23.懇親会狂想曲
ミスティローザと約束したテラスに向かいながら、ミアはしくじったなぁ…と思っていた。
もともと参加するのに気が進まなかったあたしは…ただでさえ遅れて参加したこともあり、懇親会の最中は彼女に関わるのを極力避けようと思っていた。
理由は簡単。サファナの話を聞く限り、かなりめんどくさそうな人物だと思ったからだ。
だというのに…なぜか彼女は、積極的にあたしに絡んできたんだ。
最初の挨拶のときは、まるで獲物を見つけた獣のようにズカズカとやってきた。…もちろんあたしは失礼が無いように、スマートかつ適当にあしらう。
次は…突然彼女が踊りだしたときだ。時々あたしの方に意味ありげな視線を飛ばしながら、一所懸命踊っていた。…もちろんあたしは食事に集中するふりをして見ないようにする。
そしてトドメはダンスタイム。次々と殺到する他の女子たちを押しのけて、強引にダンスを申し込んできた。
これには、さすがのあたしもドン引きしちゃったよ…
でも、あたしの立場上この申し出を無下にすることはできないわけで。
…なんだか妙にあたしに体を密着させてくるぞ。
…やだなぁ、あたしの正体が女だってバレないかな。
そんなことを考えながらチークダンスを踊っていると、最後に耳元で…ふたりっきりになることはできないかと囁かれてしまった!
やばっ!
これはもしや…サファナが言っていたような『牽制』をされるのだろうか?
でも、そんな『牽制』をされるようなことを、あたしはしたか?
色々と憶測してみるものの、どれも今一つピンとこない。あたしは首をかしげながらも、とりあえずは約束したテラスへと向かうことにしたのだった。
中庭を見下ろすテラスには、訪れた人が休憩できるように小さなテーブルと椅子が備え付けられていた。
ミアがテラスに着いたときには、先に到着していたミスティローザがその椅子に腰掛けていた。
…なんだろう、日に焼けて色黒だからか。暗いところにいるミスティローザは、とっても見えにくいや。
「やぁ、ミスティローザ殿。遅くなったかな」
あたしは冷静を装って、紳士的な口調で彼女に声をかけた。
…ちなみにあたしの『王子のフリ』は完璧だ。なにせわざわざ口調や声色もそれっぽく変化させているのだから。
クルード王やカレンなどの身内や、エリス、マダム=マドーラ、スパングル大臣、ベアトリスなどのごく限られた人物を除いて、あたしはだいたいこんな演技をしていた。
…もちろん、これまであたしが女だってバレたことはない。男のフリ歴が長いあたしを舐めんなよっ。
「あっ…カレン王子、お待ちしていました。私も今来たばかりですのよ」
彼女は、驚いた表情を浮かべたあと、顔を上げて嬉しそうな表情を浮かべた。
ぜったいあたしが来たことに気付いていたはずなのに…とぼけてる?
うーむ、なかなかの演技派だ。
まぁいいや、さっさと用件を片付けてしまおう。
「夏とはいえ、夜の風はご婦人のお身体には毒です。よろしければご用件をお伺いしますが?」
「あの…私…」
ミスティローザは少し照れた表情を浮かべてモジモジして俯いている。
なんだろう?
なんだか様子が変だぞ?
何を言われるのか警戒していたあたしが、訝しみながらも黙って様子を伺っていると…
ついに意を決したのか、ミスティローザがようやく顔を上げた。
そして、その口から放たれた言葉に…あたしは度肝を抜かされたのだった。
「私、どうやら…貴方に恋をしてしまったようなのです」
「…へっ?」
この人はいま、なんと言ったのか?
聞き間違いでなければ…あたしに恋したと言わなかったか?
「カレン王子、私を…貴方の恋人にしていただけませんか?」
続けて放たれる言葉の爆弾。その意味を理解して、あたしは思わずパニックに陥ってしまった。
おいおいおいおい!
あたしの恋人になりたいですって!?
ちょっと勘弁してよー…
そもそも、あたし女なんですけどーっ!?
