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世界救うとかどうでもいいから異能の力を授かって!  作者: A46
Chapter5. 問題。学校によって空気だったり独裁者だったり差が激しいポジションといえば?
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#28 この双子はなんでこんなに

「そういや有紗、あのゲームどう?進んでる?」


 なんとなく有紗に聞いてみる。

 双子らしく広めの部屋を板で仕切って使っている花音によると、ここ数日ずっと電気スタンドが点いているらしい。


「素手縛りで二週目を始めましたよ、気に入っちゃいました」

「……早くね?」

「金曜から土曜、土曜から日曜、火曜から水曜で早くも3回ほど徹夜をしてですね……」


 学年でトップクラスの成績をキープしていた優等生の有紗が、たった数日でそんな引きこもりみたいなことに……!?


「こういうときに優等生というのは楽です。授業中に寝てても怒られるより先に心配してくれますからね」

「授業中に寝てるのか……確かに珍しいな」

「徹夜に居眠りに、今週は初体験が満載ですよ〜」


 どうにかこれ以上堕ちていくのを食い止めたい。

 ちなみに、あとから篠崎さんに聞いたところ、こんな感じのやりとりがあったらしい。


 先生「妹の方はたまにあるが、大村の姉の方が寝てるなんて珍しいな、寝不足か?」

 有紗「すみません…高校の範囲ということで身構えすぎて遅くまで予習を……」(大嘘)

 先生「予習なんてほとんど皆やってないだろうし、ほどほどでいいんだぞ?…ちなみにこの問題分かるか?」

 有紗「はい、ちょっとまってください……( 正答 )ですね、おやすみなさぃ……」

 先生「また寝た……まあ分かってるみたいだしそっとしとくか……」


 やりとり、以上。


 この先生はⅠ学年から有紗と花音の学年を担任していたので、2人を「姉の方」だとか「妹の方」だとかで通している。なのだが、「姉の方」になりうる存在と「妹の方」になりうる存在がそれぞれ4人ずついるのが大村家なので、それをそのまま言われるとどうも混乱してしまう。


 というか教育者として下の名前をちゃんと覚えてあげてほしい。


「あーちゃんに対しては露骨に優しいんだね、わたしだったら教科書で殴られてる」

「花音は寝すぎなんだろ。あと男だとその殴る時に背表紙、ひどいとその角使ってくるぞ」


 Ⅲ学年あたりのとき、その先生の数学の授業に当たったことがある。その時の感じからすれば、多分花音は普通に表紙とかで殴られてるんだと思う。いや普通に体罰といえば体罰なんだが、本人も周囲の生徒も比較的面白がってるからまだもっているようなものだ。


「この双子はなんでこんなに成績に差があるんだろうね?」

「深月がそれを言うのか」



 大村家人々の成績は、大きく3タイプに分けられる。



 ①成績優秀タイプ。

 有紗とリコが該当する。特にリコは英語にめっぽう強く、Ⅴ学年時代の期末試験を解かせたら俺より点数が高かったくらいだ。スケボーのためにアメリカ留学を目論んでいるらしく、英語は特に力を入れてやっているみたいだ。そしてこの二人の共通点として、料理が上手いことが挙げられる。


 ②凹凸タイプ。

 他の科目と比べて異常に苦手な科目の存在するタイプで、俺と紗加がこれにあたる。俺は数学、紗加は英語がからっきしだ。特に紗加は、それを改善しようとリコに英語を見てもらったものの、どうやらかなりのスパルタだったらしくトラウマになってしまったらしい。


 ③ダメダメタイプ。

 残りの二人、すなわち深月と花音があてはまる。「とりあえず赤点回避」を目標に生きている方々。基本的に家で勉強しているところを見たことがない。かくいう自分も宿題と試験勉強以外してないけど。一応、深月は音楽と体育、花音は美術と主要科目外に得意科目があったり、花音は国語だけはできるのでまだ救いようはある、のか…?


