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世界救うとかどうでもいいから異能の力を授かって!  作者: A46
Extra Chapter. ひどい一日のへの序曲
12/29

#12 所謂ギルティというやつですよ

今回は番外編です。

メタ要素を含みます。

 今日はあの日——ベアトリスと初めて会った日のことについて。

 あの日、ベアトリスに出会う前、俺が何をしていたのかについて、ちょっぴりメタな視点も交えてお話ししよう。


 その日起きたのは10時。規則正しい生活などとは口が裂けても言えないが、同級生にはもっと遅くまで寝ていた連中がいくらでもいるだろう。


 その日は生徒会の手伝いをしてくれないかと生徒会長・我修院に頼まれていたので学校に向かった。それなのに、無駄に張り切って朝っぱらから来ていたという我修院があらかた仕事を終わらせていて、結局働いた時間は30分足らずだ。


 だいたい、春休みとはいえ今日は日曜日だ。これ以上学校にいる用事もない。さっさと帰ってリアルタイムでは見逃してしまった8時半の美少女変身バトルアニメの録画をまったり観ようと思ったのに。


「よし、メシ行くか」


 我修院のこの一言で、暗黙の了解的について行くハメになってしまった。


 しかしこの我修院(がしゅういん)史緒(ふみお)という男、家がかなりの金持ちで、こういうときはまず間違いなく奢ってくれる。なのでまぁいいか、と思ってホイホイついて行ってしまったのが間違いだった。


 我修院とどこか食べに行くときというのは、奢ってもらえる代わりに何を食べるかという選択権はほぼない。彼が食べたいものの店に連れて行かれるのが常だ。彼に取り立ててコレが食べたい、というものがない場合、連れの食べたいものを聞いて、その中から食べたいと思ったものの店に行く。そういうシステムだ。


 そして連れてこられたのはラーメン屋。これだけなら別にいい。

 問題は、そこがいわゆるニンニク入れたり野菜マシマシしたりできる類のラーメン屋だったことだ。


「大豚ダブル全マシでもなんでも頼んでいいぞー」

 我修院はそう言って呑気に千円札を数枚出し、

「お、いいっすか?じゃあ俺大豚ダブルいきますわ」

 一つ年下の脳まで筋肉で出来てそうな書記がその通りに食券を買う。


 そいつに続いて我修院から千円札を受け取り、小ラーメンの食券を買った。小でも普通のラーメン屋の倍くらいあると聞いているので、普通のラーメン屋で麺大盛にするくらいの感覚とすれば、まあいけるか、というところ。


「なんだよ、せっかく奢りなのに」

「大なんて食い切れるか、ヤサイも少なめにしてやっとぐらいだろ」


 決して小食ではないと思う。


 そんなこんなで席に着く。カウンターに五人並んで、左隣には我修院、右隣には小柄で服以外の全てが女の子に見える副会長、その向こうには1学年下の書記と会計。そんな陣容だ。


「いらっしゃいませ、食券お預かりします」

 店主に声をかけられ、五人がいっせいに食券を差し出す。驚くことに、自分以外全員大である。

 自分以外全員……?


「いやいや貴市、お前大食えるのかよ?」

 貴市——滝川(たきがわ)貴市(きいち)、件の女の子にしか見えない副会長まで普通のラーメンの3倍はあろうというラーメンを注文していた。


「え?ここ来たらいつも大豚ダブル食べてるけど?」

「アヤヒロ、知らなかったのかよ、こいつとんでもない大食いだぜ?」

「滝川先輩、大豚ダブルですか?全マシいきます?」

「あっ、順平くんも?いいよー、ここんとこご無沙汰だったから、いっぱい食べちゃうぞー」


 いや知ってたけども。喜市が大食いなの知ってたけども。学食じゃ大盛り券2枚で特盛りにしてるのよく見てたし。順平——脳筋書記・阿久比(あぐい)順平(じゅんぺい)も割としれっと平らげそうだな。


「お待たせしましたー小ラーメンですー、ニンニク入れますか?」

 そうこうしているうちにラーメンが出来たようだった。

「あーえっと、ヤサイ少なめで」

「かしこまりましたー」

 やっぱり、これでも多いよな……

「こちら大豚ダブルおふたつですねー、ニンニク入れますか?」

「全部マシマシで!」

 右の二人が同時に唱える。本当にやりやがった。


「ああ、なんかこのニンニクの匂いで食欲が湧いてきた。もう待ちきれないよ!早く食べさせてくれ!」

 左隣では我修院が特盛りのラーメンを前に目を輝かせている。目だけが変にキラキラしているせいで絵面がかえって汚い。

「あと一人なんだから待てよ、進藤がかわいそうだ」

「僕のこともちゃんと気にかけてくれるなんて、礼洋先輩は優しいですね。深月もそうならいいのに」

「……お前に言われると、なんか腹立つな、色々と」

 右側一番奥に座った会計——進藤(しんどう)真尋(まひろ)。腰の低い物言いなはずなのに、なんだかねっとりとしている上、女の子のようなことを言ってくるのでたまに寒気がする。深月とは、去年度同じクラスだったようだ。

