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55.魔迷宮の謎

「へぇ…なんだか思ってたのと全然違うね。ずいぶん綺麗な感じだよ」


 魔迷宮の地下一階を歩きながら、ミアねえさまがそう口にした。

 実際そのとおりで、魔迷宮の中は…想像していたようなオドオロドロしい雰囲気は一切無かった。

 どちらかというと、ハインツうちの城よりも重厚で高級感さえ感じる。


「そりゃそうだ、ここは…『魔王』の居城だったんだからな」


 クルード王おとうさまはそう言うと、近くにあった柱をパシッと叩いた。

 なんでもこの『魔迷宮』は、最深部で地下10階まであるそうだ。




「…ところで、クルード王。ヴァーミリアン王妃」


 ぼくたちが歩みを進めていたところで、突然ティーナが声をかけてきた。


「ん?どうしたんだい?」

「ここまで来てしまったんだ。そろそろ…種明かししてくれても良いんじゃないかな?」


 …種明かし?

 それは一体どういう意味だろう。


 首を傾げるぼくたちを横目に、ティーナはさらに言葉を続けようとする。


「ティーナ!ちょっとあんた…」

「バレンシアは黙ってて。

 本当は…あなたがたは薄々分かってるんだろう?

 この…『魔迷宮』でなにが起こっているのかを。そして、エリスが…どこで何をしているのかを」


 その言葉に、ぼくたちは一斉にお父様とお母様の方を向いた。

 それって…どういうこと!?


