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(番外編)侍女たちの合コン事情 〜シスルサイト〜

最近TSというジャンルがあるのを知りました。

本作はそれに当たるのでしょうか…?

「つ、ついに…これから合コンに行くのねっ!」


 興奮したバーニャさんの声に、私はおもわず後ろを振り返ってしまいました。

 どうやらバーニャさんはすごく興奮しています。…なんだか鼻息荒いです…

 今日のバーニャさんは、とっておきのワンピースに少し厚めの化粧を施しています。

 その横では、いつも以上に気合の入ったお化粧をしたプリゲッタさん。そんな二人をいつものように落ち着いた様子で眺めているベアトリスさん。



 そうです。今日はなんと、私たち侍女四人で…いわゆる『合コン』に参加するのです!

 初めて『合コン』というものに参加する私は、朝からドキドキしっぱなしでした。

 なんだか妙に緊張して、お仕事では失敗の連続でした。

 だけどそれはバーニャさんも同じだったようで…彼女にしては珍しくお皿を割って「あらあらあら!」と戸惑いの声を上げていました。





 さて、なんでこんな話になったのかというと…きっかけはサファナさんでした。


 なんでも、サファナさんに彼氏が出来たことがバーニャさんには許せなかったらしく、ずーっと「サファナは裏切り者だっ!」って責めてたそうなのです。

 その…あまりのしつこさに辟易したサファナさんが「だったらとっておきの男紹介してあげるから、それで我慢しなさい!」と言って、それに対してバーニャさんが「えっ!?さ、さすがに二人っきりは緊張しちゃうわ…」とモジモジしながら答えたことで、こんな結果になったのだそうです。


 そんなわけでバーニャさんから強引に誘われた私たちですが、プリゲッタさんは「サファナさんのとっておき!どれだけイケメンがいるのか楽しみねっ!」と、ものすごくウキウキしていました。

