#17 一発目にガチ体当たりとは
「もう、ひどいじゃないか深月。僕が近づいた瞬間逃げ出さなくたっていいのに」
俺たち三馬鹿と深月が話していると、渦中の進藤真尋が教室の外に出てきた。
男子にしては長い髪。浮かべるニヤリとした笑み。やっぱりどこか寒気のようなものを感じる。
「嫌、やだやだ来ないでぇ!」
深月が俺の背後に隠れる。
「先輩、深月がずっとそんな感じで、まともに話も出来やしないんです。どうにかしてくださいよ」
相変わらずニヤニヤしながら真尋が歩み寄ってくる。
「気安く下の名前で呼び捨てるな」
「気安く深月とか呼ばないでよ」
ほぼ同時。こういうところはさすが兄妹といったところか。
「真尋くん、深月ちゃんは……まぁしょうがないとして、他の女の子の反応はどうなの?」
「ああ、それオレも気になる」
喜市が間に入ってくれて、そう真尋に聞いた。
「特に、普通ですよ。心なしか、隣の女子との机の間隔がほかより広い感じはしますけど」
「避けられてるじゃねーか」
「あと、たまたま手が触れたりすると手を洗われたりはします」
「強く生きろ、一人でな」
でも確かに、どっちも実際にされたら心に来そうなんだよな……
「そんな中でも、深月は——」
「だからその"深月"呼びをやめろ」
「——お、大村さん…は僕の話を聞くだけは聞いてくれるので、僕としては安心するんですよね、彼女がいると」
こいつはこいつで苦労があるんだな。知らなかったし出来ることなら知りたくなかった。
「本当はそんなことしたくないんだけど……というかしなくていいよね?」
「そうだな——任せるけど、まあせっかくだし借しを作りまくっとくのも手だろ」
「お兄ちゃんがそう言うなら……か、借りは絶対返してもらうからね、進藤」
「はいはい」
相変わらず、俺の背後に隠れながら深月が真尋に言った。
どことなく、照れているように見えるのは気のせいだろうか。気のせいであってほしい。
さて、こういう時に忘れちゃいけないこと。
「もうしない、って言ってもよかったのに、深月は優しいな。まあ愚痴ならうちで聞くから、恩をいっぱい売っとけばいいよ」
ちゃんと褒めてあげること、これを忘れてはならないのです。人は褒めることによって伸びる、叱ることは問題点の指摘に過ぎないのです。
「うん