「へぇ…なんでティーナちゃんはそう思うの?」

「別に…ボクはあなたがたが、あまりにも冷静なことに疑問を抱いただけだよ。

 もしも本当にマズイことが起こっているのなら…そんなに落ち着いていられるとは思えなかったからね。なにより、大切な跡取りをこの地に連れてくるとは思えない」

「ほほぅ…わしらの態度や行動でそこまで見抜くか」


 不敵に笑うお父様に、今度はぼくたちが激しく動揺した。なぜなら、両親のその態度は…ティーナの話を肯定していることを意味したからだ。



 慌てて問いただそうとするぼくたちを、お父様はすぐに視線で制した。


「いやいや、正確にはわしらも何が起こっとるのかは分からん。だが…おぬしらの知らないいくつかのことを知っているだけだ」

「それは…ボクたちに教えてもらえるのかな?」

「まぁ…ここまで来てしまったからには仕方ないだろうなぁ。他言無用だぞ?」


 そう言うと、お父様とお母様は…この『グイン=バルバトスの魔迷宮』に秘められた『秘密』を、ぼくたちに語り始めたのだった。







「この『魔迷宮』にはな、魔戦争以降『ある存在』が封印されていたんだ。それを見守っていたのが、この迷宮の管理者である…パラデインとクリステラ、そして…レイダーだ」

「その…ある存在とは?」

「うむ…『魔族』パシュミナだ」


 その言葉に、ぼくは思わず姉さまの顔を見てしまった。姉さまも同じように驚きの表情でぼくを見ている。

 だって…伝記では、魔戦争で『魔族』はすべて滅ぼされたと聞いていたから。


「たしか…『凶器乱舞デスペラード』パシュミナは、パラデインたちに滅ぼされたのでは?」

「うむ、カレンの言うように世間には伝えられている。だがな、事実は異なるのだよ。

 パシュミナはな…『魔傀儡マリオネット』フランフランに操られていた哀れな魔族でしかなかったのだ」


 そう言うとクルード王おとうさまは、これまで知られていなかった事実を語ってくれた。




 お父様の話によると、『凶器乱舞デスペラード』パシュミナは、魔族たちの中でも最強の戦闘能力を誇る存在だったそうだ。

 伝承によるとパシュミナは…千の武器を瞬時に具現化し、それを自在に操る全身鎧フルプレートの戦士だった。

 だけど…本当のパシュミナは、生き物を傷付けることすら厭う、心優しい女魔族だったのだそうだ。

 その優しい心のスキをつかれて、同じ魔族の…『魔傀儡マリオネット』フランフランに心を操られてしまった。


 魔戦争の中で、魔力感知に長けた『七大守護天使』のパラデインがその事実に気付いた。

 そして、クリステラと力を合わせて…パシュミナの『束縛』を解放することに成功したのだ。



 だけどパシュミナは、たとえ操られていたとしても…多くの人々を傷付けた自分を許せなかったらしい。

 それで、パラデインとクリステラに申し出たのだそうだ。


「自分を、この地に『封印』してほしい」と。









 そんな…『魔族』もいたんだ…


 ぼくはなんだか自分の中の価値観が壊れていくような感覚を覚えた。


「でもさ、なんで『魔族』ほどの魔力を持つ存在が操られちゃうの?」

「良い質問ね。それはね…魔法使いの常識にこんなのがあるの。『戦闘能力が高い者は、精神的な攻撃に弱い』…ってね。まぁフランフランの能力はそっち方面に特化してたから、その辺りもあったんじゃない?」


 ヴァーミリアンおかあさまは、ミアねえさまの質問にそう答えると、そのまま続きを話し始めた。







 パラデインとクリステラは、その申し出を受け入れた。

 ひとつには、パシュミナ自身が「完全にフランフランの呪縛から開放されるにはもう少し時間がかかる。今の自分が魔界に行くことで、また操られるようなことは嫌だ」と申し出たことも理由としては大きい。

 なにより、まったく戦う意思もなく、心優しいパシュミナの命を問答無用で奪うことが…彼らにはどうしてもできなかったのだ。


 こうして…『七大守護天使』の合意の下、『グイン=バルバトスの魔迷宮』に彼女は封印されることとなった。



 それ以降、この『魔迷宮』…すなわち「『魔族』パシュミナの封印地」は、パラデイン夫妻の監視下に置かれた。

 二人の息子であるレイダーが成人した後は、彼がその役目を引き継いだ。

 それが…いまから10年ほど前の話であったのだという。







 ぼくは…これまで知らされることのなかった『魔迷宮(ラストダンジョン)』の真実に、大いに驚かされていた。

 でも、それじゃあ…この『魔迷宮』は…もしかして安全なの?


 そんなぼくの疑問に、やんわりとお父様は首を横に振った。


「ところが、この『魔迷宮』は過去に何度か異変が起こっておってな。

 以前…今からおよそ5~6年前に、この迷宮に『悪魔』が攻め込んできたこともあるのだ。

 どうやらアンクロフィクサのせいで、この『魔迷宮』と『魔界』の間が不安定になっているようでな。

 そこに目をつけた四人の『悪魔』が、魔界とのパイプを復活させ、この世界に『魔王』を再臨させようと目論んで…この『魔迷宮』を攻略しようとしたらしい。

 そのときは、レイダーが仲間たちと力を合わせて『悪魔』たちを討伐してくれたのだが…」


 なんでもそ5~6年前の事件が、レイダーたち冒険者チーム『明日への道程(ネクストプロムナード)』の英雄譚のひとつ『魔王復活の阻止』として伝えられているのだそうだ。

 ついでに言うと、そのときレイダー一行がこの『魔迷宮』に『入宮(エントリー)』する手伝いをしたのがティーナだったらしい。

 …っていうか、もしかしてティーナってすごい人なのかな?



「でも、ボクたちは数ヶ月前にもレイダーに頼まれて『入宮(エントリー)』の手伝いをしたぞ?あれはいったい何の用だったんだい?」

「うふふ、それは…ティーナちゃん。パシュミナの封印を解きに行ったのよ」


 は?封印していた『魔族』の封印を解きに…?

 …そしたら封印されていたパシュミナは、レイダーたちに開放されたって言うの?