 ちなみにベアトリスさんは「私は興味無いですが、バーニャさんのたってのお願いということであれば仕方ありませんね」と、渋々参加されるようでした。



 こうして私たち四人は、この日お城でのお仕事が終わったあと、マリアージュ通りにある約束のお店に向かったのでした。






 今日のお店は『ルフラン・ゼーレ』という素敵なリストランテでした。

 比較的カジュアルなお店ではありますが、間違っても簡単に来れるような格式のお店ではありません。

 私はプリゲッタさんに教わったお化粧に、初めて着る新品のワンピースを身につけていました。

 それでも、入り口で「すいません、その格好では入店出来ません」ってウェイターさんに言われるんじゃないかってドキドキしてました。


 さて、入店すると…案内された席には既に四人の男性が着席していました。


「やぁやぁ!お待ちしていましたよ!」


 早速声をかけてきたのは、サラサラの金髪をなびかせた若者でした。

 線の細い感じですが、まるで貴族のように整った顔立ちをしています。はっきりいってイケメンです。


「私が今回の幹事のスクイーバといいます。王宮で書記官をやっています。皆様のお噂はかねがね聞いておりまして、今日の日を迎えられたことを嬉しく思います」


 金髪の青年(イケメン)…王宮書記官のスクイーバさんの自己紹介をきっかけにして、私たちはお互いの自己紹介を始めました。



 彼の横に座っている少したれ目の…ノリが軽い感じの方が、マリアージュ通り自治会の副会長、サドリさん。

 その横の、いかつい顔をした体格の良い方が、ハイデンブルグの街の警護兵をしているガインさん。

 そして最後に、一番右端に居た…私と同じくらい若い感じの方が、公認会計士のローリーさん。

 でもローリーさん、よくよく話を聞いてみると、なんと20歳とのこと!見た目で私と同じくらいと思ってごめんなさい…



 それぞれ、なんだかもったいないくらいの良い感じの人ばっかりです。

 なんでも全員サファナさんのお知り合いだそうで、お互い会うのも今日が初めてとのことでした。

 どうやらサファナさんが本気で『とっておき』を揃えたと言っていたのは真実だったようです。



 お互いの自己紹介が終わると、さっそく食事をしながらの『合コン』が始まりました。


 今回の一番人気は…なんとバーニャさんでした。

 金髪の青年スクイーバさんが、どんどんバーニャさんに話しかけています。

 それを横目で見ながら…一生懸命会話に参加しようとしているのが、警護兵のガインさんです。

 …どうやらこの二人は、バーニャさんと仲良くなりたいようでした。

 当のバーニャさんは、まるで天にも昇るかのような幸せそうな表情を浮かべています。

 そんなバーニャさんを見ているだけで、私もちょっと幸せな気持ちになりました。


 自治会の副会長サドリさんは、最初ベアトリスさんに声をかけていましたが、あまりに対応がつれないので、今はプリゲッタさんと盛り上がっています。

 どうやら今年のマリアージュのファッションの流行について熱く語り合っているみたいです。


 そして私は…どこがどう気に入られたのか、ローリーさんからいろいろと話しかけられています。

 私はなんだか男の人の相手をするのが慣れていないので、戸惑いながら一生懸命返事を返すので精一杯です。

 時々助け船を求めるために他の三人に目を向けるのですが、バーニャさんとプリゲッタさんは話に夢中で、ベアトリスさんは一人で黙々とワインを飲んでいます。

 私はなんとか愛想笑いを浮かべながら、なんとかローリーさんの相手をしていました。


 そんな感じで盛り上がった『合コン』だったのですが…

 やがて宴もたけなわになり、私たちはお店を出ることにしました。






「ねぇねぇ、よかったら一緒に次の店に行かない?」


 ローリーさんにそう声をかけられた私は、どうやって断ろうかを一生懸命考えていました。

 そうしたらベアトリスさんが「さ、帰るわよ。シスル」と言いながら、さらっと私の腕をつかんで引っ張って行ってくれました。


 おかげで私はローリーさんのお誘いをなんとか振り切ることができました。

 ベアトリスさんにお礼を言うと「別に…私はあなたの腕を引っ張っただけよ」と言っていました。



 ほかの人たちはどうなっているかなぁと思いながら、周りを見てみると…

 あれ?プリゲッタさんは?

 …どうやらプリゲッタさんは、いつの間にかサドリさんと姿を消しているようでした。

 うーん、さすがプリゲッタさん。大人の女性だ。



 さて、本日モテモテのバーニャさんは、というと…

 なんと、二人の男性に挟まれて『奪い合い』をされているではないですか!


「バーニャさんと次の店に一緒に行くのはぼくだ!」

「いいや!バーニャさんは俺と武器屋に行くんだ!」


 スクイーバさんがバーニャさんの右手をつかもうとすると、その手をパチンと払うガインさん。

 二人の視線がバチバチとぶつかり合います。まさに戦闘モードです。

 そんな二人の様子におろおろしながらも、まんざらでもない感じのバーニャさん。


「あらあら、ふたりとも…困りましたわねぇ」


 などと口にしているものの、ニヘラニヘラした表情を浮かべながら二人の様子を恍惚とした表情を浮かべて眺めています。

 しかし、男性二人の雰囲気は険悪でした。今にも決闘が始まりそうです。


 そう思った、そのとき…どうやらスクイーバさんのほうが折れたようでした。

 ガインさんを睨み付けながら「ちぇっ、やってらんねーよ!」と悪態をつくと、そのまま立ち去って行ってしまいました。


 残されたのは、満足げな表情を浮かべるガインさんと、そんな彼を見つめるバーニャさん。

 まるで熊のような体格のガインさんですが、バーニャさんと並ぶと遜色ありません。

 とてもお似合いに見えます…あ、これは失礼ですかね?



「あ、あの…バーニャさん!」

「は、はいっ!なんでしょう!」


 緊張しながら声をかけるガインさんと、同じく緊張しながら返事を返すバーニャさん。

 だけど…ガインさんの口から出てきたのは、驚くような言葉でした。



「実は俺は…正確には俺たちは、あなたをだまそうとしていました!」

「えええっ!?」


 思わず大声を上げてしまうバーニャさん。それを遠目に見ていた私もビックリしてしまいました。

 私の横にいたベアトリスさんは、すっと前に出ようとします。

 ですが…真剣なガインさんの表情を見て、その動きを止めました。


「実は今日の合コンですが、サファナさんから我々に指令が出ていたのです」

「サファナから…指令?」

「はい。我々四人の中でバーニャさんを二次会に誘うように、と。それで、もし貴女を見事誘うことができたら…その人にはかわいい女の子を紹介してあげる、と」

「げげっ!」


 驚きの内容に、絶句してしまうバーニャさん。だけど私は…バーニャさんには失礼ですが、ガインさんの言葉に納得してしまいました。

 なるほど…だからスクイーバさんは必死にバーニャさんを誘っていたんだなぁ、と。

 そうすると、ローリーさんやサドリさんはバーニャさんには声をかけていません。これはどういうことでしょうか?


