嘘・裏切りの予感
会社に戻れることになったものの
いままで見たことがない政司の変わりぶりに真由美は
後悔と怒りが交差する
なぜ?何が起こってる?
翌週には政司が仕事に戻れることになったと聞いた
結局そういうことになるのだから・・
でも給与は下がり会社が用意された家も出て行かなきゃいけない、という
家財道具はあげるって言われたから家電はお前にあげる
ただテレビだけは置いていってくれ、と
変な話でそれが本当だったら訳のわからない会社だ
それからは政司も様子が変になっていった
週末にそっちに行くね、と告げると出張でいないと言われた
土、日も使って?・・・
土日ともに真由美は政司に電話した
朝から晩まで全然出ない
月曜日の朝には電話にようやく出た
「なんで2日間も全く出ない?どうなってるん?」
朝からキリキリしていた
「仕事中は音消してたから気付かなかった」
「あんたは48時間仕事中ですかっ!」
「あ、もうこんな時間だから仕事行く用意するね」
一方的に切られた
あの初めて嘘をついた日から確実に何かが変わっていった
やたら上司と外で会ってた日が続きその週末は昼過ぎまで連絡がつかなかった
あの会えなかった日に彼はどこかに前日から泊まっていたのか・・
もしくは本当は家にいて誰かと一緒で出られなかった?
帰らずにいればよかった・・・
真由美はまさかの女の気配を察した
浮気ならまだ間に合う
まだ出会って数週間のはずだ
政司は浮気の免疫がないから本気になる可能性が高い
ただ真由美には自信がなかった
一度は別れを言われたこと、これまでの自分の言動を振り返れば
政司のSОSに見てみないふりをして冷たくあしらったこと
新しい地で新しい恋がしたかった
傷ついてる政司に相談に乗り助けてあげた人こそが
浮気相手だ
しかしもう泊まる仲だ
急ピッチ過ぎる
真由美はまたその翌週末も行くと告げるとまた出張だと言われ断られた
週末になると48時間、一度も電話に出ることはなかった
相変わらず月曜日には電話に出る
もちろん、寝込みを狙い朝からヒステリックだ
また切られる
翌週末は友人、洋と旅行に行くと告げられた
以前、真由美と友人、坂井 和絵と二歳下の安田 恵里と五人で行ったことがあるから・・・
真由美も連れて行ってとせがむと意味不明で頑なに拒んだ
洋もきっとグルだ。
もしくは旅行すら嘘か・・・
洋と男ふたりで旅行に行ってるはずの日も48時間また電話に出なかった
政司の携帯は真由美の鬼電着信でいっぱいのはずなのに政司は怒ることすら
せずむしろそのことについては何も言わないくらい
真由美を無視していた
何を言われても聞かれてもどうでもいいバカみたいな嘘を考えもせずに
言い張る
さらに翌週も出張だと言い切った
だったら平日に行く、と言っても接待で帰りが遅いとか朝早いからとか
1ヶ月24時間働いてます、的な有り得ない嘘。
1ヶ月間そんなやり取りが続きとうとう一度も会おうとはしなかった
月が変わり引越しの日取りが決まったことだけは告げられた
「また手伝うね」に「来なくていい洋も来るから大丈夫」
「なんで?引っ越してきたときは手伝わせて出ていくときは今度は違う人なのね」に「そんな人いないから俺のやり方で片付けたい」とかで・・・
何言ってんだか・・・意味不明に
真由美は笑った。嘘がベタ過ぎる
とりあえず一旦、田舎には帰ってくるし
しかし仕事が続けるようになったいま、必ずまた自力でも家を借りるはず
それからさらに半月が過ぎ引越してからでは遅いと思い
政司は真由美ともう会う気はないな、と悟りいつものように嘘の言い訳と
ヒステリックの堂々巡りで怒りはピークに達してとうとう堪忍袋の緒が切れて
「いまから行くから待っとけ」
するといつもは何を言われても怒ることもなくごにょごにょ言い訳ばかりで
まるで聞いていなくて逃げてる政司が突然キレた。しかも逆ギレ。
本当に来るのかと思ったのか来られたらまずいのか・・・
「来たら別れるぞ!とにかくそっちに帰ってから話そう」
出たな、本音が・・・帰ってからでは遅い
真由美はいま全てを話すように促したが
「好きな人なんていない、そんなことどうでもいいとにかく
仕事が忙しくて専念したいから」
もっともらしい男が嘘をつくときの(仕事)の口実だ
なんども問い詰めると
政司は面倒くさそうにピリピリした口調で「もう別れよう、価値観が合わない」
っていまさら??
どうでもよくなったかのように突然開き直った
その侮辱された態度に真由美は怒りをあらわにし
「明日、必ず行くからどんなことがあっても家にいるように。
居留守使っても出てくるまでいつまでも帰らないから」
「絶対来るなよ、来てもいないから」
真由美は最初から行くつもりはなかった
仕事から戻るであろう時間帯に政司が「絶対来るなよ」の言葉にどう出るか
賭けてみたかった
翌日、真由美は思いのほか仕事が遅くまでかかり電話に触れなかった
携帯が見れたのは深夜だった
真由美は携帯を見て愕然とした
そして確信したのだった
政司は仕事が終わり真由美に何度も電話を掛けていたのだ
そう、「絶対来るなよ」の一言に真由美は見られたらまずいものがある
行かなくては、そう悟った。
引越しは週末だ。
必ず誰かが手伝うそして前の日から最後の晩餐してるはず
引越し日は絶対逃げられない
翌日、真由美は仕事を休んだ
そしていてもたってもいられない不安定な気持ちのまま
始発の電車に乗り込んだ。
あきらかに避けている態度に真由美は我を忘れて
真実を知ろうとする
この目で確かめなくては・・・
見てはいけないような、知らなきゃいけないような
裏切りの予感がした