「なに言ってるの。開放されたもなにも…パシュミナは今、レイダーたちのパーティに参加しているじゃない」

「はぁ!?」


 あまりにもあっさり…とんでもないことを言われて、ぼくは驚きのあまり口をパクパクさせることしかできなかった。

 これは…もしかしてとんでもない話なのではないか。


 バレンシアやチェリッシュはもとより、冷静沈着なティーナまで口をあんぐりと開けてしまっている。

 そんな中、いち早く気を取り直したミア(ねえさま)が、お母様に問いただした。


「ちょっとお母様。そしたら…このまえお城に来たレイダーのパーティの『治癒術師』のあの女性。あれが…『魔族』パシュミナだったのっ!?」

「そうよ。気づかなかった?」

「「そんなの気づくかーっ!!!」」


 ぼくと姉さまの絶叫が、『魔迷宮』の中に木霊した。








 ぼくたちの混乱が収まるのに、かなりの時間を要した。最初はかなり動転したものの、ようやく冷静に戻る。

 そんなぼくたちの様子を確認したところで、両親は…話の続きをしてくれた。




 今から半年ほど前、突如『封印』されていたパシュミナが「自分を解放してほしい」とレイダーに申し出てきた。

 なんでも…パシュミナの妹である『魔人』が、この世界のどこかで何者かに『召喚』されたのだそうだ。


『魔人』の召喚など、一般的にはまったく考えられない技術だった。

 しかし、世界のどこかでは…その手法が存在しているらしい。

 おそらくは、どこかに潜む『悪魔』によって召喚されたのだと想像された。



 封印された状態でありながら、パシュミナは…その事実を察した。

 その上で、妹が…自分と同じ目、すなわち精神操作魔法によって操られるようなことがならないように、急いで探し出して救出したい。そう、レイダーたちに申し入れたそうなのだ。


 パシュミナからの申し出を快く引き受けたレイダーは、自らの責任で…パシュミナの封印をといた。

 こうしてパシュミナは…『魔族』としての存在を隠し、ただの『治癒術師』の女性として冒険者チーム『明日への道程(ネクストプロムナード)』へと参画したのだった。

 …『魔族』としての力を一切使わないことを『約束』して。



 このような事情で…パシュミナの妹である『魔人』を探していた『明日への道程(ネクストプロムナード)』一行であったが、あるとき…とある情報を入手する。

 それは、パシュミナの妹らしき人物を連れた怪しい集団が、『グイン=バルバトスの魔迷宮』の方向へ向かっている…というものであった。


 その集団の名は『五芒星ペンタグラム』。

 状況証拠から、恐らくは…『悪魔』の団体と考えられた。

 さらに悪いことに…目撃情報から、パシュミナの妹はこの集団『五芒星ペンタグラム』のメンバーに操られている可能性が高いとのこと。


 5~6年前の事態と同様のことが起ころうとしているのではないかと判断したレイダーは、エリスの力を借りて…再び『魔迷宮』に潜ることにしたのだった。





「…以上が、わしらが知っている情報だ」


 満足げに一息つきながら、なんだか綺麗に話が終わったかのようにそう宣言するお父様。


 …とんでもない、とんでもない。

 一番大事な情報を聞いていないではないか。


「ちょっとちょっと、肝心な話が無いじゃないか!エリスがすぐに帰ってこなかった理由はどうなってんの?まさかエリスがその…『五芒星ペンタグラム』とかって奴らと戦ってるって言うの?」

