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世界救うとかどうでもいいから異能の力を授かって!  作者: A46
Chapter3. 冬服期、カレーうどんは実に地雷であった。
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#15 チルドカップは大体当たり

 ところ変わって、ここは高校3年生、正式名称「Ⅵ学年」D組の教室の前。


 シルヴェストル学院では、学年が上がるにつれてクラス解体でのレベル別授業や選択授業が増えてくる。そして、Ⅵ学年になるとクラス単位の授業が完全に消滅する。


 つまり、このクラス単位で集まるのはホームルームの時だけ、ということになるわけだ。


 そんな事情から、Ⅴ学年からⅥ学年に進級する時にはクラス替えがないし、担任も普通は変わらない。教室の階が変わって、通学が1%くらい楽になった程度だ。


 教室に入ってみると、人はまばら。40人クラスで10人いるかどうかといったところ。集合時刻15分前でこれ。最高学年さすがの余裕である。


 だが——その10人いるかどうかの中に、見知った顔があった。


「おう、今日は早いんだな」

「お前も大概だろ、生徒会で呼んだら3分遅れでくるのに、こーいうときは15分前に来やがって」


 ベアトリスと初めて会った日ぶり、生徒会長の我修院史緒だ。


「妹に合わせてるだけだ。——で?始業式だし会長様はお仕事かい?」

「それもまぁあるけどさ。うちの新作の試供品。生徒会室の冷蔵庫に仕込んどいたからご自由にどうぞ」

「新作?菓子か何かか?」


 我修院の家は、通称GSI——「我修院食品飲料産業」という会社の経営者一族だ。


 食品の製造・販売はもとより、農業・畜産・漁業、輸入、加工、物流、食料品小売店チェーン、外食産業、果てはキッチン雑貨やキッチン家電まで手がける「食」のことならなんでもおまかせ!な企業である。


「いや、チルドカップのココアでさ、小粒のチョコブラウニー入ってるんだよ。タピオカ飲料みたいなぶっといストローで吸ってさ」

「何それうまそう。後で1本飲みつつ6本持ってっていい?」

「そういうと思ってビニール袋に6本入れて冷蔵庫に置いてあるぞ」

「おっ、気が利くな」

「これが未来の社長の気概ってもんよ、なんてな」


 今や「GSI製品のない台所は日本に存在しない」とまで言われるGSI。

 事実、その社長の息子(目の前にいる奴)と友人関係にある俺の家の食卓は、もはやGSIなしには成り立たない。


 数年前に大手家電メーカーと共同開発という形で参入を始めたキッチン家電だが、大村家は既に電子レンジと炊飯器とホットプレートが制圧されている。全部我修院がタダでくれる試作品だ。


 そしてそんな我修院は、生徒会室にも差し入れと称して菓子や飲み物の試作品や、新作の試供品を大量に持ってくる。


 生徒会役員では到底食べ切れない量なので……


「おはよう!史緒くんも礼洋くんも早いね」


 ——と思ったが、余裕で食べ切れそうな大食い系男の娘副会長・滝川貴市が今やってきた。


 ともかく。

 我修院の持ってくる(行き場のない自社製品という名の)差し入れは、高校生男子とはいえ普通の人が4〜5人集まったくらいじゃ消費できない量なので、しばしば家にも持って帰っているのだ。


 なにぶん我が家には女子中高生が5人いる。菓子類なら、置いとけばそのうち勝手になくなるのだ。


 そんなこんなで、生徒会長・副会長・生徒会フリーターの3人が揃った。同じクラスから会長・副会長がでるというのも珍しい気がするが、何はともあれこのクラスの三馬鹿といえば我々のこと。


 別に本当にバカなわけじゃない。お坊っちゃまだけあって、英才教育を受けて多才な我修院。成績は常にトップクラスの貴市。そして——

 まぁ俺はバカかな。数学苦手だし。


「おう、貴市。お前も後で持ってけ、うちのチルドカップの新作だぞ」

「わぁ、GSIの商品開発部門ってたまにぶっとんだモノ作るけど、チルドカップは大体当たりなんだよねぇ」


 貴市が目を輝かせる。こういう表情をされると、男だとわかるポイントが制服しかなくなつてしまう。

 胸?リコの方がないかもしれないぐらいなんだよなぁ……


「なぁ貴市、始業式終わったら、この前行ったラーメン屋行かないか?なんか中毒になっちゃってさぁ」

「いいねぇ!僕もちょっと飢えてたんだよねぇあのボリューム!順平くんとかも誘ってみる?」

「そうだな、礼洋は?」

「ないです」


 どうしてお前たちはあの量を平然と食べようという気になるんだ。そこがわからない。


 と、ここでふと意味もなくスマートフォンを取り出してみる。なにやらメッセージアプリに通知が来ていた。


【深月】うわあああわたしの2年間があああああ


 深月が文字で絶叫していた。

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