃん!わたしにも分けて!」

「胸を分けてくれたら考えてもいいよ?」

「辛辣……」


 花音の嫁力……正直、評価に困る。だが低いわけではない。洗い物とかよくやってるし、お粥とかうどん類とかの病人食はめちゃめちゃ効く。ただ、有彩や紗加が高すぎるのと、深月が壊滅的すぎるのでどうしてもそんな評価になってしまう。


「さーて、今日は誰か来るかな?」

 6人一緒に「いただきます」をして後、深月がなにやら楽しそうにそう言った。


 ご存知の通り大村家というのは6人兄妹で、現在はその全員がここ、シルヴェストル学院に通っている。

 だが、いつしか重箱の弁当は7〜8人前の分量になっていた。


 なぜか。

 いつの頃からか、6人兄妹のランチタイムには、いろんな学年からいろんな「お客さん」がやってくるようになったのだ。

 もちろん、6人のうち誰かと交流がある人ばかりだ。そして、その「お客さん」の分まで弁当が用意されている、という寸法である。

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