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未来世紀から異世界へ! ~とあるJ隊員の活動記録~  作者: としょいいん


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第04話 辺境惑星住民との遭遇

「お、やっと街道を見つけたぞ!」


 これまでずっと陰鬱な深い森の中を歩き続けて来たが、ようやく樹々の間を縫うように伸びる街道と思しき未舗装の道路を発見してその路上に立っているのだが、この道を左右どちらかの方向へ進んで行けば、いずれは人類の生存圏へと辿り着く事が出来るだろう。


 そろそろ空の中央に差し掛かろうとしている《太陽》みたいな恒星を確認する事が出来たので、AI解析による角度と位置から逆算して現在の時刻を合わせておく。


《現在の時刻を11:45に設定しました》


 これからの生活や任務の際に必要となる標準時刻を、この辺境惑星の現在の時刻に合わせる事が出来た。


 これまで過ごした3日間でこの惑星が1回自転する時間を調べておき、そこから現在の時間を算出したので、これで時差による影響(いわゆる時差ボケ)を修正できたと思う。


「システムコール。アクティブレーダーを使用して、この街道の先をスキャンしてくれ」


《システムより了解。太陽らしき恒星の位置を南と仮定し、東西に伸びる道路の先、約20キロメートルまでの探査が可能です》


 オレは両腕を肩の高さに上げて手のひらを左右の道路の先へと向ける。この体勢なら手のひら全体を伸ばして微細な電波を集中的に受信する事が可能となり、パッシブ方式と比べて探査距離と精度が向上する。


 また、今オレが立っているこの場所は、なだらかな傾斜の天辺付近になっているから、標準探査距離より先の情報が得られると思う。


 その代わりと言っては何だが、パッシブ方式なら普段から上下左右360度方向を常に警戒出来るので、非常に使いやすいメリットがある。要は使い分ければいいだけだ。


《システムより報告。東方向の街道の先、約4キロの距離の地点にて戦闘行為を探知しました》


「詳細な報告を頼む」


《システムより了解。森の樹々によって視界が確保出来ませんが、音響センサーの解析結果から、この惑星の住人だと思しき一団が敵性生物に襲撃されています》


 そういえばオレがこの惑星に転送されて来た時にも、緑色の皮膚を持つ小鬼みたいな奴らに襲われた事があったが、あの時はまだこの惑星の正確な情報を持っていなかったので、止めを刺さずにやり過ごした。


(弱かったから脅威ではないと判断したんだけど、あれは少し不味かったか?)


 だが今回のケースだと現地の住民たちが攻撃を受けているのは確実らしく、AIの解析によれば既に被害者が出ている状況らしい。これは良くない状況だ。


 今のオレは以前に負った重傷によって戦闘不能となり、軍籍者リストから除外された状態だと言えるが、手の届く範囲で救える生命があるのなら、その力になりたいと思う。


 今のオレでは各種兵装の使用許可が下りないし、火気管制システムのエラーも深刻な状況から回復しない。それどころか軍用GPSからの座標DATAすら送られて来ず、未だにシステムの状態が100パーセントとは言い難い。


 それでもオレの手が届く場所に友邦人だと思われる者たちが居て、彼らの生命が敵に脅かされているのを知った今、地球連邦軍J隊所属のオレが、このまま指を咥えて見ているなど出来るはずはない。


 オレは直ぐに行動を決意する。紛争場所まで、たったの4キロ。全力で走れば、あっと言う間に到着できるとは思うが、それでも力の限り走り続けると同時にスーツのアシスト機能を最大出力に引き上げる。


《システムより報告。現在の巡航速度は60km/hで秒速16.7mです。目的地までの距離4,023メートルから到着時刻を算出すると到着は約4分後の予定です》


(どうか間に合ってくれ……)


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 かくしてオレは先ほど探知した音を頼りに、今現在も戦闘が続いてる現場へと急行した。


 そこでは旧世紀以前に使用されていた馬車らしき車体の周囲に円陣を組んだ、これまた旧態依然の古めかしい金属製鎧を纏ったお伽噺に出てくるような騎士たちが、身長2メートル超えはありそうな蛮族風の者たちから襲撃を受けていた。


(まさかとは思うが、この戦時下の状況で映画を撮影をしてる……訳ではなさそうだな)


 白銀鎧姿の騎士たちの身体的特徴から推測するに、彼らはオレと同じ地球にルーツに持つ種族に間違いなさそうで、言うなれば友邦の民でありオレたち地球防衛軍の庇護下にある人々だと推測される。


