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M ~壊れていく心~  作者: 如水天心
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運命のいたずら

遠距離の厳しさとお互いの気持ちのブレが再びふたりに

難題を突きつけられる

追討ちをかけるかのようにどうにもならない出来事が・・・

遠距離になって半年が過ぎようとしていた。


そんなある日、昼下がりの忙しくしている時間帯に真由美の携帯が鳴り響いていた

政司からだった・・・

周りに人がいて取ることができない

後でかけ直そう・・・

そう思っていたが何度も鳴り続けた

暇なのか??こっちは忙しいのに・・でも一度目は永遠とかけ続けるけど

連続で掛け続けることはないな、なんかあったのか?少し胸騒ぎを覚え携帯を

持って急いでトイレに駆け込んだ


「どうした?」

「やっと出たー」政司は軽く甘えた声での第一声。なんなんだ?暇なのか

「何?」

「上司と喧嘩して会社辞めてきた」

「は?何言ってんの?子供じゃあるまいしとりあえず悪いと思ってなくてもいいから一旦、取り消して謝って戻らなきゃ!

だってどうすんの家も家財道具も・・・そこ出なきゃいけないじゃん。

いまさらどうする・・もう訳わかんない」

「だって頭にきたからもう辞めるって言った」


真由美は政司がたまにわがままで頑固な部分を思い出した

仕方ない、両親は甘やかすし仕事もこれまで二十年近く管理職の立場での温室で

デスクワークしてたのだから

なのに入ったばかりでちょっとできるかと勘違いして意見を曲げなかったに

違いない

もうゼロから始める気持ちで切り替えてよ

このときの真由美は真相も知らずして政司の気持ちも知らずに突き放してしまった

この日、どんなことがあっても政司の元へ飛んでいくべきだった

なのに真由美は「仕事が終わったら電話して」の政司のことが鬱陶しくて帰宅してもすぐには電話をしなかった

夜も遅くなり益々かけたくなくなっていた頃いつもは寝ているはずの時間に

政司から電話が鳴った

仕事で疲れていたせいもあり何度も同じことを話すのが面倒だったが

渋々、出た

ちゃんと理由も聞かず政司のわがままだ、と説教をし始めた

政司からのSОSのサインだとも知らずに。

言えないなら吐かせるまですればよかったのに聞こうとしなかった

真由美は政司の会社も仕事内容も全く把握してなかったので適当に一般論で

喝をいれた

四十も過ぎて男のくせに疲れる・・・

それからとりあえず自宅謹慎になった政司の家には行く気も失せてとりあえずどうなったのか、だけは毎日電話で話していた

政司が毎晩掛けてくるのだ

それから一週間を過ぎても何も行動を起こす様子もなく朝、電話すれば

まだ寝てる始末。完全にニートのようだった焦りすら感じない

少しづつ政司からの電話の回数も減ってきて

さすがにどうしてるのか、どうなったのか気になり真由美は週末には政司の

元へ向かった

部屋から出てきたのは髭をはやし、髪はくしゃくしゃでなんだか加齢臭さえ

漂ってきそうなむさ苦しい寝起きの格好のただのおっさんだった

あんなに自炊を楽しんでいたのにストックしていた野菜もしなびれていて

冷蔵庫には何も入っていなかった

セコイくせしてピザなんかデリバリーするんだ、テーブルの上の食べかすを

見て真由美は呆れていた

真由美は買い物すらせず政司の部屋に来たのだがとても冷たかった

部屋にあがり身の回りの世話もせずゆっくり腰を下ろすこともしなかった

こんな部屋いたくない、近くの居酒屋に連れ出した

自分もお腹がすいていたので一緒に食べたら終電で帰るつもりだった

会計時に政司は「おごって」と真顔で真由美に言った

それも何度も何度も・・・本当にお金持ってないのか?

真由美は店の人の手前、ごねてる男の姿を前にして恥ずかしくて渋々支払いをした

もう来たくない、そう思っていた

いつものように駅まで一緒に歩いて見送ってくれた

あまり会話はなかった

改札口に立つ政司はとても悲しそうに見えて情けなくもなりそれが見送って

くれる最後の姿になるとは思わずに・・・


それから数週間が過ぎた。


昼間何回か電話をかけたらいまから上司と会って話をしてくるとか夜も食事がてら話の続きを・・・とか言って出かけてる様子だったので少し安心していた

なんだかんだ言っても戻れるだろう、と単純に思っていた

週末になり休みも兼ねて今日はゆっくり泊まろうと思って行くことを政司には内緒にしていて買い物をして昼には着いた

ピンポーン


出ない・・・また寝てるのか?

電話をかけても出ない、


-いま何してるの?お天気いいよー

近くまで用があったからいるなら寄ろうかと思ってるけど・・-


軽くメールを打っても返信なし。

真由美は合鍵を持っていなかったことにいまさら気付いた

いままでお互い家族がいる身で合鍵を持たないのは当たり前だったから

そんなこと考えてもいなかった

まさか、死んでるんじゃないかとすら不安に思った矢先

1時間は過ぎていた頃、家の前で待ってたらメールがきた


-いまどこにいるの?

いつの間に来てたの-


なんだこいつは?どこで何をしているか分からず重い荷物を抱えて1時間後に軽く返信。真由美は頭にきて家の前で待ってたことは告げなかった


-連絡ないし

いないならもういい

それにもう帰ったから-


買い込んだ食材を駅のゴミ箱に捨て本当に自分の家に帰りついたころ政司から電話が鳴った


「寄らなかったんだ」


「いないのに寄らないよ、どこ行ってたの?」


「薬局とかいろいろ買い物・・・」

「なんで電話取らないの?」


「買い物してたから気づかなかった・・」


政司が初めて嘘をついた瞬間だった


真由美も家に行ってないと嘘をついたが

政司の嘘とはわけが違う

この日の嘘がきっかけで何かとてつもなく大きな嘘に変わるはず・・・

真由美は直感でそう思った。


何を隠してる?胸騒ぎが隠せなかった




何もしてあげなかった真由美に政司が逃げるように

何かを追い求めていく

初めてついた嘘・・・ふたりはもう引き返せないのか

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