 名字が同じだし仕方ないとはいえ、こいつに俺や深月を下の名前で呼ばれると、なんだかムカつく。


 ムカいついている間にその真尋の分も来たので、五人揃ってラーメンに着手する。

 なるほど、確かに"戦い"の様相だ。



 *



「どうだった?初めてだっただんろ」

「いやぁキツいっす……よく食べれるなあんな量」


 かろうじて完食を果たし、俺たちは店を出た。といっても、スープまで完飲は無理だったけど。

 正直なところ、ヤサイを片付けた時点で割とお腹一杯の様相だった。そこから、小のはずなのに一般的なラーメンの2倍くらいある麺。終盤にはもう伸びてしまっていた。


「先輩、あれは所謂ギルティというやつですよ。ロットマスターがいなくてよかったですね」

「次から麺半分とかにします……にしてもお前らはおかしいと思う」


 順平と喜市は、食べる総量が圧倒的に多いにもかかわらず、真っ先に完食して、スープまで全部飲み干してしまっていた。なんというかもう、掃除機か何かか?


「というか、なんかこう…もっと美味しそうに食べろよ…」

「えぇ?順平くんのあのガツガツいく感じ、すごい美味しそうに食べてると思うんだけどなぁ」

「……胃に押し込んでるようにしか見えん」


 太るぞ、と言いたいところだが、喜市は大食い女子特有の(男だけど)食べても太らない体質だ。順平も順平で、あの筋肉量なら燃費悪いだろうし。


「ふぅー食った食ったぁ〜。よっしゃ、食後の腹ごなしと洒落込もうぜ!」

「いいですね、たまにはそういうのも」

 マジかよ……もう帰れると思ったのに……

 まぁ、大体連れてかれる所は察しがつくけれども。


「なあ我修院、それって……やっぱりラウンドロビン行くのか?」

「おうよ、何処のがいい?」

 ラウンドロビン。

 元はボウリング場から始まり、今はカラオケやゲーセン、スポーツアトラクションと割と一日中遊んでいられるアミューズメント施設である。


「どこのがいい?じゃないんだよお前、どこ行くにしたって電車じゃん。それにパッと行けそうなとこなんて1ヶ所しかないだろ」


 ここは、県の1/3ほどを占める巨大な学園都市の一角。そしてその学園都市のエリア内にラウンドロビンは3店舗あるが、うち2つは電車で30分以上の距離、残りの1店舗も20分前後はかかるだろう。


「えー?あそこは規模が微妙じゃね?あと帰るのがめんどい」

「僕も同じく帰るのが面倒です」

「ボクはいいよ、帰り道だし」

「オレどこでもいいっすよー、今日暇なんで」


 統一性がなさすぎる。

「礼洋くんって、どこに住んでるんだっけ?」

「北浦だよ……どこ行っても逆方向みたいなもんだからもうどこでもいいよ……」


 北浦。とりあえず、学校にはこの中で一番近いが、3店舗のラウンドロビン全てに対して交通の便が悪い、くらいの認識を持っていただければと思う。


「もういいよ、どこに行ったって同じくらい大変だからもういいよ、我修院が決めなよ」

「近いとこに行こう、今から長距離移動するのは確かにめんどい」

「へいへい、じゃあ駅に向かうぞ」

 大移動をしなくて済んだので、まあここは我修院に感謝、かな。


 そんなこんなで。

 あれだけラーメン屋での出来事を描写してなんだが、男子高校生5人がワイワイ遊んでるだけとか何の面白味もないのでカット。キャラクター紹介みたいなものだと思っていただくことにしよう。

 話の舞台は、3時間コースでしこたま遊んだ帰り道、生徒会の面々と別れた後。


 家の近くの停留場で路面電車(のようなもの)を降り、遊歩道として整備された湖畔を少し歩く。大きな交差点を渡ったら家はもうすぐだ。


 視界の隅。

 一瞬、何かがキラっと光ったように見えた。遊歩道のベンチ、背もたれのないタイプだ。そこに、何かがある。

「天使の……?」

 それは、石膏か何かでできた、手のひらサイズの小さな天使像である。台座も一体になって削り出されているため、置物だろうか。


 一呼吸おいて、それを手に取る。

 よく見ると、片目にだけ紫色の宝石がはめ込まれている。アメシストだろうか。さっき光って見えたのはきっと、この目の宝石のせいだろう。


「——それ、気になるの?」


 そんな感じで、Chapter1の冒頭に戻る。

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