「さすがにそれは無いわ。そっちはね…たぶん別件よ。それは…あなたが関係していると思うんだけどね」

「えっ…ぼくが?」


 予想外のお母様の言葉に、ぼくは思わず自分を指差してしまった。

 ほかの人たちの視線もぼくに集まってくる。


「ミア姫様のせいって…ティーナ、どういうことかわかる?」

「さぁね。…とりあえず王妃の話の続きを聞いてみようじゃないか、バレンシア」


 そんなティーナたちの会話を横耳に、ぼくは…お母様の目をじっと見つめた。

 するとお母様はふふっと笑みを浮かべると、続きを説明してくれた。


「この『グイン=バルバトスの魔迷宮』の地下四階にはね、極秘の『図書館(ライブラリー)』があるのよ。

 そこには…古今東西の様々な魔書や奇書、さらには魔人の本なんかも置いてある…超一級危険書物が集まってるわ。

 おそらくエリスは…そこに篭ってるんじゃないかしらね?」

「『図書館(ライブラリー)』…?なんでそんなものがここに?それに…どうしてそこにエリスが?」

「普通の場所に置いておけないようなものを、この『魔迷宮』に隠しているの。この場所はね…わたしたち『七大守護天使』の宝物庫なのよ」


 それこそが…この『グイン=バルバトスの魔迷宮』と呼ばれる場所の…もうひとつの正体だったのだ。

 こともあろうにこの人たちは…かつての魔王の居城を、自分たちの大切なものの『隠し場所』として使っていたのだ。

 ほんとうに…とんでもないひとたちだ。


「その…『図書館(ライブラリー)』の今の管理者はレイダーでね。たぶんエリちゃんは、レイダーから…『自分の欲しい情報が載った書物』があることを聞いたんじゃないかしら」

「エリスが欲しい情報…?」

「そうねぇ、わたしの記憶だと…『図書館(ライブラリー)』には『一時的に男の体を女にする魔法薬(ポーション)』とかの魔道書もあったから、エリちゃんのことだしそのあたりでも探してるんじゃないかしら?

 ほら、あなた来年から魔法学園でしょ?そこでの生活が少しでも楽になるようにって考えたんじゃない?」


 なんということだろうか…


 その話を聞いて、ぼくはもう何も言えなくなってしまった。

 もしそうだとしたら…今回のエリスの失踪?は、全部ぼくのせいということになる。


「それじゃあエリスは、ぼくのせいで帰ってきてないんだ…」

「…必ずしもそうとは言えないぞ。

 さっきも言ったとおり、なにせこの『魔迷宮』には、今…パシュミナの妹を操っている『五芒星ペンタグラム』がいる可能性が高いのだからな。

 そしてそいつらは…おそらく『悪魔』だ。

 レイダーたちが遅れを取るとはまったく思えんが、そ奴らのせいで帰りが遅れている可能性も十分ありえる」


 お父様のその言葉に、ピリッとした空気が流れる。

 そうだった。まだレイダーたち『明日への道程(ネクストプロムナード)』一行が帰ってきていないということは、『五芒星ペンタグラム』の問題やパシュミナの妹の問題も解決していない可能性が高かった。

