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世界救うとかどうでもいいから異能の力を授かって!  作者: A46
Chapter5. 問題。学校によって空気だったり独裁者だったり差が激しいポジションといえば?
24/29

#24 働かないでただ居るだけでも

「頼もう!!」


 その日は単なる暇人の溜まり場と化していた生徒会室に、深月の声がこだまする。


「おう、深月。お菓子食べに来たのか?」

「のんのん、もっと重要なお話をしに来たんだよお兄ちゃん。そこ座っていい?」

「深月、僕の隣も——」


 次の瞬間、真尋の頭をキューブ型の飾りがついたヘアゴムが直撃した。多分、体育のときだけ長い髪を結ぶのに使っているものだろう。


 ともあれ、深月は真尋を無視して俺の右隣の席に座った。


「——んで、今日はどうしたんだい?」


 深月の正面の位置に移動してきた我修院がそう切り出す。ちなみに、机の配置は細長めのロの字形だ。

 こういうときだけ妙にしっかり会長っぽいのがなんかムカつく。


「生徒会に入りに来ました」


 そして、予想外の一言が放たれた。


「お、おう……規定的には問題ないけど、なんでまたこんな急に?」

「理由は二つあります」


 我修院の問いかけに応え、一呼吸置いて深月が話し始めた。


「まず、こいつらを——」


 こいつら——両腕を伸ばして二人を差す。

 阿久比順平と進藤真尋、生徒会のⅤ学年組だ。


「こいつらを、次期生徒会長にさせるわけにはいかないからです!」


 分からないでもない。しかしその言い方は——

 と言いたかったが、深月の目は真剣そのものであった。


「そして、こいつらのどっちかを生徒会長にさせない為にどうしたらいいか考えて——気づいたんです。自分自身が生徒会長になることだ、って」


 まさかね。


 まさか、妹が生徒会長になるなんて言い出すとか思ってなかったわけです。


「え、ちょ、深月?なにその話聞いてないんだけど」

「言ってないもの」


 レギュレーション!レギュレーション違反ですよお嬢さん!

 "隠し事はしない。大事なことは皆で決める"

 忘れたんですか深月さん!?


「なるほど……まぁねえ、気持ちも分からんでもないよ。特に真尋なんて、Ⅴ学年の女子からの人気度においては右に出る者しかいないからねえ」

「そんなにはっきり言わないでください、いくら僕でも傷つきます」

「自分が学年の女の子につけた傷を数えろ」


 最後のセリフの発言者、我修院だと思うでしょ?深月なんだなこれが。

 真尋に対しては安定のこの態度。こんな言葉遣い、家では怒っててもしないのに。


「いずれにせよ、だ。規定上も拒む理由はないし、なにより礼洋の妹ちゃんだ。働きはしっかりしてるだろうし、よしんば働かないでただ居るだけでも大歓迎ってもんよ」


 真尋はダメでも、こんなことを平気で言う我修院は割と大丈夫なんだよな。真尋が生理的に無理すぎるらしいのはあるが、この違いは何だ、やっぱり金か……?


「しかし、律儀なこって。生徒会長選挙なんて、当選するかどうかは別として、形式上Ⅰ学年の帰宅部の子にだって被選挙権はあるのに、わざわざ生徒会入って…なんて。フリーターでもいいのよ?」


 ……我修院が明らかに俺の方を見つつ、嫌味ったらしくそういう。


「俺のことだって、フリーターでもいいからって呼んだ癖に」

「そうだったな、役職もないしな」

「え……?」


 俺と我修院が軽く漫才めいたことをしていたら、横で深月が唖然としている。


「生徒会長って、生徒会入ってなくてもなれるんですか……?」


 いやいや、知らずになろうとしてたのかよ。


 生徒会規約……第何条だっけ?

 生徒会長選挙の被選挙権者は、生徒総会の全会員とする。


 生徒総会の会員というのは、要は現役生徒のことなので、つまりは生徒でさえあれば誰でも生徒会長選挙に出馬できる。これはさっき我修院が言った通りだ。


「可能性はある、だな。選挙に出ること自体は生徒会入ってなくてもできるぞ」

「そ、そんな……じゃあ……」


「でもな」

 このあたりで我修院が立ち上がり、意味もなく窓の方へ歩き始める。

「曲がりなりにも生徒会で仕事してた二人の方が、ことさら二人のことをよく知らない下級生の票を集めるには有利だろう。だから、生徒会長になりたいなら、賢明な判断だよ」


 ちょっとアンニュイな表情で窓際に立つと、なんか絵になってて無性にムカつく。


「——あ、オレも一個食っていい?」

「どうぞ〜」


 ところで、生徒会役員でありながら、深月が来てから今まで一言も発してない人間が二人いる。

 副会長・滝川喜市と書記・阿久比順平。

 彼らがなにをしていたかというと——


 順平がカップ麺を作り。

 喜市がそれをひたすら食べていた。


 で、我修院が今そのカップ麺の一つを受け取り、ちょっといい雰囲気を台無しにしたところである。


「お兄ちゃん、あの二人は何を……?」

「賞味期限が切れてるカップ麺の処理だってさ」


 例によって我修院が箱で持ってきたGSIのカップ麺が先月で賞味期限だったらしい。

 なので、順平が電気ケトル2台態勢でお湯を注ぎつつ、出来たものを喜市が食べるということで処理しようとしたらしい。


 喜市の目の前に、紙コップを重ねていくようにカップ麺の容器が重なってゆく。


 食べる量とか早さ以前に、すごく体に悪そう。

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