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メリーさんから、ラブコール!

作者: 村井 雪音

プルルル……プルルル……




ある日、私・斎藤 楓のもとに一本の電話がかかってきた。


……バスの中だったので、慌ててきりました。


ごめんなさいごめんなさい!石投げないで!確かにマナーモードにしてない私が悪いけどさ!根っからの小心者ゆえに突き刺さる周囲の視線が痛い。土下座したくなるような肩身の狭い思いでそれから降車駅までを過ごすと、そっとバスから抜け出して、降りたバス停で着信履歴をみる。こんなKYな着信をするのは茜(私の友達ね)くらいしかいないと思ったけど、ディスプレイが映したのは知らない番号だった。


……かけ直そっかな?ま、いっか。


楽観的な自分に呆れつつ、スマホの画面から目を離そうとして、


「うわー!バイト!!」

 

ヤバい、店長に怒られる。

うちの店長、普段はニコニコしてるのに、怒ると怖いんだよね・・・

刻一刻とせまる時間に、私は持てる限りの体力で疾走した。・・・とかいっても、私運動音痴だし足遅いんだけどね、うん。




・・・




散々な目にあったけど、なんとか帰ってこられました。

バスでは白い目で見られたけど!

バイトには遅刻したけど!

いつもの倍しごかれたけど!


うぅーなんかやっぱりむかつく!!

そもそもあの電話のせいでバスで非難されるし、バイトには遅れたし!そのせいで店長に叱られたし!


「かけてやる!」


八つ当たりとは内心わかっているが、気が済まない!文句の一つでも言ってやらなければ!


とそのタイミングでいきなり着信音が鳴った。またさっきとおんなじ番号。

・・・うん、なんか複雑な気持ちになる。カモがねぎ背負ってくるっていうのはこういうことなのか。


だけど、これも好機!思いっきり愚痴ってやるんだから!!と意気込んで電話に出た。


「はい、もしも『僕、メリーさん。今、君の通ってる学校の前にいるんだ。』──………。」


えっ


『・・・ねえ、聞いてる?』


「すみません、もう一度お願いできますか。」


『僕、メリーさん』


「あ、あの・・・もう一度、」


『僕、メリーさん』


「もっ、もう一回」


『だから!僕、メリーさんだって言ってるじゃん!なんなの!焦らしプレイ!?』


・・・。

・・・・・・・・・・・・。


・・・あ、いたずら電話か。


『いたずら電話じゃないからね!・・・いま、そう思ったでしょ。』


はい、思いました。っていうかどうして頭の中で考えていることが分かるのか。


・・・やっぱりいたずら電話だから、こういう反応に慣れてるのか?

なんて極悪非道なんだ!・・・というわけで『切ったらお仕置きするから。』


「うぇっ『今から君の家行くから、それまで大人しくまってるんだよ?』」


そして無情にも通話終了になる。




ハッ!

メ、メリーさんだとぉ!?


落ち着け、私。いたずらだ、きっとそう。

・・・でも、本当に来たら?どうすればいいんだろう。

いや、そんなはずがない、これはきっと夢!


そうだ、夢だ!夢オチだ!

こういう時は親にほおをつねってもらうのが一番!夢からさめるし。


………。


……………。


親は共働きでした。=Not在宅。

しかもさっきの居場所は学校。家まで徒歩5分なんだけど。



オワタ\(^o^)/


人生(夢の中の)オワタな、私。


っていうか、何なの!?

メリーさん!

軽井沢の別荘からやってきて、金持ちの女の子呪いなさいよ!


そこに、着信。


メリーさんからだなとは思いつつ、逆ギレしていたうえ夢と捉えた私は肝がすわり、文句を言う気まんまんだった。


『僕、メリーさ「あ、ちょっと!どういうことなのメリーさん!なんで私が呪われなきゃいけないのよ!私はあんたみたいな可愛いフランス人形もってないわよ!?」……。』


着信がきれてしまった。

まぁ、いい。これで誤解もとけただろう。


そして、衝撃の事実。


メリーさんはなんと僕っ娘だった!


声がくもっていたが、おそらく。

なにそれ、現代版アレンジかよ。



プルルル……プルルル……

三回目の電話が鳴る。

できればメリーさん以外の茜とかがいいなー、と思いながら出ると、


『僕メリーさん。今君の部屋の前にいるの。』


メリーさんでした。


「ひっ!」


電話がきれた。


まさか、無差別に人を呪うのか。


話は聞いてくれそうにない。逃げたいけど、今外に出たら鉢合わせする。


そんなことをコンマ一秒で考えた私は、混乱していたのか。


ベッドに入って布団にくるまった。


キィッと扉が開く音。


部屋の中を徘徊する足音。

実際は数十秒の時間が、果てしなく長く感じられた。


そして、


「捕まえた。」


フフッと笑いながら美声が耳元で囁く。いつの間にか布団を剥ぎ取られ上半身を起こされて、後ろから抱き込まれた私の意識はフェードアウトしていった。





今の私は、まだ知るよしもない。


メリーさんが僕っ娘でなく、イケメン男子だったことも。


この日を境に毎日うざいくらいの彼氏気取りのメールと電話がくることも。


彼が私の命ではなく貞操と旦那の座を狙っていることも。


そしてうっかりめでたく(?)彼に持ち帰られてしまうことも。




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