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世界救うとかどうでもいいから異能の力を授かって!  作者: A46
Chapter3. 冬服期、カレーうどんは実に地雷であった。
16/29

#16 回し者にする程度だよ

 礼洋◆どうした!なにがあった!


「……なんか深月がこれからの2年間を思い嘆いてるんだけど」


 この会長と副会長は、うちの5姉妹のことは普通に知っている。話にはよく出すし、それほど頻度は高くないが、顔を合わせたことも一度や二度程度ではなくある。


「ええ、深月ちゃんが?……でも、この時期のこのタイミングで2年間、ってことはクラス替えじゃない?」

「嫌いな奴と一緒にでもなったんだろ。女子ってそういうとこ陰湿だったりするからなぁ」


 親バカならぬ兄バカとして、あの深月にそんな裏の顔は無いと信じたいところだ……


 ——なんてやりとりをしていたら、深月が画像を送信してきた。


 それは、掲示されているクラス発表を撮影したものだった。Ⅴ学年C組の名簿。すこし字が見づらかったので、名簿の先頭あたりを拡大した。


「あっ……」


 そして気付いた。

 V学年C組出席番号1番、阿久比順平。

 そしてその下、出席番号8番に大村深月。


「とりあえず、順平が一緒みたいだが——」


 大体見当はついているが、さらに下にスクロールする。


「ああ、やっぱりな」

 出席番号17番、進藤真尋。


 生徒会の脳筋書記とぬめぬめオーラ会計。深月は入学以来、毎年どちらかとは同じクラスになっていた。だが——


 礼洋◆二人ともと一緒って、初めてじゃないか?

 深月◆そうだよ!ねぇお兄ちゃん助けて!もうこの教室にいたくない!帰りたいよー!

 紗加◆これは奇跡レベルですね間違いない……確率を計算しよう(提案)


「相変わらず、深月ちゃんはあの二人のこと苦手だねぇ」

「礼洋ちゃんも苦手だぞ」

「そう?順平くんとは割と仲良さそうだけど」

「いや、進藤がヤバい」


 本当に、なんと言えばいいんだろう。


 風呂場にナメクジがいたり、道端にヘビがいたりしたのを見つけた時の、ゾワっとする感じを薄めたような感覚。奴と話していると時折そんな感覚を覚えることがある。


 見た目は悪くない。むしろ顔だけ見れば整っている方だろう。それにもかかわらず、だ。

 おそらくこれが、「生理的に受け付けない」ということなのだろう。


 というか、これは俺と深月に限った話ではない。進藤真尋は割と兄妹みんなして苦手意識がある。もっとも、双子だけは俺や深月のような生理的嫌悪感を感じないみたいだけど。


「なあ礼洋、今から行ってみないか」

 そう言って、俺が教室に来たときから座っていた我修院が席を立った。


「行くって……どこに?」

「決まってんだろ、深月のクラス。えっとⅤ学年の……」

「C組」

「そう、C組。まだ集合時間までには時間あるし、大丈夫っしょ」


 教室の壁の時計をみると、集合時間10分弱前。1つ上の階の教室あたりまで行って、話して戻ってくるくらいなら余裕でできるだろう。


「そうだな、行ってみるか」

「僕も行くよぉ」


 そうして俺たち三人は、人も集まりだしてきた教室を一旦あとにした。


 Ⅴ学年の教室がある2階の廊下は、Ⅵ学年の1階とは打って変わって人でごった返していた。廊下のあちこちで、先月までの同級生だったんだろう生徒と、どこのクラスになった、誰と同じクラスになった、なんて話をしている。

 1年前には同じようなことをしていたはずだが、なんだかもう既に懐かしい。


 つい先月までⅤ学年D組だった俺にとって、Ⅴ学年C組の教室を見つけることは「導」という漢字をバランスよく書くよりよほど簡単なことだった。

 ドアを開けて中を覗くと、深月がすごい勢い——それこそSWAでも使ったんじゃないかってスピードですっ飛んできた。


「助け出しに来てくれたんだね!ありがとうお兄ちゃん大好き!」

「い、いやさすがにそれは……ともかく、あいつらはまだ来てないのか?」

「進藤がさっき来たの、阿久比はまだ。でも一人だってテンションだだ下がりだよ〜」

「なるほど」


 深月が抱きついてこようとしたのでなんとかなだめ、廊下に連れ出した。


「深月ちゃんおはよう、いやぁ災難だねぇ」

「あっ滝川先輩、おはようございます。本当です、友達も割と多いクラスだったのに、一気に台無しですよぅ」

「あはは…僕はそこまで受け付けなくはないんだけど……」


 この二人は身長差が激しい。前情報が何もなくて、男女兼用のスウェットでも着ていたら、深月が姉で貴市が妹に見えることだろう。


 身長163cmの深月と、155cmあるかどうかの貴市。これでもし貴市が年上で、しかも男だと当てられる人がいたら、GSIの炊飯器くらいなら差し出してもいい。


「やーすまんなぁ、俺に深夜アニメに出てくる学校の生徒会長ぐらい権力があればなぁ」


 そう深月に言って我修院が笑う。そうは言っても、この学校の生徒会長は比較的強い権力を持っているはずなんだがなぁ。今本人も言ったが、アニメみたいに教師より立場が上、だなんてことはまずないが。


「い、いえ、我修院先輩だと他のところでも濫用しまくりそうなので……」

「いやいやー、せいぜい学食と購買の業者をGSIの回し者にする程度だよ」

「え、なにそれ。やってよ我修院」


 学園都市内にGSIという大会社が本部を構えていながら、この学校は学食の業者を頑として昔ながらの地元業者から変えようとしない。そのせいで、カレーがまずいし定食などのメニューも昭和テイスト溢れるものばっかりだ。まあ、大村兄妹はお弁当なのであまり関係ないが。

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