 いつぞやの胸囲的な格差の話を覚えておいでだろうか。「胸の大きい女性は頭が悪い」なんていう失礼極まりない俗説があるが、「大村家の学業成績」に限った話をするとあながち間違っていなかったりするわけである。なので試験が返ってくる時期になると、有紗やリコから深月と花音(特に後者)に向けて「胸の栄養をもうちょっと頭に回したら?」、それに反抗して「ちょっと回すどころか頭に全振りしててなお"バランスよく配分する"とか考える頭もないの?」などといった暴言が飛び交うのが大村家の定例イベントである。そしてこれが始まると、関わり合いになりたくない俺は紗加を連れて遊びに行くのである。我ながらなんと無責任な。


 きょうだい喧嘩とか無い平和な仲良し6人兄妹だとでも思った?残念、それなりにあります!この前もそれぽいのあったしね。女社会こわい。

 でもSWAで鎮圧しやすくはなるかな。


「——生徒会長って、頭悪くても務まるんですか?」


 ——あっ。


「ん?どういうこと、有紗?」

「だって、だいたい生徒会長っていうと、成績優秀でスポーツ万能で美人でー、みたいな人がなってません?」


 あと、どっかしら抜けてるとこがある、ってのも日常系作品あたりでは定石だな。うちのは変態だし。というか我修院(あいつ)は「頭の良いバカ」の典型例だからなぁ。


「2つまでは当てはまってるでしょー」

「自分で自分のことを美人とか言っていくんですか…なんにしても一番大事なの抜けてるじゃないですか」


 何を言う有紗、俺の妹はお前含めて全員かわいいぞ。


「……へぇ?そんなに言うんだったら?わたしと生徒会長選挙で戦ってみる?成績優秀だけで保ってるどっちかっていうと陰キャラよりの有紗とわたしと、どっちが票を集めるか」

「嫌ですめんどくさい。というか、誰が陰キャラですが誰が。水球部のアイドルをナメてもらっては困りますね?」


「ときどきすごい仲悪いよねーこの二人」

 深月と有紗が言い合いを激化させつつある中で、花音か小声でそう話しかけてきた。


「花音だったらこの二人の生徒会長選挙、どっちに入れる?」

「学年のこともあるし、お姉ちゃんかな。あーちゃんは次の年で」

「2年連続で姉妹が生徒会長か、それもすごいな」

「どうせならわたしも入って、リコちゃんとすずちゃんにも声かけて生徒会ジャックするとか楽しそう」


 この姉妹なら文句言う人少なそう。特に男子は。


「——だいたい、姉さまがもうちょっと頭にステータス振ってれば、こんな言い合いせずに済んだんです」

「頭に、ってどこから?胸から?胸以外にも振ってるから!頭に全振りした有紗とは違うの!」


 あー、テンプレ入っちゃった。


「——面倒なので今日はそこには乗りませんよ」


 助かった。


「でもその代わり、姉さまが生徒会長に相応しいか、私が見極めます」

「へー、どうやって?」

「私も生徒会に出入りさせてもらいます。あの我修院先輩のことです大村姉妹の一員である私からお願いすればいけるでしょう」


 ゑ?

 ちょっと待って、また生徒会の人増えるの?しかも身内で?やめてくれよ……


「で?相応しくなかったらどうするの?」

「花音を選挙に出します」

「えぇ!?そこは自分で出てよ!」


 ごめん、今のは面白かった。


「別に花音出さなくたって、順平と真尋が出るだr」

「あの二人は論外です」

「あの二人から選べって言われるくらいならさすがに出てもいいかも…」


 あの二人。6人兄妹で一番優しいと言われる花音からもこの言われようである。


「——そういうことなので兄さま、我修院先輩に根回しをお願いしてもいいですか?私は連絡先がわからないので…」

「言うだけ言っとく。多分大丈夫でしょ、我修院だし」


 あぁ、もう男5人でバカやったりは出来なさそうだなぁ、こりゃ。


 このことを我修院に連絡するついでに、花音が言ってた大村家生徒会ジャックのことを話したら、「マジ?オレ今日から全欠席して留年するわ」だって。多分そうはならないからちゃんと卒業してくれ。

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