……って、待て待て。落ち着けー。
いまのあたしはカレン王子だ。だったら…もしかしてこの状況は致し方ないのか。
少し冷静になったあたしは、一体どんなつもりでこんな事を言ってきたのかを把握するため…ミスティローザをじっくりと観察してみることにした。
自分を見つめる潤んだ瞳…
少し赤く染めた頬…
あたしと目が合っただけで、恥ずかしげに視線を逸らしてしまう。
…ちょっとちょっと!
これは、恋する乙女そのものじゃないですか!
大丈夫なのか?これ。
…なんだかまずいことになってきちゃったぞ。
「…私、いままで歌とダンスに必死で…ろくに恋もしてきませんでした。ですが、貴方に出会って…いままで感じたことのない気持ちに芽生えたのです」
いやいや、そんな気持ちに芽生えなくて良いんだけどーっ!
「カレン王子、貴方の目に私はどう映っていますか?魅力的な女性に映っていますか?」
魅力がないって言うと傷つけてしまうし、魅力があると答えると勘違いさせてしまう。
…むうぅ、なんというずるい質問だ。
「も、もちろん君は魅力的だよ、ミスティローザ。だけど…」
「まぁ!!ありがとうございます!!」
あたしが言い終わる間も無く、ミスティローザが満面の笑みで喜びを表現して来た。
…そんな顔をされたら、無下なこと言えないぢゃないかぁ!
「一応私も、フレイスフィアでは名の通った名家の血筋です。カレン王子には決して釣り合わなくはないと思います」
「そ、そうなんだ…」
「別にすぐに婚約、などとは申しません。ただ、いまは私の気持ちを感じていただいて、こうやってそばにいさせてもらえるだけで良いのです…」
「む、むぅ…」
なんとも甲斐甲斐しいことを言うミスティローザではあるが、だからと言ってあたしはすぐに安心することはできなかった。
あたしたちは、お互いそれなりの身分がある存在だ。
そんなあたしたちが、『ただそばにいるだけ』なんていうことが許されるわけがない。
事実、今このテラスにふたりで居ることは、既に他のものにも知られていた。
短時間であれば「テラスから中庭をお見せしていました」で通るかもしれないが、ここで時間をかけることは…様々な噂を立てられるネタを提供するに等しかった。
このままではまずい…
なにか手を打たないと…
だけど、こんなに純粋な想いで自分に気持ちをぶつけてくるこの女性に、あたしは厳しく対処することができなかった。
焦りだけが、あたしの心を焼く。
まいったなぁ…
本当に、どうしようか…
途方にくれながら、ふと視線を中庭に落とした…そのとき。
あたしの視界に『ある人物』が飛び込んできた。
その瞬間、インスピレーションが刺激され、あたしの脳裏に抜群のアイディアが閃くっ!
こ、これだっ!!
これしかないっ!!