 だけどその答えはすぐに出ました。

 あ、あの二人はサファナさんから女の子を紹介されなくても良いって思ってたんですね!

 たしかにプリゲッタさんなんかは相当美人ですしね。

 …そうするとローリーさんは……うん、考えるのはやめよう!


 そんなことを私が考えている間にも、ガインさんとバーニャさんのお話は進んでいるようでした。


「ですが…俺はあなたをだますのは忍びないと思ったのです!」

「うえっ!?」

「俺はあなたと話してみて確信しました。あなたは…素敵な女性です!しかも、非常にお強いとみた!」

「げっ?!」

「実は俺、強い女性が好みなのです!

 そこで、どうでしょうか。そこにある棒で俺を攻撃してもらえませんかね?」

「え?ええーっ!?」

「俺はこう見えても警護兵の中では強いほうなのです!ですので…遠慮なく!

 もしあなたが俺に一撃加えられるくらいお強いのであれば、俺はあなたに…完全に恋に落ちてしまうかもしれない!」


 その一言が効いたのでしょうか、覚悟を決めたような表情を浮かべたバーニャさんが、近くにあった棒を手に取りました。

 そして、おもむろに構えると…おいでおいでをしているガインさんに向かって棒をふるったのです。



 …おそらくたくさん飲んでいたワインのせいでしょうか。

 このときのバーニャさんは一切手加減をしていませんでした。

 そしてバーニャさんは、棒術の達人です。



 その結果、どうなったのかというと…


 バキンッ!


「うぎゃっ!」



 目にも止まらぬ神速の一撃が、ガインさんの脳天に炸裂しました。

 あまりの強烈な打撃に、棒は折れてしまいました。

 そして…白目をむいて失神してしまったガインさんは、ゆっくりと…その熊のような巨体ごと、前のめりに倒れてしまったのです。


「あら?あらあらあら?」


 道行く人たちが唖然としてその様子を眺めている中…

 バーニャさんはそんな声を上げながら、その場でオロオロとしていたのでした。







 後日…聞いた話によると。

 どうやらバーニャさんはガインさんと正式にお付き合いし始めたのだそうです。


「いやー!仕込みがバレたって聞いたときはバーニャに半殺しにされちゃうって思ったけど、うまくいってよかったわぁ!」


 と、このときのいきさつを私から聞いたサファナさんはそう言っていました。

 …ちなみに文句を言ってきたスクイーバさんには、ちゃんと可愛い女の子を紹介してあげたそうです。



 彼氏が出来たバーニャさんは、なんだかとっても幸せそうでした。

 ですが、「彼がね、『俺は強い女性が好きだーっ!』っていうから、ついついたくさん食べちゃうのよねぇー」とノロケ話を言いながら、もぐもぐ色々なものを食べるバーニャさんは、さらに一回り大きくなってしまったのでした。


 …でも、幸せなら良いですよね?




 ちなみに、プリゲッタさんにあの日あの後どうしたのか、後日気になって聞いてみたのですが…


「それがさー、盛り上がったから一緒に別の店に飲みに行ったんだけど、あいつ調子に乗って肩組んできたのよね!

 だからあたしカチンと来ちゃってさぁ!

『あたしのこと安く見ないでよっ!』って言い放ちながら、ほっぺたビンタしやって、そのままその店に放置してやったわ!あははは!」


 と大笑いしながら教えてくれました。


 …すごいなぁプリゲッタさん。さすがは百戦錬磨です。



 私もいつかそれくらい男性をあしらえるようになりたいっ!


 …プリゲッタさんの話を聞きながらそんなことを考えていたら、ベアトリスさんに肩を叩かれながら「…あれは見習ってはダメよ」って言われてしまいました。



 うーん、私はどうしたら良いのでしょうか?

 今度、ミア姫様に相談してみようと思います!


 …『魔迷宮』から戻られて、一段と凛々しく美しくなられたミア姫様に…えへっ!

ノリと勢いで書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?

またぼちぼち番外編をアップしようと思います!

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