 対して色黒の肌を持つ大柄な襲撃者どもの顔は鼻孔が上向いた醜い種族で、そいつらが身につけている革製の胸当てや脛当てには、急所を守る部分だけ板金で補強された部分が見て取れるが、お世辞にも製造技術が優れているとは言えないレベルの物だった。


(もしかして、こいつらは最近発見された敵の新種なのか? 人間のDNAを取り込んで進化した侵略者(アグレッサー)は人の形を真似ていると部隊からメールが届いていたのを見た事がある)


 友邦の者たちが、今となってはヴァーチャル博物館の3D映像でしか見た記憶が無いような板金と皮革を職人自らが加工した古式ゆかしい防具を纏っており、武器も剣と槍それに弓矢といった中世レベルのモノしか持ってない事を少し疑問に思ったが、今はそんな事を考えるより人命を優先するべきだろう。


「オレは地球防衛軍J隊所属の者だ。緊急事態により駆けつけ警護させて貰うので承諾をお願いする!」


「その姿は人族の冒険者か?! せっかくの申し出だが君一人だけでは大した助力にはならない。戦いに巻き込まれる前に早くここから立ち去ってくれ!」


 遠くからでも良く目立つ白銀の全身鎧を纏った騎士の声によって、初めてその相手が女性のものだと判る。


 彼女らは街道の中央で円陣を組み、その向こう側にある森の中(オレと反対側)から続々と現れる、黒っぽい革を部分的に金属で補強した鎧を纏った大柄な敵兵どもに襲われている最中だ。


 守備側の戦力はオレに返事をしてくれた騎士を含めて約50数名ほどの部隊で、もう既に何名かが地面に倒れて負傷している様子が伺える。


 そして友軍の兵士たちより大きな体格を持った襲撃者たちだが、今現在も敵の増援によって数が増え続けており、騎士たちを圧倒するのは時間の問題だと思われる。


(今すぐ目の前の事態を何とかしないと、重傷者の救助が間に合わなくなる)


 襲撃者どもの姿を良く見てみると、その身体的特徴は最近になって人類のDNAを取り込み進化した、オーガノイドと呼ばれる個体的特徴を有している。


「あの醜いツラはアグレッサーの一種に間違いないと思うが、もしあれが我が軍の敵なら、ここで見逃す理由はないな」


 それと防衛側の兵士たちの金属鎧についてだが、AIの解析だと20キロ以上もの重量があるらしく、生身の人間ではあれほどの重量を身に着けたまま、あの運動量を発揮出来るとは思えないので、彼らもオレと同じく強化された身体を持つ兵士だと思われる。


「システムコール。光学迷彩(ミラージュ)フィールドは展開可能か?」


《システムより回答。現在の充電容量なら600秒間の展開が可能です》


「では展開を頼む」


《これよりミラー・フィールドを展開。残り時間100秒を切ってからカウントを開始します》


 オレは自分の姿を周囲に溶け込ませて黒い敵の正体を調べるべく、可能な限り地面に転がってる死体へ近づき、右手の平を当ててスキャニングを開始する。


「システムコール。友軍とあの黒いヤツのDNAを解析して人類及びアグレッサーの識別確認を頼む」


《システムより了解。40秒で行います》


 襲撃者に当てたオレの両手から普通の人間の目には見えない青紫色の波長光を照射し、その光が皮膚表面に吸収される時の反射ベクトルを測定する事によって簡易なDNA解析を行う。


 これは敵である侵略者(アグレッサー)どもが、我々人類との戦いで人間のDNAを取り込んで偽装するように進化したので、オレたちみたいな末端の兵士でも、現場で敵生命体の鑑定を行う必要が出てきた為に実装された必須装備の一つだ。


《システムより回答。黒い革鎧の生物からはアグレッサーのみが持つ銀河系以外の塩基配列を確認。これにより敵性生物と断定します》


 大戦の最中にアグレッサーどもが我々人類のDNAを取り込んで《人型》へ進化したのだが、我々人類のように純粋な炭素型生命体と比べて、外宇宙からやって来たアグレッサーではその配列が異なる。


(やはりアグレッサーの一種だったか。それなら排除しない訳にはいかない)