あたしは今閃いたアイディアを実行すべく、自分を潤んだ瞳で見つめている…ミスティローザの肩を優しくつかんだ。
「…ミスティローザ殿」
急にあたしに肩をつかまれたミスティローザは、一瞬だけハッとしたものの、あたしの顔を間近に見てすぐに蕩けそうな表情を浮かべた。
あまつさえ、瞳をゆっくりと閉じようとしているではないか。
ちょっと、やめてー。
そんなんじゃないんだよー。
「あ、貴女の気持ちは本当に嬉しい。貴女のような美女にそのようなことを言っていただけるのは、本当に光栄なことです」
「まぁカレン王子、そんな…」
「だがしかし!残念なことに…私は、あなたのその気持ちに応えることができない」
「えっ…?」
戸惑いの表情を浮かべるミスティローザに対して、ぐっと真剣な表情を浮かべて『本気っぽさ』を強調する。
ここで怯むな、あたし。
躊躇なく、一気に決めるぞ。
「なぜなら、私には…すでに心に決めた『想い人』が居るからです!」
「えっ?えええっ!?」
「だから、貴女の気持ちに応えることはできないんだ。本当に申し訳ない…」
ミスティローザは絶叫とともに、一気に泣きそうな表情を浮かべた。
それを見て、あたしはなんだかものすごい罪悪感に襲われる。
…あたしって、この人の純粋な気持ちを踏みにじってるのかな。
あぁ、なんかこういうのって辛いなぁ…
だけど、これで決着したと思った。
これだけはっきり言えば、諦めてくれるだろうと。
…だけど、彼女はしぶとかったんだ。
すがりつくような目であたしのことを見つめてきた。
「その…カレン王子の想い人とは、いったいどなたなのですか?」
「それは…」
あたしはミスティローザをテラスの際に優しくエスコートする。そして、中庭の方を指差した。
あたしの差した指の先には…懇親会を抜け出して、侍女のバーニャと中庭の花を鑑賞しているエリスの姿があった。
「あそこにいる女性がそうなんだ。名前をエリスという。私にとっての、大切な女性です」
「エリス…さんと言うんですか?その方は、どこの貴族の令嬢なんですか?」
「へ?い、いや、彼女はそういうんじゃないんだ。私と妹の…家庭教師なんだ」
「えええっ!?」
あたしの説明に、ミスティローザが驚きの声を上げた。
あれ、なんか説明マズったかな?
「カレン王子、あなたはまがりなりにもこのハインツの将来を担う王子でしょう?
王族ともあろうお方が…どこの馬の骨とも分からぬ女性と懇意になられるのですか?そんなことが許されるのですか?」
「ええっ!?」
あぁ、そういうことだったのか。
そう言われて、あたしは自分の失策に気付いた。
確かに、王族が平民の女性と付き合うなど、お遊び以外ではちょっと考えられない。
だが…だからといってここで説明を変えたところで、別な打開策を考えつくわけでもない。
…だったら、このウソを貫き通すまで!
あたしはここで負けじと一気にまくし立てたんだ。
「い、いや…確かに君の常識ではそうかもしれない。だけど、ここハインツでは必ずしもそうではないんだよ!
なぜなら…ほら、うちの両親も大恋愛で結ばれてるんだけどさ。ヴァーミリアンは大魔法使いではあるんだけど、何処の馬の骨とも知れない平民なんだよ。
実際、エリスも平民かもしれないけど、優秀な魔法使いだしね。
だから…うちの国ではそういうのは問題にならないんだ」
「…でもそれでは、結婚によって隣国と友好関係を築くという、王族としての義務が果たせないのではないですか?」
ミスティローザも負けじとまくし立ててくる。
どこから出て来るんだ?このパワーは…
「王族であれば…その義務として、隣国の貴族や王族と結ばれるべきです。
そういう意味では、フレイスフィアの貴族である私は、貴方のお相手として最適だと思いますわ。
なんだったら…その、エリスという娘を貴方の『愛人』とされても…私はかまいません」
なっ…
なんというハレンチなことを言うお嬢さんなんだっ!
あたしは想定外の発言に絶句してしまった。
普通の女の人は、結婚にもっと夢を抱くものじゃないだろうか?なのに、どうしたらこんな発言ができるのか…あたしにはちょっと理解できない。
なにか下心があるのだろうか…
そんなことまで勘ぐってしまう。
しかし、ハインツみたいな小国に嫁入りしたところで、すでに十分な富と名声を得ている彼女にさほどメリットがあるとは思えない。
なにより彼女であれば、もっと良い条件の夫希望者もあるはずだ。
ということは、これが『恋は盲目』ということなのだろうか…
いやいや待て待て!
それ以前に、そもそもあたしは女だしっ!
「と、とりあえず冷静になってください、ミスティローザ殿。それに私は…そんな不器用なことができる男ではありません」
そうだ、純情を装えば良いんだ。
しどろもどろになりながらも、重ねて「彼女が存在が在る限り、申し訳ないが君の気持ちに応えることはできない」とキッパリと答えると、ようやく納得してくれたのか…ミスティローザの様子に大きな変化があった。
ものすごく落ち込んだのか、視線をしたに落としながら…ゆっくりと頷いてくれる。
「…りました」
「ん?」
「わかりました。そこまでおっしゃるのであれば、この場は一旦引きます」
はーっ、良かったー!
