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世界救うとかどうでもいいから異能の力を授かって!  作者: A46
Chapter4. シルヴェストルの龍は6人組だとか
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#21 そりゃもう工場直送よ

高校生たちがいなくなってから、俺と花音はベアトリスに近づいていった。


「あら、アヤヒロにカノンじゃない。久しぶりね、元気してた?」

「いやいや、どうしてそう平然としてられるんですか」

「……なんのことかしら?」



まあ、見られているとは思っていないのだろう。それでも、額に汗を浮かべているのが見える。察しはついているのだろうか。



「ベアトリスちゃんがバトルしてるとこ、偶然見ちゃったから……」

「電柱のとこに隠れて、花音のSWA使って見てたんだけど……」

「あ、ああ、なるほど…ね」


表情とこの狼狽えぶりからして、絶対分かってたと思う。

そして、そのベアトリスの体がコンビニの方に向いた。


「奢ってあげるわ、いい臨時収入が入ったから好きな飲み物でも選びなさい」



今、俺たちは飲み物を買った帰りだ。

だが、せっかくなのでベアトリスの誘いに乗ることにした。



コンビニの飲み物コーナーを見ていると、見覚えのあるチルドカップをみつけた。


「おおこれ、ここにもあったんだな」

「あっそれ、この前の新作?」

「そうそう、学園都市のコンビニで先行販売するって言ってたけど、ここにもあったのか」



そう、先日我修院が持ってきたGSIの新作チルドカップ飲料だ。


「わたし、これ気に入っちゃったんだよねぇ。ここにあるならいつでも買いに来れるねっ」

「そんなことしなくても、我修院に同じこと言ってみ。箱で届くから」


スーパーに並ぶ程度のランクの自社製品なら、大抵のものは言えばくれるのが我修院だ。


それも、俺から言わせれば迷惑なことに本人の惚れ込んでいる大村5姉妹のおっぱい担当が言っているのだ。箱で送られてきて、それが尽きれば電話一本で無限に湧いてくるくらいの勢いだろう。


だいたい、喜市にすら毎月5kgとも10kgとも言われる量のポテチを送っているのだ。花音の頼みを断るはずがない。


ちなみに誤植ではない。米ではなくポテチで合っている。喜市は本当に週1〜2kgペースでポテチを消費するらしい。それもビタ一文払うことなく。それで血糖値とかも問題なしだという。胃の中で炭水化物に反物質でもぶつけてるのか。



「何これ、美味しいの?」


さて。意識がコンビニに戻ってくる。

店に入ってから別行動をしていたベアトリスが隣に来ていた。

手に持ったカゴには……ワイン?


「……それ、昼間っから飲む気ですか?」

「別にいいじゃない、講義もなければ車の運転するわけでもないし」

「本当ですかね……」

「私、日本の運転免許持ってないもの。イギリスのはあるけど、日本じゃ使えないし。逆は使えるみたいなのに」


曰く、ヨーロッパの大学の食堂では普通に酒が頼めたりするらしい。日本人の感覚からしたら考えられないが。


「それで、これなんですけど」


とりあえず俺と花音の分で2本、商品名「メルティブラウニー」を手に取り、ベアトリスの持っているカゴに突っ込んだ。


「出してる会社の社長の息子と俺が友達で、この前試供品貰ったんです。チョコとか好きなら美味しいと思いますけど」

「ショコラが嫌いなフランス人なんていないわ……私の知る限りは。ぜひ試してみましょう」


大村礼洋◆花音がね、メルティブラウニー気に入ったみたいよ。


ベアトリスがさらにもう一本、手に取ってカゴに入れる間に、我修院に伝えてみた。一瞬で既読がつく。


我修院史緒◆配達時間帯が16時から18時になると思うけど、その時間家にいる?



そしてこの以心伝心ぶりである。

過程をすっ飛ばし過ぎだが、かれこれ丸5年以上の付き合いなので、これで分かってしまうのだ。


大村礼洋◆やけに早いな、本社倉庫から出荷?

我修院史緒◆そりゃもう工場直送よ、かわいい花音ちゃんのためだもの。



気合いが入り過ぎだ。

というより、社長令息とはいえ、たかがその友人宅を会社の物流体系(ロジスティクス)に組み込んでしまっていいものなのか。



「さて」


会計を済ませ、店の外に出てきた我々御一行。


「ここはアヤヒロたちの家の近くなの?」

「は?」



何を言ってるんだこの人は。


「この前あなたが寿司を買い占めたスーパーと俺の家の間なんですが……」

「なるほど、どうりで見覚えがあったわけね」

「そんな記憶力で大丈夫ですか?」

「家と大学を往復できれば生きていけるわ」


そして、しれっと帰路をゆく俺と花音について来るベアトリス。


「ベアトリスさんは、どこに行くところだったんです?」

「特に決めてないわ。バイトの面接が思ったより早く終わって暇だったの。——そうだ、遊びに行ってもいいかしら?」


また来るのか。

正直面倒だとは思った。とはいえ、なんだかあのゲームを再開する気にはなれなかったので、俺はベアトリスの訪問を了承するのであった。


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