 光学迷彩(ミラージュ)フィールドの残り時間はまだ半分ほど残ってる状況で、オレは両腰にあるベルトのホルダーからアーミーナイフを2本とも抜いて身構える。


「システムコール。両手のアーミーナイフへ電源接続。高周波ブレードモードで起動する!」


 オレはAIからの回答を待たずに駆け出した。


◇ ◆ ◇ ◆ ◇


エルフ戦士団長Side


 魔族どもの度重なる侵攻により、我々エルフの国は滅亡の危機に瀕していた。


 エルフ戦士団の精鋭たる我々が守るべき国土を侵略されて、今も尚撤退……いや敗退を続けている最中に待ち伏せを受けてしまった。これはとてもマズイ状況だ。


 だが我らが逃げて来た後方からも敵の本隊が迫っている今、ここで足止めされる訳にはいかない。敵軍の本体がこの街道先にある街まで侵攻する前に、何としても敵の情報を持ち帰り対策を講じねばならない。


 そして移動時間を少しでも短縮させようと、この魔の森を縦断する街道を進んで来たのだが、それで敵の待ち伏せを受けてしまったという事は私の判断が間違いであったということだろう。他に選択肢が無かったとは言え、これは許されざるミスだと言える。


 この街道を塞いでいたのは我々が昨夜戦ったオークとは別の部隊で、こいつらはどうやって我々の防衛網の後ろに回り込んでいたのか理由は不明だが、現にこうして接敵している以上この事実を認めなくてはならない。


「敵の待ち伏せだ! 姫様の馬車を中心に円陣を組み敵の襲撃に備えろ!」


 待ち伏せで馬の足を止められた今の状況では小回りが利かず、隊列の隙間を抜かれて敵が馬車まで到達する可能性があるので小隊全員に下馬を命じると同時に数名の決死隊を選び、街道封鎖の為に倒された大木の破壊を指示して脱出路を切り開かねばならない。


 隊長の私が先頭に立ち突撃を率いて行きたい所だが、後ろの馬車にはハイエルフの王族が傷ついて眠っており絶対に死守しなくてはならない。


 味方の騎士たちが円陣を組み馬車の防衛に布陣している最中だが、森の奥からオーク兵どもが次々と姿を現し我々の人数を圧倒しつつあるが、まだこちらが対応できるうちに脱出の糸口を掴んでおきたい。


 例え我が小隊が壊滅しようとも、ハイエルフが乗る馬車を味方の街まで送り届ける事さえ出来れば、予言された最悪の未来を防げる可能性を上げる事ができる。


 我らを小勢だと見下して不用意に襲い掛かって来るオークどものニヤけた顔が何とも憎らしい事か……森の奥から次々と襲い来る敵の増援を見ると、これが周到に用意された計画だと直感する。


 頭はカラッポだが力任せに襲い来るオークどもと、ここでマトモに正面からぶつかってはこちらの被害が増すばかりだが守勢になって足を止めてしまった今、主導権は奴らの方にある。


「まだ敵の包囲は完成していない。何としてもここを突破して王都まで辿り着くぞ!」


 防衛に回った騎士たちの腕輪が輝くと、そこに直径1メートルほどの光の盾が現れる。


 これは我々エルフが得意とする精霊魔法の一つで、腕輪に仕込んだ宝玉に刻まれた魔方陣を通して光の精霊たちに助力を仰ぎ、光の粒子を圧縮して物理的な防護結界を作り出すものだ。


 こうして馬車の周囲に防御結界を張り巡らせておき、その間に決死隊の後衛が風の攻撃魔法の準備を行い、前衛が敵の突撃を食い止める。


(ここで余り多くの時間と兵を失う訳にはいかない。みんな頑張ってくれ!)


 ただのオーク兵であれば、我々エルフ戦士団の精鋭たちが遅れを取る事などありえないのだが、敵の勢いを見る限りかなり多くの上位種が混じっているのが見て取れる。


「絶対に諦めるな! 我々全員で王都まで戻るぞ!」


 いくらエルフ戦士団の精鋭たちとは言え、筋力で勝るオーク兵どもを相手に遮蔽物の無い街道で襲われて近接戦闘に持ち込まれた状況は不味いと言わざるを得ない。


 我らエルフは足場と視界が悪い森の中でのゲリラ戦を得意とし、このように腕力で勝る敵と真正面から切り結ぶような消耗戦は避けるのが常套だ。


 それは別に近接戦闘が苦手だと言う程では無いが、馬鹿正直に力のみでの消耗戦を挑むなど、元々の兵数が劣るエルフという種族には合っていないのだ。


「必ず血路は必ず開く! 仲間を信じて持ち堪えろ!!」

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