やっと頷いてくれたよ。
でも…ほんとゴメンね、ミスティローザさん。
「でもっ!!」
ホッとしかけたとたん、突如放たれた強い口調に、あたしは思わずビクッとなってしまう。
いかん、なんかあたしこの人苦手だ…
「どうか…私からのお願いをひとつ、聞いてもらえないでしょうか。
カレン王子。明日開催される文化交流会に、必ず来ていただけませんか?そこで私の…渾身の踊りを披露いたしますので、それを貴方にぜひ見て頂きたいのです」
「…そ、そんなことで宜しいのですか?それでよければ、喜んで…」
一刻も早くこの場から逃げ出したかったあたしは、その申し出に一も二もなく了解した。
…こうしてあたしは、行くつもりもなかった明日の文化交流会に参加する羽目になってしまったのだった。
うーん、本当に今日は厄日だ…
だが…自分のことに必死だったあたしは、まったく気付いていなかった。
彼女の瞳が…まるで燃えさかる炎のごとく、強烈な光を宿していたことを。
「認めない…そんなこと、絶対に認めないわ…」
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その日エリスは、フレイスフィア王国との懇親会に『お手伝い』として…オマケ程度に端っこの方で参加させてもらっていた。
突然知らないうちにファッション誌にモデルとしてデビューしたせいで、なんだか気持ちが舞い上がっていた。その結果、他の仕事が全然手に付かなくなってしまっていたのだ。
そこで、気を紛らすためにも進んでお手伝いを申し出たのだった。
しかし、ろくに城のことを知らないエリスが役に立つことはあまりなく…結局、場違い感を満喫しつつ、雑用をこなすだけの壁の花となっていた。
「やっぱり…こういうパーティって豪華ですよねえ」
「そんなことないわよぉ。今回のは規模的には小さい方じゃないかしら?実質ただの立食パーティだしねぇ」
飲み物用のグラスを並べるエリスの感心した声を、横でせっせとアルコール飲料の準備をしていた侍女のバーニャが軽くいなす。
バーニャは、ハインツ王宮に居る四人の侍女の一人で、少しだけ太った…ほんわかとしてのんびりやさしい感じの女性だった。
体格に似合わず、掃除や片付け、料理の準備などの細々したことが得意で、ほがらかで気だての良いこともあり、侍女たちのリーダーのような存在となっていた。
そんな彼女は、今日の手伝いを買って出てくれたエリスのお目付役として、一緒に仕事をしていたのだ。
「そんなことより、エリスちゃん。あそこに居るのがミスティローザよ!」
「ふぅん、へぇぇ…」
エリスはそう答えたものの、実はあまり彼女のことを知らなかったし、そもそも興味もあまりなかった。
「あらあら、あんまり感心なさそうねぇ」
「あはは、すいません。あんまりそういうの詳しくなくって…」
「まぁ!年頃の女の子なのに!おほほ」
エリスが苦笑いを浮かべていると、空気を察したバーニャが話題を切り替えてきた。
「エリスちゃんは、こういう場は慣れてないのかしら?なんだかあまり楽しんでないみたいだけど…」
「はい、あまり経験なくて…なんだかどうしていいのか困っちゃいますね」
「そうなんだ!それは仕方ないわねぇ、おほほほ」
そうして気を使ってくれたバーニャは、「それじゃあ…もう少し落ち着いたら、あとで中庭のお花でも見に行きましょうか?夜に咲く花を見るのも、なかなかシャレオツなのよぉ」と言ってやさしく笑ってくれた。
一方、会場のほうでは…遅れてやってきたミアが、見事にホスト役をこなしていた。ミスティローザとダンスを踊ったりして、会場を盛り上げるのに一役買っている。
ああやって見ると、立派な王子様なんだけどね…
エリスはそんなことを思いながら、感心して眺めていたのだった。