 そういう意味では、この『魔迷宮』が安全であるとは言い難かった。



 だけど、お母様の話もおそらく真実なのだろう。

 そうでなければ、エリスはきっと…レイダーたちを『入宮(エントリー)』させたらすぐに帰ってきていたはずだから。



 二つの要因による、複合的な事態。

 それが、今のこの『魔迷宮』でエリスの身に起こっている状況なのではないか。


 二人の説明で、ようやくぼくは…今の状況を理解することが出来たのだった。

 …もっとも、全部仮説ではあるのだけれどね。






 それにしても不思議なのは、ここにいる誰もが…レイダーたちがどうにかなっているとは思っていなかったことだ。

 それだけ彼らの実力は凄まじいのだろうか…




「そんなわけで、わたしたちの目的地は…地下四階の『図書館(ライブラリー)』になるわ。さぁ、状況を理解したならさっさと行きましょう!」


 お母様の言葉に、ようやくぼくたちは…真剣に頷くことが出来たのだった。






 明確な目的地が判明したぼくたちは、他の場所は一切無視して一直線に…地下四階に向かっていた。

 そこにある…エリスが居るはずの『図書館(ライブラリー)』を目指して。

 何事もなく地下一階、二階を走破して地下三階に到着する。



 地下三階に降り立ったとき、ぼくたちは…すぐに異変に気付いた。


 ざわざわ…

 ガシャガシャ…

 キーキー…


 突如耳に入って来だした、怪しげな音や声。

 合わせて、通路の先の方から…何か複数のものがこちらに向かってくるような気配を感じる。

 状況を察したぼくたちは、すぐさま戦闘準備を整え、前方に注意を向けた。



 生き物の存在する気配。

 金属が触れ合う音。

 獣の唸るような声。


 …間違いない。なんらかの生物の集団が、こちらに向かってきている。

 ケダモノのような悪臭もすることから、その存在がレイダーたちでないことは明らかだった。

 恐らくは…両親が言っていた悪魔集団『五芒星ペンタグラム』一行だ。


 ぼくは緊張からゴクリと唾を飲み込む。




 と、そのとき。


 前を歩いていたヴァーミリアンおかあさまが突如振り返った。


 そのままぼくと姉さまの前まで戻ってくると、お母様は…ニヤニヤ笑みを浮かべながら、ぼくたちの肩にその手を伸ばしてきた。


 なんだろう、なにかの激励だろうか?

 そんなことを考えながらお母様の掌に視線を向けた…そのとき。


 ぼくは気付いてしまった。

 …お母様の掌に、まだ『魔法の口』が残っていたことに。



 あっと声を上げる間もなく、お母様の掌がぽんっとぼくたちの肩に触れた。


 次の瞬間。

 ぼくの視界がぐらりと揺れた。



 えっ?

 これは…どういうこと?


 一瞬戸惑ったものの、すぐに直感で分かった。


 ぼくたちは…飛ばされようとしているっ!


 そう気づいたぼくは、驚いた表情を浮かべるミア(ねえさま)の腕を反射的にパッと掴んだ。


「ちょ…これ…」

「あっ…!」


 そのときになって、ようやくティーナとバレンシアがぼくたちの異変に気付いたものの…もう既に手遅れだった。

 ぼくとミア(ねえさま)の周りの景色がグラグラと揺れ動き、その輪郭を漠然とさせていく。


「それじゃあ二人とも、一足先に行っといてね。バイバーイ」


 ぼくたちに手を振りながら、面白おかしそうにそう言い放つお母様。

 それが…ぼくが意識を失う直前に見た最後の情景だった。



 次の瞬間…ぼくと姉さまの身体は、意識ごとどこかに飛ばされてしまったのだった。










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「さーて、お邪魔虫は『飛ばした』ところで、こっちはゴミ掃除といきましょうかねぇ」


 双子を魔法で飛ばしたあと、ヴァーミリアンはニヤリと笑いながら…騒々しい気配のする前方を睨みつけた。

 状況についていけず、呆気に取られたバレンシアとチェリッシュ。だがティーナだけは状況を把握していた。


「…問答無用で自分の子供を『転移』?いくら守るためとはいえ、やるねぇ」

「あら、ティーナちゃんは反対だったの?」

「いや、良い作戦だと思うよ。王子様たちを守りながらだったらちょっと戦いづらいからね」

「…うふふ、心配しないで。残念ながらあなたたちにあげるおやつ・・・も無いわよ」


 ヴァーミリアンは不敵にそう言うと、ティーナたちを制して一歩前に歩み出た。

 その横には、無言で腰の『双剣』を引き抜くクルード王。



「…よく言うよ、最初からこの事態も想定していたんだろう?」


 呆れはてた表情のティーナにそう言われて、ヴァーミリアンは…餓えた野獣のように口の端を釣り上げた。



 そんな一行の目の前に、ついに…複数の『生物』が姿を現してきた。

 それは…狼や熊の姿をした、魔物や魔生物だった。

 その奥には、数人の人影も見える。



「さぁーて、最近暴れてなかったから、久しぶりにストレス解消するわよっ!」

「ふっ。漏れたのはわしが討ち取る。だから、好きにせい」

「うふふ…それじゃあ、いっただっきまぁーっす!」



 ヴァーミリアンはそう叫ぶと、全身からバチバチと電撃を放ちながら、背中にある『天使の翼』を大きく羽ばたかせたのだった。



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