鐘の音が九つ鳴る少し前になると、懇親会の会場はかなりの落ち着きを取り戻していた。
「それじゃ、そろそろ行ってみましょうか!」
エプロンを外して身軽になったバーニャは、他の給仕者たちに声を掛けると、そのままエリスを引っ張って中庭へと連れ出して行った。
途中、ミスティローザとミアが別々に…申し合わせたかのように席を立ったのが横目に入った。ミアに限ってまさか一緒に何処かで密会…なんてこともないだろう。そう思い、すぐに気にしないことにした。
「わぁ…綺麗ですね!」
照明の灯りに照らされた、『白鳥城』の中庭にある庭園は、幻想的な雰囲気を醸し出していた。エリスも思わず歓声を上げてしまう。
「エリスちゃんはパーティよりもこっちの方が好きかな?」
「はい、そうなんですよ。私が育ったお家にもちょっとしたお庭があって…小さな頃からそこの花を見るのが好きだったのです。
だから…なんだかその頃のことを思い出しちゃいます。
もちろん、こんなに立派じゃなかったですけどね」
「おほほ、ここは庭師のルクルトが手入れをしているのよ。彼はなかなかの腕だからねぇ」
バーニャの説明も耳に入らないほど、エリスは庭園の花に夢中になっていた。
そんなエリスを、バーニャは微笑ましく思いながら見守っている。
「ごめん、エリスちゃん。私はもうちょっと仕事があるから、悪いんだけど一人で見ててもらえるかな?あとでまた戻ってくるからさ!」
「あ、でも…」
「いいのよいいのよ、気にしないで!ねっ!」
ウインクをしながら微笑むバーニャ。
優しくて素敵な人だなぁ…。エリスは素直にそう思って感謝の意を告げる。
「なんだかたくさん気を遣って頂いちゃって…本当にありがとうございました。バーニャさんって、とっても優しいんですね」
「あらあらー、やめてよ。恥ずかしくなっちゃうじゃない。それでモテて彼氏でも出来れば良いんだけどねぇー。…って、あら。なんで黙っちゃうの?」
バーニャの…どう切り返して良いか返答に困るジョークに、苦笑いのエリス。そんな彼女の肩をニコニコ笑いながらポンポンっと叩くと、手を振って立ち去って行ったのだった。
一人残されたエリスは、お言葉に甘えて中庭の草花をゆっくりと観察することにした。
彼女が育った家の人は、庭の草花をいじることと紅茶が大好きなひとだった。
そんな家人の影響を強く受けたエリスは、親友たちに淹れたての紅茶を振る舞うのがかつての日課だった。
だけど…ハインツに来てからは、侍女たちに気を遣って紅茶を淹れる機会も無い。
そんな今のエリスにとって、こうやって庭園の草花と過ごす時間は…昔懐かしく温かい人たちの記憶を呼び起こし、ほんわかとした気持ちを思い出させてくれた。
そうやって落ち着いてくると、次に思い出されるのは…先ほどのファッション誌のことだった。
年頃の乙女であるエリスも、決してファッションに興味がないわけではなかった。
でも自分では、そもそもそんなに外見が良いわけではないし、忙しくてファッションに興じる時間もなかったので、縁遠い世界だと思っていたのだ。
ところが…信じられないことに、エリスは図らずもファッション誌にモデルデビューしてしまった。
しかも…そこに映っている自分が、びっくりするくらい綺麗だったのだ。
ミアの言う通り、さすがにカレンの前では引き立て役でしかなかったものの、それでも悪い気分はしなかった。
もしかしたら…私も案外いけちゃうのかな?
いやいやー、さすがにそれはないよねぇ。
そんなことを考えながら、一人興奮したりモジモジしたりしているエリスであった。
だが、このとき。
妄想に夢中なエリスは気付いていなかった。
…彼女の背後に忍び寄る、ミスティローザの存在を。
「エリス…。私の邪魔をする女…。許さない…」




